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★新都社作品感想2018★
2017年11月8日「王の剣」

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11月3日更新作品から



「王の剣」http://tegamanga.x.fc2.com



 tega先生作品。
 タグ付けして更新して頂いていたが、タグ無しでも勝手に書いていたかもしれない。というぐらい、好みの作品だ。
 中世ファンタジー世界を舞台としているが、魔法などは出てこず、代わりに王と貴族・騎士・少数民族・奴隷民族といった立場の人々による骨太の群像劇が描かれている。と同時に、まるでノルマのようにほぼ毎回挟まれるエロシーンが見どころだ。

 最初、本作が始まった時、また私好みの中世王道ファンタジーが見られると胸躍ったものである。「ファラトリア・ストーリー・フォークロア」が始まった時のようなワクワク感があった。ただ、蓋を開けてみると思ったよりエロシーンの比率が高かった。まさか「マニピュレーター」も顔負けなほどの頻度とは…。
 一番グッときたエロシーンはサルタジアに妙な器具を使ってエロ拷問されるのでは?というあたり。中世らしい残酷な雰囲気がした。しかし直接的な描写は避けられている。それ以外はシチュエーションこそ凝られているが、概ねノーマルセックスの範疇で、レズもあるけどそこまで変態的なものは無い。要するに、tega先生は基本的に女性キャラに優しい。エログロ描写があるとされるが、そこまで残酷なものにはならない。
 お側仕えの女性キャラも殺されたりレイプされそうになりながらも結局はされない。また、エロシーンの多いレイラやカイにしても相手役となったのは結局は紳士的なアルデバラン・ユリア丞相・味方となる大地の民であり、レイラやカイというキャラの魅力を際立たせるだけのものだった。
 つまり、無意味に凌辱・虐待されたりしないので、陰惨になることはない。エロシーンには全て意味があり、必要最低限にしてストーリー上必要なものだ。ノーマルな読者がエロを楽しんでいられる絶妙のバランスと言えるだろう。逆に、凌辱・虐待が好きな読者には物足らないともいえる。
 ただ、tega先生自身がエロシーンを楽しんで描いているように見受けられるので、楽しく描かれるのが一番だし、このままお好きなように描いて欲しいところだ。
 まぁ、本筋の方が気になるので、もう少し控えめでも私は構わないけど…。

 さて、本筋の考察もしたい。
 エロシーンに目を惑わされがちだが、本筋あってこそ。本作最大の魅力は、困難(エロ含む)にも負けない自己犠牲の精神を尊ぶ強い女性たちの姿だ。主人公のレイラとカイは、それぞれ違う立場から忠実な王の剣になろうとしているようだ。
 私が最も好きなキャラはレイラだ。彼女が「私の身体が陛下のスープ一杯、毛布一枚にでもなるなら喜んで差し出す」と言っていたあたりはグッときた。彼女が報われる日は来るのかというのが一番気になるところ。
 次に好きなキャラは丞相ユリアである。かなり複雑な立場と思考をしているようだ。ユリアは前国王ケビンの王の剣であった。彼女はいわばレイラやカイの上位互換的な存在。王妃の座を巡って敗れたため、王妃の子である現国王レオンに良くない感情を持っているというが、カイに語ったところによればレオンへの忠誠は絶対無二とのこと。ただ、政敵を排除するために恋仲らしい軍の将軍不在の折をついてクーデターを起こし、さらに替え玉を仕立ててレオンを政治から遠ざけようとしている。彼女の真意がどこにあるのかが気になるところだ。ここまでのところで手の内をすべて見せたとは思えない。
 が、予想としてはレオンが国王としての自覚を強く持って成長すれば、ユリアは退くつもりなのかもしれない。レイラ、カイ、それ以外の女性もほぼすべて。自己犠牲の奉公を旨としている。恐らくユリアもそうなのだろう。もしレオンが順当に成長して自分を討つとなれば、自らその王の剣を受け止めるだけの度量がありそうだ。
 自己犠牲は本作の一つのテーマとなっていると思う。自己犠牲は即ち愛である。人類が普遍的に貴いと感じる感情。本作は愛に満ちたストーリーなのである。
 だからこそ、称賛を惜しまないのだ。






以上です。

       

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