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「ミシュガルド戦記」
後藤健二
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18210

 前回の文芸でも感想を書かせていただいたミシュガルド戦記。ゲオルク編を読み終えていたので、ヤングゲオルク編を読んでいきたいと思います。

【ヤングゲオルク編】 9話 甲皇国の闇

 フローリアでの戦闘を終えアルフヘイムのセントヴェリアに帰還したゲオルク。しかし、ラギルゥ一族は、ゲオルク達はフローリアのために戦ったのであり、金の支払いを拒みます。5話であれだけの啖呵を切っておいて戦果さえあればなんとかなると思っていたゲオルクも、甲皇軍がセントヴェリアの目と鼻の先に迫っている現状で戦力を捨てるラギルゥ一族も、人々の生活を背負うにはあまりに浅はかすぎる気がします。甲皇国についての詳細はあまり知りませんが、いずれにせよアルフヘイムは滅亡の道を歩んでいくのではないかと思います。
 ゲオルクは若かりし頃、甲皇国の傭兵だったことが明かされ、物語はその頃に飛びます。ヤングゲオルクというわけです。前回今回と読んで、ミシュガルドに対する慣れというか、ミシュガルド戦記に対する慣れが出てきたように思います。本作から入ったことにより、他のミシュガルドも読んでいけるような気持ちになっています。
 甲皇国は甲皇国で気候的なハンディキャップがあるようで、これが戦争が決着しない理由の一つなのでしょうか。若きゲオルクは凶暴で、それを思うと現在のゲオルクはだいぶ落ち着いたほうなのですね。

10話 ミシュガルド計画

 皇帝の演説にて、真実か否かはともかく古代ミシュガルド文明の存在が示唆されます。ただ一方で国民はそんな大義名分を信じて戦争をしているわけでなく、戦争により豊かになる道を信じているようです。
 甲皇国は階級社会のようで、甲乙丙という三つの貴族家と丁という平民にわけられるそうで、さらに丁民の中にも階級があり、ゲオルクはその中でも下層民出身だそうです。ただ、現在は破格の出世をして騎士の身分ではあるようで、この後王になるのであれば、華麗なる立身出世の道を歩むようです。途中で出てくるゲオルクの強さが圧倒的で、平手打ち一発で目玉は飛び出るは顎も外れます。恐ろしい。そしてそれを発端としてゲオルクは丙家と乙家の争いに巻き込まれていきます。そして、補足によって古代ミシュガルド文明の実在が明かされるという衝撃の展開。ミシュガルド界隈では古代ミシュガルド文明の実在は共通認識なのでしょうか。紹介漫画は読んだのですが、忘れました。

11話 マッド・ボルトリック

 新たな登場人物として現れるボルトリック。本話では亜人食いが行われます。あるいはボルトリックに言わせれば魔物食いなのでしょうか。私たちも間接的にとは言え何かを殺して食べているわけですが、何を食べて何を食べないのかに関して、倫理的あるいは自らの精神的健康のために、味以外の線引きを考えたことはあるかと思います。ボルトリックはその線引きを知性としているようです。ゲオルクはそれを聞いてボルトリックの知性を感じます。こういう遊びが入ってくると、筆が乗ってきているのだろうなあと思います。とりあえずボルトリックは知性があれば亜人、なければ魔物という線引きをしているようなので、物語のどこかで知性ある魔物が出てきた時に彼の価値観がどう変わっていくのか、なんて話も読んでみたいなと思いました。

12話 天空の城アルドバラン

 ゲオルクとボルトリックはダンジョンの下層へと向かっていきます。思ったより早く知性ある魔物が出てきます。特に言及がないので、知性ない亜人を魔物扱いしているだけだったようで、知性ある魔物ももちろん魔物だという考え方のようです。話中にハーピーのささみ肉がでてきますが、素直な解釈でいくと胸肉なので、ハーピーの形状を考えると最早人間ではないかと思ってしまいます。どこか鳥の部分に、笹の形をした別の肉があったことを祈ります。

13話 浮上

 洗脳されたエルフの剣士シャムとゲオルクの戦いが描かれます。緊迫した戦いの中、決着のきっかけとなるのはある意外なものでした。タイトルの通り天空の城アルドバランは浮上していくわけですが、こんなものを手に入れたのに、ゲオルクは小国の王にしかなれないのでしょうか。なかなか世知辛い世の中のようです。

14話 帰還

 さて、前話の疑問はさっそく本話で解決されます。うまく手のひらの上で転がされています。アルドバランは姿を消してしまったようです。甲皇国が古代ミシュガルド文明に興味を示していたのは、近代的な兵器だと思われていた甲皇国の兵器がどうやら古代ミシュガルドに端を発するかのようなのです。謎が少しずつですが明らかになってきて、こちらで勝手に妄想を始められそうな量になってきました。さて、ゲオルクがそんなことをしているうちに、甲皇国にいるエレオノーラに事件が起きていたことが明らかにされて本話は終わります。

15話 絶望

 エレオノーラを失ったゲオルクはそれだけでなく、ミシュガルドの秘密を知りたい貴族からの拷問を受けます。巻き込まれた乙丙両家の政治的な争いから結局抜け出せないままです。そして、彼が助けだされるのもまた別の国の政治的な理由という皮肉。絶望の中、「……だが、まだやることがある」と言うゲオルクが目指す先はどこなのでしょうか。

16話 傭兵王

 ゲオルクはどうやら天空の城の件で有名になったことを利用され、SHWの傀儡国家の王として傭兵王になる様子。しかし彼のやるべきこととはそんなことではなく、エレオノーラを助けにいくこと。アスタローペの宝玉を持っていると自動機械兵には襲われないそうなのですが、アルドバランを追い出された時はなぜ襲われたのでしょうか。三人いたうちの持っていない二人だけが狙われていたのか、ロボット兵は自動機械兵とは違う仕組みなのか、いずれ謎解きがあるのでしょう。拷問で体力を失っていたゲオルクはなかなかエレオノーラのもとに辿りつけませんが、とある指輪によって大事件が起きて無事侵入できます。そして甲皇国の食糧問題まである程度解決をみるあたりが恐ろしい。なんとゲオルクは皇帝とエレオノーラの寝室にまでたどり着きます。愛を確かめ合う二人。そして求婚するゲオルク。拒絶される。と綺麗にコンボが決まっていきます。エレオノーラはエレオノーラで貴族の娘としての誇りがあるようです。「私はあなたの子を産むでしょう」とエレオノーラ。不妊に悩む世の夫婦にぶん殴られそうですが、物語ではそういうものなのでしょう。そしてゲオルクは傭兵王への道を歩んでいきます。
 設定から少し外れたことに対しての説明が余談として添えられています。キャラクター登録所を見てみると、それぞれのキャラクターに対して愛ある設定が細かに描かれています。設定改変可の文字が至るところに踊ってはいますが、どこまで登録者の設定を尊重するのかはなかなか難しい問題となりそうですね。
 今回はここまでにします。

       

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