普通の女の子:ゆずはさん

その10


年末、前回の失敗を踏まえ…いや、踏まえることは無かった。
結局、忙しいスケジュールの合間を縫うようにソープに行くしか無くなった。
仕事のせいで思うように予約時間が決められず、今回もまた、当日突撃となった。
車を走らせ、風俗街へと到着。
ひとまず車をコインパーキングに駐車し、スマホで検索を始めた。
店はE店。もう突貫でR店には行かない。
E店のウェブサイトを見て、今日出勤の嬢についてネットの掲示板を調べる。
ただ、あまり時間も無いのでわずかな評判を拾い上げるのが精一杯だった。
が、今回は駐車したにもかかわらず、なかなか行く決心がつかない。
やはり下調べ無しはギャンブル性が高い。
車から降りて駐車場の鉄柵に腰をかけ、タバコを吸って落ち着くことにした。
あぁ、この1年色々あったようで記憶に残ることなんて殆ど無いわけだ。
たまにこうして風俗街に降り立ち、空を見上げながらタバコを吸うくらいが、唯一何者からも解放された自由の時間なのではないだろうか。
そして風俗街に来ることだって、性欲的にも肉体的にも限界があるだろう。
そのとき私は、何を生きがいにして生きればよいのだろうか。
と、物語のキャラクターにでもなったかのように哀愁に耽っていると、私の前を全速力で駆け抜けていくメガネリュック男子。
彼も風俗客なのだろうか。若そうだがこんなところで全速力で走っているなんて、ちょっとコミュ障的な、普通の子じゃなさそうだ。
そう、風俗は私生活で性的な経験が出来ない男が対価を払ってそれを得る為の場所だ。普通の人間が来るところではない。
かく言う私とて、人様のことを言えるような立場ではないわけだ。
再びスマホを取り出し、嬢の検索をし始める。
良さそうな嬢は既に受付終了となっており、入れる嬢も限られていた。
そして早めに入れそうな嬢は3人。3人ともさほど悪い評判でもない。かといって絶賛は無い。前回同様、後悔をする可能性もある。
コインパーキング代は無駄金となるが、いっそ諦めるか。
ふと視線を上げると、また誰か走ってきた。
今度はスーツ姿のヒゲで小太りの男性だ。私の近くで歩みを緩め、辺りを見回した。
そして唐突に声をかけてきた。
「さっきメガネの男が逃げてきませんでしたか?」
心当たりがバッチリある。
「リュック背負った人ですよね?あっちの方に走っていきましたよ?」
「どのくらい前ですかね」
「うーん、5分かそれ以上って時間だと思いますよ」
「そうですかぁ~」
「あ、何かあったんで…いやすみません、急いでますよね。引き止めてすみません」
「有難う御座いました~」
と、あえて詳細は聞かなかった。その男性は私が言った方へ走っていった。
何だったのだろう。
後から来た男性はその風貌から、おそらく風俗店の男性従業員であろう。
最初に走って行ったメガネリュック男子は客か。
風俗店は料金先払いが基本だから、金を払わずに逃げた線は無いだろう。となると、嬢への何らかの強要か。
私はソープのことしか書いていないが、この風俗街は箱ヘル、デリヘル、ピンサロ、エステもある。
それぞれの違いだが、詳しくはwikiを読んでいただきたい。簡単に書くと、
・ソープ:本番OK。風呂、マットあり。
・ヘルス(箱ヘル、デリヘル):原則本番無し。嬢は全裸or半裸。後はソープと近いが、追加料金が必要なプレイが多い。店舗を構えて、店内でサービスを行うのが箱ヘル、客の指定した場所(ホテルや自宅)に嬢が出向いてサービスを行うのがデリヘル。
・エステ:原則本番無し。嬢は着衣でマッサージと手コキが基本。追加料金のオプションで服を脱いだりフェラも可能な店もある。
・ピンサロ:飲食店の扱いのため、身体を洗う設備が無い。基本はフェラのみ。出来ることは店ごとにかなり差があるらしい。
である。
嬢への強要でかつ脱走できると言うことは、店舗型の店ではないだろう。この風俗街には風俗専用とも思えるホテルが数件あるので、そこを利用したデリヘルで本番強要、嬢が店へ連絡、店の男性従業員が来る前にホテルから客が脱走。と言ったところか。
追跡がかなり遅かったこともあり、メガネリュック男子は捕まらずに逃げ切れただろう。
…やはり何があったか聞いてみたかったのが本音である。
さて、人のことはともかく自分のことだ。
再びE店のサイトを見ると、今までとは別の嬢がすぐに入れる嬢となっている。
名前はゆずはさん。
ゆずはさんは以前からチェックしており、顔出ししており、かつ店のアカウントのツイッターで多数の顔出し動画を掲載されている。店の女性求人動画でもその姿が確認できた。
ちなみに店の女性求人動画とそれ以外ではかなり顔が違うが、それでも可愛い。
ネット上での評判も上々だ。ただ、T162、B84(C)W58H85とスタイル的にはいまいち惹かれるものはない。
とはいえ、今入るならゆずはさんしかいないと思い、すぐに店に電話し60分で予約を入れて店に向かった。
店まで徒歩5分。
店に着き、予約したことを伝えて待合室に入る。
年末ということもあってかなり混雑しており、待合室のソファは全て埋まっていた。
普段はあまりしないが、客の顔を見てみると、私と年齢が近そうな小柄でメガネの男性、ロマンスグレーでピシッとしたスーツの初老の男性、現場帰りそのままで来たような作業着のいかつい男性、4人組で全員太っており1人は腰パンならぬ半ケツパン、別の1人は℃レッドヘアと謎の男性集団。
その後も、予約無しと思われる客が出たり入ったりしていた。
30分ほど経った後、
「4番のお客様~」
いよいよ私の番号が呼ばれた。