Neetel Inside 文芸新都
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 注目されてもいない二打席目も、無事に見逃し三振。俺はバッドを放り投げて黙々とプ
ロテクターを付けている。

「よぉ、キツかったらペース抑えてもいいぜ」

 健太郎がヘラヘラとマウンドから呼び掛けてきた。
 コイツにペースを抑えさせたら、打たせない為に一体どんなアホな変化球を投げてくる
か分かりゃしない。さっき試しに投げさせたドロップカーブだって体で受け止めなかった
ら振り逃げを喰らってただろう。

「お構いなく!!……そー言えばオメー」

 マスクを付ける前にマウンド上のジャイアンに聞いておきたい事があった。

「このヤバい試合組むのにどんなトリック使ったんだ!?」
「えぇ実際大変でした」

 脇にグラブを挟み、両手でボールをこねながら健太郎が口を開いた。

「彼等が五人がかりで俺を押さえ付けてズボンを無理矢理
「ワーッ!!」

 そういう世界に縁遠い人が読んでたらどうするんだ一体。

「本当は八人がかりで」
「何が真実だ」
「それで止むを得ず条件を付けて説得してこの試合を……」
「テメェー!!俺達を売りやがったなァ!!」

 ファーストで話を聞いていた笠原さんがカタパルト推進でツッコんで来た。

「いきなり何を言いますか!!」

 急に健太郎の顔が凛々しくしまる。笠原さんの顔に、なんだいつもの冗談かという安堵
の表情が浮かんだ。

「巻き添えにしたのはあなた達だけじゃありません!!」

 野手全員の顔が素早く回転して、傍らにいる審判団を青い顔で見つめた。


       

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