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★新都社作品感想2018★
2018年2月9日「高みの底から」

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2017年12月24日更新作品から



「高みの底から」http://nanos.jp/takaminosoko/



 火口先生作品。
 タイトルに「ミシュガルド」がついていないので忘れがちだけど実はミシュガルド世界の作品。
 ミシュガルドは他作者が創作したキャラを動かしていくのも魅力なのだが、主要登場人物はすべて火口先生オリジナルキャラとなっている。そのため、数あるミシュガルド作品でも、本作は特にミシュガルド色が薄く、まったく他のミシュガルド作品を読んでいなくても楽しめるようになっている。
 ただ、より深く本作を楽しもうとした場合、ミシュガルドの他の作品を読むのはちょっと大変だし、とりあえず本作登場人物について書かれたミシュガルドのキャラクターシートを見ておくと良い。以下の三人のキャラシートはこちら。
 
 主人公カール https://www65.atwiki.jp/mishgardwiki/pages/97.html
 主人公の父親フォルカー https://www65.atwiki.jp/mishgardwiki/pages/433.html
 工場のお兄さんアルベルト・アドラー https://www65.atwiki.jp/mishgardwiki/pages/46.html

 あと八話で出てきた貴族の女の子はこの子。
 ククイ https://www65.atwiki.jp/mishgardwiki/pages/111.html

 また、火口先生のもう一つのミシュガルド作品である「ガイシ胎動」も読んでおくといいだろう。こちらでは成長したカールの姿が見られるので。高みの底でお兄さんぶっていたアルベルトがカールの部下となって登場もしている。
 ガイシ胎動 http://nanos.jp/gaishi/

 他にもこういうのとか http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18743&story=57
 こういうのとか http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18743&story=48
 こういうのがある http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18743&story=8

 勿論、カールはミシュガルドでも人気キャラなので、他作者が描かれたカール登場作品も多い。知れば知るほど面白いミシュガルド! ぜひあなたもカールを探してみてくれ。ウォーリーのように。

 さて、他のミシュガルド作品を全然読んでいなくても本作は読んでいると言う人も結構多いと思われるので、ミシュガルドの世界観を知っている者から本作のストーリーを軽く捕捉しておこう。
 
 主人公の少年カールは、舞台となっているドイツ風帝国主義の軍事国家・甲皇国の現皇帝の孫である。
 この国の支配者たる貴族は幾つかの派閥に分かれている。
 皇帝一族の「甲家」
 和平・穏健派の「乙家」
 好戦・過激派の「丙家」
 カールは甲家の母親(現皇帝の娘)と乙家の父親の間にできた皇孫ということになる。
 皇帝の血筋に連なる者は多数いて、カールの母親は皇帝の座を狙っていたが、その後継者争いで謀殺されてしまった。母親を殺した犯人だが、カールの母親は国を戦争に導くのにも積極的だったことから、どうも和平派の乙家によるものらしい。
 乙家出身の父フォルカーは、母を非常に愛していたことから、心を病んでしまう。このあたり、まだ幼いカールがいるというのに実に情けない父親であるという印象。
 カールは父親を安心させたいがために、素行を悪く見せようとする。皇帝の後継者らしく立派に振舞ってしまうと母親のように謀殺されかねないからだ。
 また、街に出ることに興味を持ったカールは、下町の工場の平民らと交流を持つ。
 キャラシートにあった食道楽要素が少年時代から如何なく発揮されていて、少年らしからぬ食レポが楽しめる。
 絵の美麗さもあいまって実にリアルで美味しそうな料理が(素朴な庶民料理から高級なスイーツまで)次々と出てきていて、各話サブタイトルが料理名になっているのもセンスが良いなと感じる。
 ただ、食事をとろうとしないフォルカーのためにカールがホットドッグのようなものを考案していたが、それを食べたフォルカーがどう反応したかなどまでは描かれていない。これは意図的なのか分からないけど、例えば「ミスター味っ子」のようなグルメ漫画でよくある「うまいぞぉおおおおー!」と食べた人が喜びの表情を見せたりして何かが解決するとか物語が進むとかそういう要素がまったくないことを示唆してもいる。グルメ要素はあくまでおまけというところだろうか。
 つまり、「ミスター味っ子」のように子供が主人公だけど、都合よくグルメで何かが解決していかない以上、冷徹な大人の世界の論理で物事が進んでいく。
 母親は謀殺されるし、父親は病んだうえに自殺未遂しちゃうし、アルベルトは兵隊にとられていくし、何かと子供のカールには厳しい世界だ。
 でもこれは「過去の話」な訳だし、どこか悲し気な雰囲気がするのはしょうがないかもしれない。ガイシ胎動で抜け目のない情報将校へと成長したカールの姿を読者は知っているわけだし。それに至るまでのストーリーなわけだ。
 ということで、本作を読んで楽しめた読者は、他の火口先生の作品のカールの姿を追っていくと楽しめるし、感慨深いものがある。
 これこそミシュガルド「入門編」として、ウッチェロ先生の「ビビの日々」と並んで、より推奨したい作品なのである。






以上です。 
 

       

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