高校生編(4)嫌がらせ

 遠足の一件があって以降、私はますますクラスメイトに関わるのが怖くなった。仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。たたでさえ、昔いじめられた経験から人間不信であるのに、私みたいな人間とは誰も関わりたくないという旨の言葉をクラスの内の1人に直接言われたのだから。
 ことさら、私を悩ませたのはその発言をしたN君が、進学クラスの中でも群を抜いて頭の良い人間。それでいて、さらにリーダー性も持ち得ており、わずか1,2か月でクラスの中心的存在になっていたことだ。

 つまりは、だ。私と比べて彼は最早、月とスッポンというレベルでは収まりきらない、例えるなら、『蜘蛛の糸』のカンダタと仏様程だろうか。それほどまでクラスでの地位において差が開いているというわけである。ということは、彼がもしいじめを行ったら、私は歯向かうことなどできようもない。そう、私は思ってしまったわけだ。

その怯えにはちゃんとした理由があった。おまいうという感じなのだが、N君は、頭は良いが性格に少し難があったからだ。自分に正直と言ったら良いのだろうか。自分が気に入らない相手と接したり、そういった者に関しての話題が出たり、などした場合、彼はもし相手が聞いていて相手が傷つく恐れがあることなど顧みず、自分が相手に対して思ったこと(主に悪口)を嫌味っぽくぼかさず直接的に言うことが多かった。後、思っていることがすぐに顔に現れる面もあった。そういう性格だった。

私の怖れていたことが現実になった。N君は入学したての頃は私のことを気にもしていなかったのだが、遠足事件で私が彼のグループから逃げたことが心底気に入らなかったらしい。私も彼の気に入らない人間の内の1人に含まれ、事件以降、私に対して悪口や嫌がらせをするようになり始めた。勿論匂いのことも言われた。

しかし、N君の嫌がらせは中学の頃のH君のいじめと比べたら、遥かにましだった。具体的に述べると、

まず、授業中わざと私の椅子の下まで足を伸ばし、私の足が当たると椅子を後ろから足で押し蹴った。勿論、先生が黒板に目をやっている時などに綿密にばれないように、だ。

(進学クラスは総勢40人程で2クラスに分かれていて、そのため、1クラス約20名しかいないので、席替えがほぼ無かった。私の後ろの席は出席番号順でN君の席だったのだが、結局、夏期講習(夏休みの代わりに受ける授業)が終わるまでN君のポジションは私の席の後ろの席だった。)

次に、体育の時間の時、私は運動神経が悪いのは中学生編の時述べたが、彼はそれにも腹が立ったみたく私としては精いっぱい頑張っているつもりだったのだが、バスケやサッカーなどで彼と同じチームの時はわざと手を抜いて自分のチームを負けさせようとしているという言いがかりを付けられた。
野球の時は同じチームであったら、ツーアウトの時私がラウンドに立ったら、わざわざ皆に「どうせ当たらない」とわざわざ大きな声で呼びかけて、ミットを持たせすぐに守備に移れるように準備していた。

さらに、2つの進学クラスが合同で受ける授業があり、それは普段とは別の教室で行われた。この教室が問題だった。進学クラス合わせても40人程しかいないのだが、それでも窮屈なほど狭い教室だった。ここでも、出席番号順で並ぶので結局N君は私の後ろの席である。逃れることは出来ない。
案の定嫌がらせをしてきた。ただでさえ狭いのに授業前、わざわざ机を前の方にだけ詰め(つまりは私の席の方だが)、自分の席はゆったりと座れるよう余裕めに開けた。一方私の席は入る時も出る時も、机と椅子の間が通れないので、椅子に一回乗り、またぐようにせねば出られない状況となった。出るとき、椅子を少し引く必要があるので、最悪なことにN君の席にぶつかることもあった。その場合はひどく怒られ謝るように言われた。いや、あんたのせいやないかと私がこういったとき心の中で思ったのは言うまでもない。本当に理不尽にも程がある。
酷い時は授業中にさらに前の方に机で侵略してきて、お腹に机が食い込んで痛いわ、N君がどくまで出られないわで授業もまともに受けられなかった日もあった。
 
最後に、体育の授業終わりに教室に向かう時やトイレの洗面所の列など日常のあらゆる場面において私が彼の行く方向に歩いたり立っていたりすると、「邪魔」と言われるようにもなった。真ん前ならともかく、斜め前でもだ。
 
 他のクラスメイトは私がN君に嫌がらせをされていることに対して見て見ぬふりだった。N君は私以外のクラスメイトに対しては直接的な嫌がらせを一切していなかったし、何より嫌がらせを受けている私は言葉をあまり発さないし、挙動不審だし、嫌がらせを受けても一切反抗しないし、友達も当時全くおらず、とことんいじめやすい存在だったのがその理由として大きいだろう。世で言ういじめられっ子悪い理論というやつである。(私はいじめっ子にも非があると思う)