Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      


奥の小部屋には上り階段があった。部屋には、松明で照らされた5人の人影があった。ロセフとマギーは、小部屋にいる人間から見られないように、様子をうかがった。5人のうち2人には首輪が付けられていた。
「ノルマ達成まで何人なんだ?」
首輪を付けていないうちの一人が、誰かに話しかけた。身長はそこまで高くないが、肩幅が広くがっしりした体格の男だった。
「今月のノルマはあと4人だな。引き続きジーナ村から何人か攫ってくれば達成できるから大丈夫だろう。」
フードを被った女が質問に答えた。ジーナ村とはギルの町のすぐ近くにある集落のことだ。その女は続けた。
「それより問題なのは“首輪”が一個足りないことだな。あれを付けない状態で、人をミトナまで運ぶのは大変だぞ。」
ミトナとはここから歩いて、丸五日かかるような距離にある大きな街だ。
「そのことなんだが、森の中で会ったダンディに渡してしまったよ。」
別の男が会話に割り込んできた。綺麗な金髪で、端正な顔たちをした男だった。身長も高く、8頭身ですらりとした体形だった。
「一般人に情報が漏れたらどうするんだ!?」
フードの女は激高した。
「フフ…、大人の魅力あふれる素敵な人だったからね、つい勧誘してしまったよ。彼はぜひ入りたいって言ってくれたが、首輪だけ受け取ってどこかに行ってしまったんだ。ああ、運命の人はいま何処……。」
「このクソホモが…。」
フードの女が金髪の男をにらみつけた。会話から察するに、金髪の男が博士に首輪を渡したようだ。
「そんなことよりお楽しみタイムといこうぜ。」
筋肉質な男がグへへと目を細めながら、首輪を付けた二人に近づいていく。
「ゴンの言う通りだ。本部に引き渡す前に、“味見”をしなくちゃな。」
そう言うと金髪の男は、首輪を付けられた若い女の頬をさすった。
「な、なにをするつもりなんですか?」
若い女は消え入りそうな声を出した。
「私は女だって食べてしまう男だからね。」
「ひ…。」
女の顔が恐怖でひきつる。
「怖がらなくていい。痛い思いはさせないから安心して。力を抜いて、身をゆだねていればあっという間だよ。」
金髪の容姿端麗な男はやさしい声で話しかけた。そしてもう片方の手を女の肩に回し、唇を重ねた。
「おい!エリーに何をするんだ!」
首輪を付けられた青年が声を荒げた。
「へへ、お前の相手は俺だぜ。」
ゴンと呼ばれた筋肉質な男が青年の服を脱がせていく。
「もうビンビンになってるじゃねーか!お前、寝取られ好きかよ!」
「ち、違う、そんなわけないだろ!」
「お前の嫁が寝取られてるのを見ながら、お前のナニをしごいてやる。気持ち良すぎてすぐ昇天するぜ!」
「男にしごかれて嬉しいわけないだろ!」
「俺が性の喜びを教えてやる。」
ゴンは青年のナニを上下にこすり始めた。
「う…、わ…。」
「もう我慢汁が垂れているぞ!どうよ、俺のテクは!」
「やめろ!男にしごかれてイクなんてそんな…。」
ゴンはこする角度や速さを変えながら、巧みに青年のナニを刺激した。
「アア、アアッー!」
青年の喘ぎ声が部屋中に響き渡る。ロセフはひそひそ声でつぶやいた。
「なんだこれは…。」
「引き返して博士に報告しましょう。あいつら何体か魔獣もっているみたいだし、私たちじゃ勝てるか分からないわ。」
マギーは困惑しながらもそう言った。部屋の中にはギルのダンジョンでは見慣れない魔獣が何体かいたのだ。

「勝手にやってろ!私は先に下に行くぞ。」
フードの女は二人に呆れて、部屋の出口に向かっていった。
「まずい、こっちに来るぞ!」
しかし気づいたときにはもう遅かった。狭い一本道の通路なので、すぐに見つかってしまった。

「なんだ、お前らは!」
二人は慌てて走り出した。
「ギュム!あいつらを転ばせろ!」
フードの女が命令すると、草むずびのトラップが不意に足元に現れ、二人は思い切り床に倒れこんだ。
「ガウ!あの女を足止めして!」
マギーが指示すると、ガウは女の足元に向かって炎を吐いた。すると今度は金髪の男が指示を出した。
「ルー、バブルでセリアを守れ!」
すると巨大な水泡がフードの女が囲み、火を防いだ。
「火を出してきた奴もバブルで囲ってくれ。」
金髪の男はカニのような形態の魔獣に指示を出し、ガウを水泡の中に閉じ込めてしまった。ガウは中から火を出して泡を壊そうとしたが、びくともしなかった。結局、二人はドクト団に捕まってしまった。

========================================

「お前らは何をしにここに来た?なんでその首輪を付けている?」
セリアと呼ばれていたフードの女が二人を尋問した。
「博士からもらった。」
ロセフがムッとした表情で答えた。
「博士?…ああ、エリクがさっき言っていた奴か。まあ、その首輪の存在を知られたんじゃ、しょうがない。こいつらもミトナに連れていくか。これで今月のノルマはあと2人だな。」
「あんたたち、こんなところで何しているの!」
「ガキには関係ない話だ。」

