高校生編(3) ドブ色の高校生活

 入学式での1件からもわかるように、私は高校生になっても対人恐怖症が全くと言っていい程治っていなかった。
 また、失声症も続いており、なんとばかげたことだろうか。5月中盤まで、クラスメイトの誰とも喋ることさえできなかった。勿論話しかけられても、だ。
 しかし、奇妙なことなのだが、高校の先生方とは話すことができた。大人は私を裏切らない。この時はそういうふうに思っていたのだろう。といっても、授業中突然、発表を当てられたりすると相手が大人でも、周りに人がいるからか、答えられないことが多々あった。そのために、よく怒られもした。

 高校に入学して分かったことは、進学クラスがいかに大変かということだった。
 授業は毎日8時限目まであり、なぜか英語のテキストを何度もクラス皆で一緒に大声で(皆の声が小さいと大きくなるまで延々と続けさせられる)朗読するコーナーが存在した帰りのHRを含めて、最短でも18時までは拘束された。
 また、朝のHRは朝のHRで英単語の意味を答える単語テストが必ずあった。その出題範囲は単語帳に記載された50語の中からランダムで10語が選び出された。そして、3問間違えたら必ず居残りで、再テストの場合満点を取れるまで帰らしてもらえなかった。
 それぐらいできらぁーとお思いの方もおられるだろうが、進学クラスは宿題も山盛りである。当時の私はまだ高校の授業を習い始めたばかりだということもあって、それらをこなしていくだけで、あっという間に真夜中を迎えることがほとんどだった。
 そう、つまり、英単語を覚える時間などほぼ無かったのだ。よって、私は寝る前に英単語帳を取り出し、何度も何度も復唱するのが日課となっていた。なぜなら、脳科学的に寝る前が一番物事を覚えやすい時間だということを何かの番組で知ったからだ。まあ、要するに、覚える時間を少しでも減らしたかったわけである。(そのまま寝てしまい、朝になることもしばしばあったが。)後、行き帰りの電車で単語帳を開くこともよくあった。なぜかって、そりゃあ寝る時間を少しでも増やすためだよ!!
 他にも進学クラスには大変なポイントは多々あった。土曜日の授業がほぼ毎週ある、総合テストが1ヵ月に1回行われる、進学クラスだけ学校側が校舎や待遇が違うなど特別扱いするので他の級のクラスの生徒たちに疎外される(ブレザーの胸につけているバッジのデザインが全く違うので食堂などに行っても即バれる。)、クラスメイトが頭の良い人ばかりでそれ故に捻くれた者も多い(完全に後半部分はおまいうだが。)、勉強合宿という糞みたいな合宿がある。などなど挙げ続けたらきりがない。詳しくは後々述べるだろう。
 
 ハードに次ぐハード。私は進学クラスというものを甘く見ていたことを入学してから最初の1、2か月で思い知った。自分のせいで、友達ができないことも相まって内心は早く学校やめてえ、行きたくねえという感じである。結局、ばれたときの母からの制裁が怖いので遂行できなかったのだが、電車に乗らず学校に行ったふりをして本屋にでも行って時間をつぶそうと思った日もあった。
そんな時期のことである。とあるイベントが高校で催された。
 遠足だ。高校生にもなって遠足とは何ぞやという感じではあるが、これはクラスメイトと仲良くなれるチャンスだ、と私はそれが行われると知ったとき、ひどく喜んだ。
 遠足の場所は何と私の地元。そして、そこにある神社仏閣を決められた順番で4人1班で巡り、その各々に駐在している先生からスタンプをもらっていくという小学校の修学旅行でありがちなスタンプラリーが行われた。というわけで、土地勘のある私は重宝されると思いきや…
 1つ目のスタンプを先生に押してもらった後、商店街を一緒にうろついていたら、いつの間にか同じ班の人に置いてかれて、ぼっちになったという…
 そのため、連絡先を知らない私は仕方なく次のスタンプ地点に先回りした。
 ここの裏で起きたことは後に友達になってくださった方の写真や発言で知ったのだが、班の皆は私が居なくなった後、他の班と合流して普通に地元の商店街でアイスを食べたりして楽しんでいたみたい。マジか。けれど、挙動不審でまともに話ができないキモイ奴がいなくなっても普通の人はまあ、気にしないか。(ちなみに、後に行われた体育祭の打ち上げでは私だけ連絡なしで省かれます。)

 そんな楽しげな一行とは違い、その頃の私は神社の狛犬の下で1人泣きながら弁当を食べていた。班の中で1人も友達がいないがために連絡を取れない自分の愚かさに対する絶望や、また、待っている間にとある出来事があったことも関係している。
 
 私が1人班の方たちを神社の鳥居の横でまだかまだかと待っていると、そこに同じクラスで別の班のメンバーが現れた。その班は全員男子で、皆がイケメン。さらに社交的で同じ学校の進学クラス以外のクラスの方々を卑下する(常日頃ボロクソ言っていた。)ほど自信にあふれていた。
(後に私は、大学のサークルでその内の1人と知り合いの方と仲良くなったが、その者は受験直前に彼女とイチャイチャしすぎて、受験に失敗し私の通っていた高校に入らざるを得なくなった。という恐ろしい事実を教えてくれた。)

 私のような不細工で人間不信な愚かな人間とは全くの正反対な者である。
 そのためか、私が班員とはぐれたのをおもしろがっていじってきた。具体的に言えば、班の内2人が嘲笑を浮かべ、子供をあやすような口調で私に話しかけてきた。それも何回も。私はそれが嫌で近くにあったトイレの個室に逃げ込んでしまった。

 しばらくたって、もう頃合いだろと思い個室から出て元の場所に戻ると、彼らはまだそこにいた。さらに、私の今でいうとマジレスに当たるのだろうか、そういった行動がおもしろくなかったようで、彼らの内1人が「お前なんかと誰が話すか。」と怒った様子で述べ、皆を引き連れ立ち去っていた。

 まあ、そんななんだかんだがあって、お弁当を泣きながら食っていたというわけである。その後、無事班の皆とは再会できたのだが、先の一件があり、ひどくもやもやした気持ちを引きずったまま、後のスタンプラリーを回ることとなり、結局それを遠足の最後まで持ち越すことになってしまって…
 遠足は私の期待とは裏腹なものになってしまった。
 心機一転、高校デビューして自分の性格を変えさえすればこうはならなかったのに…
 実に情けない話である。