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★新都社作品感想2018★
2017年10月17日「ファラトリア・ストーリー・フォークロア」

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2017年10月17日更新作品から

「ファラトリア・ストーリー・フォークロア」http://falatoriastoryfalklore.web.fc2.com/



 ツングー正法先生作品。
 本作は去年にも感想を書いた(http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18928&story=21)が、タグ付けで更新して頂いたので優先して感想を書きたいと思う。
 以前の感想でも書いたが、こういう指輪物語やウィザードリィーなどの世界観に近いクラシックな中世ファンタジーは個人的に好みである。
 CHAPTER1のチンゲル戦は非常に見応えがあり、人間同士の中世の武具を使った戦いには目を見張るものがあった。
 次に、CHAPTER2では、主人公・アトレイの成長をじっくり描いてくれていた。新人が味合う洗礼をこれでもかと描き切っていたと思う。また、雑魚と思われていたゴブリンのモンスターとしての恐ろしさも見せてくれた。ただ、描写が丁寧ではあるけれど、ストーリーをもう少し早く進めて欲しいというもどかしさもあった。豚の救出だなんて小さなクエストにいつまでかかずらっているんだと。
 そしてCHAPTER3、今度はカードゲーム編ともいうべき内容となっている。CHAPTER1や2で見られた肉弾戦、血沸き肉躍る派手な戦闘もなく、精神世界における戦いとなっていて、しかも主に活躍するのが精神的に安定しているボアティケアとあっては安心感もあって、これまでのように主人公勢が死ぬんじゃないかとハラハラドキドキするようなことも今のところない。
 ただ、CHAPTER1のチンゲル戦にも名前は出ていたが、今後主人公たちの敵対組織となっていくであろうギルド・ブルーティアのメンバーが出てきており、全体的なストーリーとしては横道に逸れている訳ではないようだ。テンポはゆっくりだが、着実に進んでいる。

 何が言いたいのかと言えば、コメント欄でもそういう声はちらほらあるが、最初のCHAPTER1が最良の導入だっただけに、CHAPTER2や3どちらも「もっとストーリー早く進めてくれよ」と感じてしまうものがある。
 商業作品を例に出すとベルセルクみたいなものだ。描写も背景も丁寧だが、いつになったら終わるんだと感じてしまう。
 WEB漫画はコンビニフードかファーストフードのようなところがあり、レストランで出されるフルコースではない。包装や見た目や形式は二の次で、とにかくそこそこ味が良くてすぐに食べられるものが良いとされる。
 そういう意味では、本作はレストランで出されるフルコースの方に近い。丁寧に調理されており、オードブルからスープからメインからとちゃんとマナーや形式に沿って料理が出されている。それを大して味わうことなく早く腹を満たすことしか考えていない味音痴の読者からすると、まどろっこしく感じてしまうだろうが…。グルメでマナーの分かっている読者はじっくり待とうではないか。

 独自の世界観で築かれた王道ファンタジーを描き切ろうとしているツングー正法先生の心意気を感じるので、どうかこのまま進めて欲しい。
 俗にいう「なろう小説」における長ったらしいタイトルでチート主人公が努力も無しで無双するような異世界ファンタジーが溢れる中、実に骨太で硬派で好感が持てる。
 異世界なんだから食べ物も武器も価値観も、何もかも違って当たり前なのに、現実世界の高校生程度の知識が及ぶような「よくある世界」な訳がないのだ。
 ここまで丁寧に、着実に独自の世界を築き上げてこられたのだから、いっそもうライフワーク的にすべてを描き切って欲しいと思う。
 完結が十年後、二十年後になっても追いかけるつもりだ。 

 …と、ここまで書いて思ったが、私の感想だけ見るとどんなお堅い高尚な作品なのかと思ってしまうが、脱衣ヴェントとか、淫魔サヌ・ジャークとかとか、番外編とか、割と読者を笑わせにきているところだってある。
 そのあたり、ツングー正法先生なりに新都社テイストへの歩み寄りというか、箸休めになっているようだ。
 未読の方は、食わず嫌いせずに読んでみて欲しい。





以上です。

       

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