憂鬱なジン(酔っ払い放浪記)

1.憂鬱なジン(酔っ払い放浪記)

朝の5時に目覚めると、唐突な憂鬱感と倦怠感。このままでは寝床から起きれないので昨日から枕元に用意してたジンを煽る。まあ、そんな気分じゃない時も結局は飲むのだけれども。本来ならボンベイを飲みたいけど、酔えれば何でもいい。「LSDか何か、トリップできるものがあればいいのに」なんて考えても、そんなルートは知らないしお金も無いから、とりあえず散歩でもしよう。

外に出ると、ちょっぴり涼しい風が体にまとわり付く。酔っ払っている分にはちょうどいい具合だ。フラフラと街を上へ上へと進むと、街のちょうど中層と下層の間くらいの、ビルの屋上に出た。下層といってもかなり高い場所で、ほとんどの街並みが見下ろせる。バラックや小さなビルとともに、朝焼けが燃えている。上層からの眺めはどんな感じなのだろうか、もっと素晴らしい眺めなのだろうか、と思うけど、上に行くには1週間はかかるので行ったことはない。何よりそんなに何日もお酒を持って歩くのは大変だ。中身の入ったビンはとても重い。

そうしてしばらく街を眺めていたら酔いが覚めてきて、かなり時間が経っていることに気付く。というか、家を出てから2日経っていたらしい。そもそも自分は街の下の方に住んでるから、ここまで歩くのは相当時間がかかるはずだ。だけど「泥酔してたからここまでの道のり、全然覚えてないな」なんて気付く。要は意識を飛ばしてずっとフラフラ歩いていたって事だろう。道理で足が痛いワケだよ。跳び屋に下まで連れて行ってもらったり、迷子屋に道を教えて貰えばいいけど、生憎そんなお金はない。とりあえず地図で酒屋を見つけてお酒を買おう。

酒屋で安ウイスキーを買って、一気に飲み干す。多分この店の裏で作ってるんだろう、一本150円とありがたい値段だ。妙な刺激臭もあるけど自分にはちょうどいい。喉元を通り過ぎてから、すぐにお腹の少し上がポカポカと暖かくなる。体に燃料が入ってきたみたいだ。ご飯もしばらく食べてないから回りがいい(と言っても、普段から1食だけど)。すぐに目の前がグルグルと廻りだす。足元がおぼつかない。もっと酒を。カバン、持っていない、地面にビンが。キャップを。口元から溢れる。明日の、早く

ブラックアウトから目覚めると、家の布団の中だった。迷った時は帰巣本能を使うのが一番だ。お金もそれほどかからないし酒も飲める。ただ、頭が猛烈に痛くなるけれど。日時計を見ると散歩に出た日から1週間も経っていた。たくさん歩いただろうしお風呂にも入ってないからとても臭ってそうだ。ただ、風呂に入るのも面倒だ。疲れたし酒を飲んで寝よう。後のことは、明日の自分がなんとかする。
おやすみ。