Neetel Inside 文芸新都
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妄想遊戯
2=慣性に身を委ねた垂直落下

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2=慣性に身を委ねた垂直落下(1)
 


ヒュオオオオオオ。
私は今、20階はあろうかとは思われる高層マンションの屋上に
しゃがみこんでいる。
両の手は落下を防ぐ、私の腰の丈ほどあるフェンスをしっかりと掴み。


南下し始めた太陽が私を照らしていく。
まるで過去の清算を始めたかのように。


私はぶっさいくなメンヘラだ。
自分で言うのもなんだけど、ほんとやばい。
あー●そなんて目じゃない私。

自分の体型には似合わないゴスロリの服に縛り付けられる私。
生地を結ぶ紐が悲鳴を上げている。
自分で言うのもなんだけど、ほんとやばい。
世界はそれをボンレンスハムなんていうけど、そんなの目じゃない私。



絶望した。
今から私は、空に足をかけ地上に向かって飛び立つ。
そうふんぎりをつけようとしたときだった。


その時だった。
私の中に今までと違った、なにか違う感情が生まれいづる。


死ぬ前になんかしちゃえ!
17で死ぬんだ、若すぎる死をいたんで
この俺が許す。
なんかしでかせ!!



私は妙な高揚感に包まれていくのをひたひたと感じた。


フェンスから身だけを乗り出す。
地上では秒針に身を任せて日常を送る人たちが
こまごまと動いている。


私はまず初めにツバを落としてみようと思った。
地上は住宅街、昼過ぎということもあり人も多く賑やかだ。
的には困らない。


私はすかさず口内でツバを溜め込む作業を始める。
興奮が、確かな興奮が実感された瞬間。



だが、ここでまさかの誤算が生じた。
せっかく溜め込んだツバを飲み込んでしまったのだ。



そう、普段ツバを溜め込むというトレーニングを
怠っていた私も悪いのだが、口内にツバを溜め込めるスペースを
把握しきれていなかったのだ。


口内に限界以上のツバが溜まった時、
人間はそれをジュバッとこぼす前に飲み込む構造になっているのだった。


それが一番の誤算だったかもしれない。
これは教科書にも専門書にも載っていなかったのだから!




ここにきて2つの誤算。
私のツバを溜め込むトレーニング不足と
人体の構造理解が足りなかったこと。


次からはこんな凡ミスは許されない。
そう腹をくくった私は、再びツバを溜め込む作業に入る。


(続く)

       

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