Neetel Inside ベータマガジン
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投げ作家アンソロジー
ゴミクズ

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 え、キュー?誰ですかそれ?あぁ、あの投げてばかりの、絵も汚い、話もつまらない五流作家の事ですか。




 彼は、死にました。というより、僕の心の中で彼の存在は消えました。幼い頃から漫画を楽しみ、描く事を仕事にしたがっていた彼は、この世にいません。もはや、絵を描くことすら僕は出来なくなりました。ふと、漫画を描いていたな、と思い出すことはありますが、筆を持ったとしても、絵を描く術を忘れてしまったかのように右手は動きません。
ですから、読者の皆さんのご期待に添える訳ではございませんが、彼の悩みの内であった事を、同じ人間であった僕が打ち明けようと思います。

 彼は、コメントが来ない事や叩かれる事に悩んでいました。その事で、本来の学業をおろそかにし、一日中コメント欄を離れなかったようです。
 ですから、彼の卒業は危うい状態でした。それでも彼は描き続けました。それは何故か?
 言うまでもなく、コメントを貰うためです。

 彼に、創作意欲はもはやありませんでした。漫画の絵が、どんどん崩れていったのをご存じでしょう。彼はもう、絵や内容の事など、どうだって良かったのです。
 彼は形ある答えが欲しかった。それは、同級生が次々と賞や連載を勝ち取る中で、焦りもあったのでしょうが、哀れな事に、彼は賞など、時間をかけて実力を高め勝ち取るようなものより、迅速に自分を認めてもらえるコメントの方が、大事だったのです。ですから、同級生との差は開く一方でした。それでも彼は新都社に投稿を止めませんでした。一方で、コメントが来るのは嬉しかった。しかし、それは内容ではなく、数で判断していたようです。どれだけ懇切丁寧なコメントが来ようと、彼はそれを唯の一個のコメントとしてしか扱いませんでした。結果、コメントを求めるが余り、内容が支離滅裂なものになり、余計に読者は離れていきました。

八月の彼は、コメントを火とたとえるなら、それに群がる黄金虫のように、身を焦がしていきました。そうして、一つ、一つずつ、漫画の楽しみを失っていきました。
最後の漫画を描き終わったとき、彼はこう言いました。「もう漫画を描きたくない」
これほどまでに苦しみながら、なお漫画を描こうとする彼を、私はもはやそのままにはしておけませんでした。
 
今の私に、作品を描こうという気は微塵もありません。絵に対して、恐怖に近い感情を持っています。これほどまでに追い詰められ、犯罪者でもないのに迫害され、笑いものにされた彼の事は、哀れに思いますが私は彼のようにはなりたくはありません。

このアンソロジーは、投げ作家を笑いものにするという名目でつくられているようなので、これで彼の事は罵詈雑言、なんでもかけてくれて構いませんが、私の事は新都社から忘れてくださればと思います。私はもう漫画描きでも、新都社民でもありません。では、皆様ごきげんよう。

       

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