Neetel Inside ベータマガジン
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★新都社作品感想2018★
2017年11月13日「インベンター!」

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11月5日更新作品から



「インベンター!」http://suitopi1501.web.fc2.com/inventer/index.html




 スイトピ先生作品。
 まずは完結おめでとうございます。
 ……と言っていいんですよね?(笑)
 それにしても本作は間違いなく伝説を残したと思う。
 連載中期(六話ぐらい)までは高画力&絆ちゃんの可愛さで期待していたのだが、七話後半で半年後に飛んだあたりからの急激なソードマスターヤマト展開というか強引なまとめ方にはちょっとがっかりさせられた。これは絶対に面白い大作RPGだ!と期待してプレイしたら、チュートリアルと最初のボス戦だけでエンディングを迎えてしまうとは、期待が大きかっただけに残念である。
 それでも投げることなく一応はちゃんとまとめて完結したのだから、投げ率が高い新都社・WEB漫画界隈では非常に律義さを感じる。長期連載の末に完結間近でエタってしまった作品は数多い。さすがにこれまで読んだ時間を返せとは言わないがそういう作品に比べたら百倍も律儀で潔い。長期連載になっていたら下手に打ち切るのが難しくなっていただろうし、エタってしまうよりは全然良いというか、エタるのが普通だから尚更異色である。ジャンプの打ち切り漫画を彷彿とさせる終わらせ方は、ソードマスターヤマトに代わるインベンター的展開という伝説を残した。エタってしまった他の作者さんは、終わらせ方の参考にしても良いぐらいだ。
 ゆえに、本作は初期は大作RPGが始まったワクワク感で楽しませてくれ、後期はその打ち切り展開でネタ的に楽しませてくれた。結果的に最初から最後まで読者は振り回されて楽しませてもらったといえる。ありがとうございました。

 ではなぜスイトピ先生は打ち切らねばならなかったのかという、ダメだった点もちゃんと考察したい。
 一番は、キャラの関係性を描くのが下手だったように思う。主人公の八木、ライバルの龍見、ヒロインの絆、上司の北村。それぞれのキャラは魅力的だったと思うが、キャラ同士の関係性の構築と掛け合いが少ない。「八木ー北村」「八木ー龍見」のラインぐらいだろうか。キャラ同士の関係性が見られたのは。「八木ー絆」は無いんだよなぁ…。主人公がヒロインと殆ど会話をしていないという漫画なんて中々ないぞ。
 八木がドラッグストアでのバイトの思い出を大切に思っていたような回想シーンがあったが、これも唐突というか、別にお前そんなにドラッグストアで働くことに情熱を燃やしていたようには見えなかったけどなぁ?と。だからあの回想シーンはギャグなのかどうか判別がつかなかった。
 龍見だってライバルキャラだとは思うが、北村にあっさり敗北してすごすご逃げ帰った小者キャラという感じになっていたので、何でお前がラスボス面して再登場してんだという。これはさすがにギャグですよね?と。
 ただ、キャラの掘り下げ・関係性を描くことをしなかったために、大量虐殺を躊躇なくやらかす絆のサイコパスぶりを演出できた面もあったものの、それ以外はキャラの魅力を半減させてしまっている。
 これは連載初期からみられる問題だったので、打ち切りを速めた最大の原因ではないだろうか。

 二番に、インベンターやサイキッカーの思想の相違を鮮明に打ち出していたのに、そのあたりの説明が読者に上手く伝わっていなかったのではないだろうか? 
 第三話にあったように、サイキッカーは政府に認められなかったばかりに、第二の人類として暴力的にでも旧人類を征服し進化を促そうとしていた。つまり、ガンダムのニュータイプ思想というか、ヒットラーの優生学に基づいた考えをしていた。
 対し、インベンターは政府側の意向を汲んで動いていた…?でいいんだよね? 結局、北村の「上」の人間たちの様子が出てこなかったので何とも言えないが。
 そのあたりの対立軸をもっと鮮明にしてほしかったかなと。組織ぐるみの戦いというスケールのでかさが感じられず、単なる能力者バトルを見せるだけのものに留まってしまった。そこは、政府の人間なり、超能力や発明者の能力に目覚めた者の家族を出すなりで、能力者と一般人の感覚の違いを見せるとか、超能力革命というのは本当に悪なのか? 主人公たちがそれを防ごうとするのは正義なのか? といったところを見せて欲しかったなと。つまり、ガンダムを期待していた(笑)
 例えば、八木や龍見が能力に目覚めた「工場見学での事故」だが、それで二人とも一般人のクラスメイトを自分たち以外死なせている。でもそれに対する二人の感情というのが見えてこない。八木は「龍見、お前の母ちゃん泣いてたぞ」とは言ったが、それぐらい。もっとこう、何か別の見せ方あったんじゃないかなと…。
 これもまた、打ち切り展開になる前からできたことだろうし、それがもっと鮮明にできていれば打ち切られることもなかったのでは?と、悔やまれるところだ。

 気になったのはそれぐらい。
 まぁ、何にせよ、そうやって作品がボロボロになってでも終わらせたのは大したものである。
 「これはまずいなー。駄作になってしまう…」などと感じながら、それでも筆を折らず、作品を終わらせるというか息の根を絶つのは並大抵の精神でできることではない。
 それをやっただけ、スイトピ先生は凄い。得難い糧になったことだろう。
 だから、先生の次回作にご期待ください!である。





以上です。

       

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