一、ココロナイ王さま

むかし ある国になんでもほしがる王様がいました。

ほしいものはなんでもせかいじゅうからお金で買いあつめました。


王様は言いました。

「わしの持ってないものはないのじゃ」

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あるとき旅の商人があらわれて言いました。


「おことばですが王様。王様にも持っていないものがあります。

それは―――ひとのココロです」


王様はきょとんとしたあと、たずねました。

「なんだそれは。それは金で買えるのか」


商人は答えました。

「いいえ。ココロというものはお金では買えません」


王様はさらにたずねました。

「では、どうすれば手にはいるのだ」


商人は答えました。

「それはわかりません。王様じしんがそれを見つけるのです」


王様はなにがなんだかわからないので 腹が立ってきました。

「おまえの言っていることはわからん。こいつをしょけいしろ」


王様は兵士に命令しました。その商人はつれていかれました。


商人は引きずられながらも王様に言いました。

「王様。いいですか。ひとのココロを持つことで ひとはひとになれるのです。

あなたにはまだひとのココロはありません。

ひとのココロを手にいれたとき あなたはひとになれるのです」


商人は殺されてしまいました。


王様はなにも考えないことにしました。

しかし あの商人のことばは王様の中に残ったままだったのです。