Neetel Inside ベータマガジン
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★新都社作品感想2018★
2018年1月26日「ミシュガルドを救う22の方法」

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2017年11月22日更新作品から



「ミシュガルドを救う22の方法」http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18653



 新野辺のべる先生作品。
 以前にも感想を書いたことはあるが当時は始まったばかりだった。まさか本当に22ものエンディングを書き切ってしまわれるとは。いくつかは救ってないというかバッドエンドだろ!というものもあったりするがw
 ともあれ、完結お見事です。お疲れさまでした。
 ゲームブックというのは本当に懐かしい。世代的に私は80年代のファミコン黎明期を知っている世代だから、当時流行していたゲームブックも良く覚えている。読み進めるとバッドエンドになりまくるのもご愛敬というやつだが、普通の漫画や小説より遊び心があって楽しかったりする。小学生ぐらいの頃には自作のゲームブックを作ったりしていたものだ。90年代初期まではゲームブックは町の書店で結構見かけた気がするが、90年代後期になるとめっきり見かけなくなってしまった。以前はどんな小さな本屋でも一角はゲームブックコーナーがあったものだが、それも消えてからは古本屋に古いゲームブックを持って行っても買い取ってくれなくなった。まぁ、そもそも4000~5000円ぐらいするファミコンソフトが買えない子供のための代用品だったのだろうし、90年代には「かまいたちの夜」とか「街」とかいった洗練されたスーパーファミコンやセガサターンやプレイステーションなどのサウンドノベルのゲームが出てきたので、そういうものに取って代わられたのだろう。ゲームブックが消えてライトノベルが隆盛を極めたというのもあるだろうし。ゲームブックにはゲームブックなりの楽しみ方があったので寂しいところである。
 余談が過ぎた。本作の感想に移る。
 まず、本作の惜しいところはリンクが1ページ目にしか貼れないニーテルの仕様上、選択肢が出てきた時にいちいちブラウザバックしないといけないところだ。自サイトならそういう問題も解決できるが。そういえば新都社漫画でゲームブック形式の作品ってあっただろうか? 色々と読んできたが記憶に無いなぁ…紙媒体の漫画よりもWEB漫画の方がゲームブックという形式には非常に向いていると思うので、誰かやってみてもいいと思うのだが。
 更に、もう一つ惜しいところはゲーム部分が「選択肢を選ぶだけ」になっているところだ。ヒットポイントやら所持アイテムやらも表示できるようにしておいてもらえると面白かったのだが。例えばウンチダス状態のメゼツはヒットポイントが3あって、罠や敵の攻撃を食らうと1ポイント、例外的に深刻なダメージで2ポイント減ったりとか。ダイスロールで結果が変わるとか。ヒットポイントが無くなればゲームオーバーですとか。その方が選択肢を選ぶのにも結構真剣に考えられるようになる。昔のゲームブックはそういうTRPGみたいな遊び方をしていたので。古本でゲームブックを買うと既に本のあちこちに以前の所有者の書き込みがあったりしてネタバレくらったりげんなりすることも多々あったものだ。数値的なところで悩むのは、所持金の使い道について悩むところぐらいだったが、所持金が多い少ないは大して展開を左右しなかったので。
 だが、膨大な設定とキャラクターがあるミシュガルドなので、それらをより多く消化するために色んなIFストーリーを見せていくという点では大成功している。
 また、分岐後の結末を知るためにも未完成の状態では読むのを躊躇してしまうところ。それだけに、完結後は全ての分岐が読めるので一気読みには適している。

 さて、最初に選んだのは以下のルート。
 序章→1章→4章→10章→11章→17章→最終章15
 割と良いルートを選んだようだ。
 途中の冒険も見応えがあったし、料理対決は笑えたし、甲皇国はカールが皇帝のままだから世界も徐々に平和になりそうな気配だし、メゼツも密かに宇宙人のエイリアから世界を救っているしね。皇帝になったカールが責任感無いしはっちゃけてて「高みの底」の真面目なカールくんは見習ったらどうだとちょっと笑えて来る。途中に出てきた義母トレーネとのエピソードも良かった。不覚にもほろっときてしまう。

 次に選んだのは以下のルート。
 序章→2章→3章→7章→14章→最終章12
 何だか七転八倒という感じで展開が目まぐるしく変わっていくのだが、禁断魔法がまた発動したり、戦時中のいざこざが尾を引いていたりとシリアスな展開が続く。だが最終的には終わりよければすべてよしというか、最後の最終章12が非常に良かった。いがみあいまくっていた全てのキャラが共闘する熱い展開。大団円とはまさにこのことか。ミシュガルドでは何も手に入らなかったが、人類はかけがえのない宝を得たということで。これも中々良いルートだった。

 次に2章からの分岐を読んでみた。
 序章→2章→5章→最終章2
 獣神帝やいきなり序盤で死んだイーノ、ジョニー・カナンの設定を拾っていて興味深かった。色んなものに変化するメゼツが死んだイーノの身体に乗り移ってエルフの幼女として生きていくなど、つくづくメゼツは便利なキャラであるw 魔王となったシャルロットの暴走も実に面白かったw

 次に5章からの分岐を読んでみた。
 序章→2章→5章→8章→最終章4と5
 ウルフバード、レイン、ケーゴあたりの事情が書かれていて、うまくまとまっていた。本作の欠点としては余りにキャラが多すぎて描写がそれぞれ薄くなっているというのがあるが、キャラの絡ませ方が実に上手く、どうしようもない悪党でもそれなりに輝いて見えてしまうのが面白い。

 とまぁ、そんな感じで。
 ちょっときりがないのでこのへんで。
 ミシュガルドというシェアワールドの良さを遺憾なく発揮していると思う。キャラシートと見比べながら読むのはしんどいかもしれないが、ミシュガルド小説の入門編としても良い作品のように思われる。




以上です。

       

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