ある日 王様はひさびさに城下町をさんぽすることにしました。
自分の持っていないめずらしい物がないか見まわるためです。
王様はごえいの兵士に言いました。
「おまえたち ついて来なくていいぞ。今日はなんだかうっとうしく感じるのじゃ」
王様はひとりで城下町へおりていきました。
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城下町はにぎやかでした。
しかし どこか不安定なにぎやかさでした。王様はふしぎがりました。
「おい どうかしたのか。やけににぎやかだな」
王様は町の若者に話しかけました。
このときの王様は町民と同じ服を着ていて 町民になりすましてさんぽしていたのです。
なので若者はまったくあやしがりずに答えました。
「あんたは知らないのか。とうとうこの町にも子さらい団があらわれたらしい」
子さらい団とは子どもだけをねらってさらうというなぞの集団で 数々の国の数々の町で
あらわれては子どもをさらっていくという悪ぎょうをはたらいていました。
王様ももちろん知っていました。なぜなら子さらい団は毎日のごとくどこかにあらわれては
子どもをさらっていくのでいやでもうわさは耳に入ってくるからです。
王様はたずねました。
「だれかが見たのか。それとも…」
王様はこのあとのことばが出てきませんでした。
なぜなら自分の国でこんなことが起こっていると信じたくないからです。
王様の中にはまたもやもやが増え 王様が城下町をあとにしようとしたとき
そこに――――