Neetel Inside 文芸新都
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 モッさんの気迫の投球は、同点に追い付き沸き立つ相手打線を再び沈黙させた。

「やっぱり……」

 健太郎が、桜井の目の前で円陣を組む選手達を眺めながら呟いた。

「何がさ?」
「指だよ。そこまで身長もないのに、小学生であれだけ伸びのある真っ直ぐ投げてるから
気になったけど……モッさん、肘から先と……指が普通の小学生に比べて長いんだよ」
「ふーん……」

 マウンドに一羽の鳩が降り立ち、喉を鳴らしながらトタトタとプレートの周囲を闊歩していた。

「ほれ、モッさんの足見てみれ」
「ウホッ、いいスパイク」

 モッさんのスパイクは、ミズノの最高級スパイクだ。
 強かに後頭部をシバかれた。

「このチンコ!スパイクの事じゃなくて」
「I know…確かにね」

 円陣を組み終わりベンチに並ぶ選手達を左から右へ、見比べる。平均的な小学生の身長
と言えるモッさんだが、身長に比べてそのスパイクの大きさは異様だった。大人並と言っ
ても過言じゃない。一般的に前腕部の長さと、足の長さは同じと言われている。

「ピッチャーも身長より指高って言われてるしね」

 鳩が飛び去ったマウンドに立ったワロースの投手は、それこそ身体全体が大人サイズと
いった、規格外小学生と形容して適当だ。
 六回のオモテ、日差しが高くなるにつれて剥き出しの選手達の腕に光るものが目立つよ
うになってきた。

「こらえろ……みんな、がんばれ」

 いつの間にか、そんな言葉が自分の口から漏れていた。
 両チーム、一歩も譲らない。力強く押していく投球があれば、豪快に打者が振り切り、
鋭い球際の打球には跳びついてバックが投手を助けた。
 そうして均衡状態を保ったまま、七回の攻防が終わった。


       

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