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「ミシュガルド戦記」
後藤健二
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18210

 とうとうやってきました、ミシュガルドものです。よく名前を見かけてはいたのですが、本作で初めてその世界観に触れることとなりました。みんなで共通の世界観を共有して、それぞれに物語を書くということらしいです。とりあえず予習はせずに読んでいこうと思います。

使用キャラクター

 正直に申し上げてこの一覧で心がボキっといきました。なんせ多い。見ても見なくても構いません、という一文に心を救われますが、後藤先生が詳細まとめへの誘導を行ってくださいっているのでそちらだけちらっと見ました。ミシュガルドという新大陸が現れて舞台は基本的にはどうもミシュガルドのようです。甲皇国、アルフヘイム、スーパーハローワーク商業連合国といった三大国がもともと存在しているのですが、ミシュガルドでは仲良くしましょうとなっているらしいです。この舞台に慣れ親しみが生まれればのめりこむのですが、この時点で参入障壁の高さに恐れおののいています。とりあえず、深く考えるのはやめにして、私は銀河英雄伝説にむりやり当てはめて読むことにしました。ご存知でない方には申し訳ないですが、甲皇国が銀河帝国、アルフヘイムが自由惑星連合、スーパーハローワーク商業連合国がフェザーンです。フェザーンに比べて商業連合国の立ち位置が地政学的に弱い気もしますが、気にせずに無理やり当てはめて読んでいくことにします。

プロローグ

 読み始めに思ったのは、良かった、でした。なにせ無事に甲皇国とアルフヘイムから物語が始まるのですから。最初に出てくるヒロインらしき人物は女傭兵ラナタです。今、某アプリで子どもの頃から暗殺術を仕込まれた女刺客がヒロインの有名漫画を読んでいるので似たような境遇におっと思いましたが、どうも性格はまるで違うようです。甲皇軍がアルフヘイム軍を圧倒する中、義によって立ち上がる傭兵王が提示されてプロローグが終わります。ミシュガルド未体験ということで恐れいたのですが、なんせ読みやすくて助かります。

【ゲオルク編】 1話 脱走兵

 第一編はプロローグで提示された傭兵王ゲオルクのお話のようです。ゲオルクは脱走兵の悪事を成敗するために動くようで義侠心にあふれているようです。
 新たに出てきた女傭兵ガザミとゲオルクが剣を交えるシーンがあるのですがここでのやり取りが知的でかっこいいです。ある程度上の次元で分かり合える存在は素敵です。精霊の木ってなんだろうと思うのですが、ミシュガルド聖典本体を紐解く気にはまだなりません。後藤先生のオリジナルなのでしょうか。

2話 アルフヘイムの闇

 二話目にしてタイトルに闇という言葉が出てきます。ある程度教育をまともに受けてきてしまったからなのか共和制や民主主義といった言葉に盲目的にプラスなイメージを持ってしまうのですが、やはりそう簡単にも行かない部分はあるのでしょう。それぞれが自由に生きてきたアルフヘイムが戦争のために持たなければならなくなった軍事都市セントヴェリアが闇なのでしょうか。どうやらそこには多数の避難民も存在するようです。
 読み進めていくとアルフヘイムの闇はエルフの特権階級のような扱いのようです。多種族国家ともなると多民族国家と同様に差別は難しい問題になる気がします。他国からの圧力もある中、内政的な種族問題を押さえつけられるとは、エルフ族に義あらざるともどうやらやり手のようです。

3話 戦場は踊る、されど進まず

 前話でアルフヘイムに義あらずと感じたゲオルクたちは小さな事件を経て完全に干されてしまいます。そんななかで白兎人族あるいはそのシンパと思わしき人物から依頼を受けることとなるのです。兎人族はエルフ族に次いで数がらしく、白兎人族と黒兎人族に大きく別れるそうです。さきほど、エルフ族が種族問題をどう押さえつけるかについて少し感想を述べたのですが、第二勢力が内輪もめを起こしているのであれば、非常にやりやすそうですね。白兎人族と黒兎人族の争いが終わらぬようにさえしておけば、エルフ族の地位はある程度安泰というわけですね。うまいこと前線に出して数を減らしているのも、陰湿なエルフ族ならではというわけなのでしょう。
 この後ゲオルクがガザミに差別の原因は亜人という言葉から来ていると解説する場面になります。概念は元から存在して言葉となるのか。言葉が存在して概念が後から生まれるのか。言葉を持たなかった乳児期にはどうだったのだろうと昔の記憶も辿るも、非言語記憶はなかなか存在せずもどかしくなりました。

4話 嘆きの黒兎

 さて、前話で依頼人から滅茶苦茶に言われた黒兎人族ですが、彼らには彼らなりに白兎人族に対して思うところがあるようです。白兎人族のセキーネ王子を信じた挙句裏切られたと。多少のいざこざはあれど、エルフ族へよりお互いへ恨みが向くのは過去になにか大きな事件でもあったのでしょう。ここで、ディオゴ、アナサスが仲間に加わります。後藤先生はディオゴがお気に入りなんでしょうか。ゲオルクに比べて描写が丁寧な気がします。

5話 迫りくる脅威

 ここで脅威に曝されるのはアルフヘイムももちろんなのですが、どうやら主となる脅威はフローリアへの脅威のようです。ゲオルクがフローリアからの援軍要請を断ったエルフのラギルゥー族に対して啖呵を切ったのが心地よいです。この後アルフヘイムとの関係性はどうするつもりなのでしょうか。
 ここで、場面が甲皇国の野営地へと移ります。丙武という頭のネジが外れた残虐なキャラが出てくるのですが、非常に濃くなっていて、同時に出てきたメゼツさんの印象を食らってしまっています。甲皇国も、タカ派の丙家、ハト派の乙家と分かれていて、内政的な問題を抱えているご様子。ミシュガルドはなかなかに複雑なんですね。はまると抜け出せなくなりそうな魅力があります。 

6話 戦う理由

 前話に続き、次々と現れる登場人物。ミシュガルド界隈では有名な方々なんでしょうか。増えていく登場人物にカタカナ名が苦手な私としてはなかなか心が折れそうです。ただ、ミシュガルドの登場人物を皆さんで作ってらっしゃることを思うと、こういう形で自分の作ったキャラが登場するとうれしいんだろうなあと思います。そういった快感がミシュガルドが流行っている理由なんでしょうかね。

7話 流血の山河

 戦記物にふさわしく、あるいはタイトルにふさわしく、本話では次々と人が死んでいきます。初戦にフローリア側が圧倒する一方で丙武は不利な中進撃を続けていく。手に汗握る展開が続きます。キャラが立っていることもあり、書いてて楽しいだろうなあと思います。

8話 空に舞う

 戦争は新たな技術開発の母だ、という強烈な皮肉から本話は始まります。本話ではなく、科学が絡むファンタジーものの一部への感想なのですが、精霊の力の実在が明白である中で、それを無視するというか取り入れない姿勢が出てくる時があり、科学者としてあってはならない姿勢のように思えます。本話で意見を述べる丙武は科学者ではなく、アルフヘイムを侵すものには加護は無いといった設定には非常に好感が持てます。
 フローリア攻防戦が本話で終わるわけですが、一方的にどちらが勝つという形ではなく、勝った側に大きな損害があるのはこれからの物語の展開のバリエーションにはむしろ幅が出ると思うので、上手なやり方だなあと思いました。
 今回はここまでにします。

       

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