「アア、アアア、アアッー!」
さっきの青年の喘ぎ声が部屋中に響き渡る。
「お前らまだやってんのか!」
「この兄ちゃんが尽きたら、次はそっちの坊主の番だぜ!」
と言ってゴンはロセフの方を見てきた。ロセフは貞操の危険を感じた。
「私はギュムと下に行っているぞ。」
セリアは、ギュムと呼ばれた魔獣と部屋から出ていった。ギュムはアンバランスに手足が短く、体のほとんどが胴体だ。頭の頂点から巨大な白い花が生えていて、どういう原理か分からないが、宙の一点に漂い続けている。
 ロセフはロロ太郎がいないことに気が付いた。おそらくドクト団との戦闘時に肩から振り落とされてしまったらしい。いくら首輪がついた魔獣でも、主人の目の届かないところに行ってしまえば、何も命令することができない。首輪のついた魔獣が、主人から逃げ出して野生化することは珍しい話ではない。しかし、今のロロ太郎にダンジョン内の魔獣と戦うような戦闘力があるとは思えなかった。ダメな主人のせいで、幼体のまま死んでいくなんてかわいそうだ。ロセフは心の中でロロ太郎に謝った。

「あああっん!!!」
青年のナニは力尽きた。ロセフもマギーも、両手・両足をロープで固く結ばれていて逃げられない。唯一の武器である斧も取り上げられてしまっていた。ガウも、カニ族の魔獣が作った泡に捕らわれたままだ。
「男にイかされるのがどれだけ気持ちイイのか、楽しみだ。」
ロセフは皮肉っぽく言った。
「う…、う。」
マギーは泣きそうな表情をしている。ロセフは励ますつもりでこう言った。
「ほら、お前の大好きなイケメンだぞ。」
「何馬鹿なこと言ってんの、あんたのせいでこんな……。」
マギーのいう通りだった。彼女を巻き込んでしまったのも、元をたどればロセフのせいだ。そもそも、彼がマギーに首輪を使おうとしなければ、今回の探索は始まらなかったし、ドクト団と出くわすこともなかっただろう。
「次は君たちの番だ。」
エリクと呼ばれていた金髪の男とゴンが、近づいてきた。エリクはマギーに首輪を付けようと手を伸ばしてきていた。

「もうだめなのか!」
ロセフが諦めかけたその時だった。彼の拘束された四肢が自由になる感触を感じた。振り返るとロロ太郎が図体のわりに大きな口で、縄を噛みちぎったのだ。

「ナイスだ、ロロ太郎!」
ロセフはエリクとゴンの脇をすり抜け、取り上げられていた斧を回収した。そしてカニ族の魔獣に向かって、思い切り振り下ろした。ドンっ!と鈍い音が部屋中に響く。魔獣の甲羅は非常に硬く、全力で叩きつけたのに、軽くひびが入った程度だった。しかし、衝撃はかなり大きかったようで、カニはその場で気絶した。

「大丈夫か、ルー!」
エリクがカニ族の魔獣のもとに駆け付ける。ルーが倒れたことにより、ガウを囲っていたバブルが消えた。

「ガウ!この部屋を焼き尽くせ!」
ロセフが指示を出すと、ガウは今日一番の勢いで火炎を吐き出した。小部屋にいたすべての人間と魔獣がパニックに陥った。

「ガウはその調子で足止めしていてくれ。俺たちは逃げるぞ!」
ロセフはロロ太郎を肩に載せ、マギーの腕を掴んで10Fへの階段を上った。小部屋の出口より、上り階段の方が近かったからだ。あの部屋に留まっていたら、火炎に巻き込まれてしまうから、早急に避難する必要があった。
「痛ッ!」
階段の途中でマギーが転んだ。ロセフは後ろを振り返った。
「ちょっと擦りむいただけだから平気よ。」
マギーは立ち上がったが、動きが鈍く、若干だが膝をかばっていた。階下の火の勢いはどんどん増してきている。ロセフは彼女をおんぶして、続きを上り始めた。
「ちょっと!何やってんの!」
この半年ぐらいでロセフはマギーの身長を抜かしたが、それでもそんなに体格差があるわけではない。
「任せろ。」
ロセフは、それだけ言うと黙々と先に進んだ。完全に強がりだったが、彼女を巻き込んでしまったのは自分だという自責の念が、ロセフを突き動かしていた。

10Fにつくと、そこにはシュネンゲがいた。9Fでも出てきていたカマキリ族の魔獣だ。しかし、普通のシュネンゲの体長が大きくても1.5mぐらいなのに対し、10Fの個体は3m近くあるように見えた。階段から上がってきた瞬間には、こちらに気付いているようだった。シュネンゲは獲物の様子をじっくり観察しようと、こちらに向かってくる。壁に設置された松明がシュネンゲを左右から照らした。ロセフには、その姿はかなり不気味であり、不思議なことに神々しくも感じられた。階下は火が回っていて、退路が断たれていた。10階には部屋が一つしかなく、屋上へ続く階段以外に逃げ道はない。二人は死を覚悟した。

       

表紙
Tweet

Neetsha