Neetel Inside 文芸新都
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妄想遊戯
1=食い散らし

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妄想遊戯



1=食い散らし


うっぷんが、行き場のないうっぷんが溜まっている。
スーパーの食費売り場を練り歩く俺。
買い物かごには乾麺くらいしか入っていない。

それもそのはず、俺は先日バイトをやめてニートになった。
今までバイトで溜めたお金が財源だから、贅沢が出来ないのだ。

いつから俺はこんなダメ人間になってしまったんだろう。
18を機に夢を叶えるため、一人で上京した。
今ではその思い描いていた夢でさ思い出すことはできない。

俺はだるだるのトレーナーのスソで鼻をすすり、惣菜のコーナーで立ち止まる。
カラッと揚がったコロッケに鳥のカラアゲに、それらは見るだけで俺の食欲を駆り立てる。

欲しい、食いたい。
でも、ここで買ったら金が!!

贅沢なんてできない!!


俺はその思いとは逆に、この惣菜を食い散らしてみたくなった。
この惣菜レジに通す前に食べちゃえば、払わなくてもいいんだ!
店員にばれなければ…。


その思いが徐々に強くなっていく中、理性に抑制されていた俺の常識は、いともたやすく崩壊した。




バリバリバリっ!!
買い物客の多くの視線が俺に当たるのがわかる。
でもそんなの知らん。
油ぎった両手でトンカツをほおばる。
歯切れのいい衣が秒/コンマ単位で床にポロポロと落ちていく。


店員がこの騒ぎをかぎ付けて俺を取り押さえようとしてきた。

つ、捕まってたまるかぁああ!
罰金とかになったら、すぐに俺の貯蓄は底をつくんだぞ!!
来るんじゃねぇええ!!!


俺は店員から逃げるのと水分を補給するのを目的に、左手で横腹を押さえ 駆け足で牛乳売り場へ。
だがそれが悪かった。

店員を甘く見ていた。俺の駆け足に対して、店員は今年の福男になるために猛ダッシュをするかのように
恐ろしいスピードで追ってきたのだ。


実際には甘く見ていたのではない、ダッシュが出来なかったのだ。
思いのほか腹に溜まった惣菜がそれを圧迫して、横腹に苦痛を与えていたのだ。

誤算だった。食った後にすぐ走ると横腹が痛くなってしまうことを計算に入れてなかった。


俺は店員に首根っこを捕まれ、事務室へと連れ込まれた。


(終)

       

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