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Bad Smell
勉強合宿

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高校生編(8) 勉強合宿

 ようやく友達もできて、毎日が楽しくなってきた私だったが、依然としてクラスでは浮いていた。
 友達と以外話せなかったからだ。
 そう、中学校の時と同じあの現象だ。
 N君からの嫌がらせを見て見ぬふりをする、もしくは加勢するクラスメイト(一部の男子だけだが)に不信感を抱いていた私は、彼らに話しかけられたとき声を出そうと思っても声が出なかったというわけだ。
 
 このことに関しては象徴的なエピソードがある。
ある日、体育の授業で、本当はそんなことないのに、わざと手を抜いていたと激昂したN君に謝罪を求められることがあったのだが、その時も私は声が出なかった。
当然、N君は怒り、
「シカトかよ。おい!翻訳者呼んでこい!!」
と、進学クラスの誰かに頼み、A君やK君を呼びに行かせた。
その時のN君の気持ちは今となっては分かるのだが、当時の私は彼のその発言にひどく傷ついたことを覚えている。私は話したいのに、声が出ないだけなのに…、そう心の中で何度も叫んでいた。

まあ、そんな、楽しくも鬱々もした日々が過ぎていき、季節は夏になった。

我ら進学クラスでは、夏合宿が行われた。合宿と言っても、学校内に建てられた宿泊施設に1日泊るだけだが。
普通の合宿ならただ楽しいだけだったのだろうが、さすが進学クラスである。簡単に言ってしまえば勉強合宿であった。
いつも通り18時まで学校があり、そのまま、夕飯を食べ気づけば、19時。そして、それから、教頭先生の話を聞き、古文や英語や数学の課題を宿泊施設内にある小教室で行った。
 英語や数学は先生も一緒に宿泊施設にいらっしゃるので、分からなければすぐに聞けるため助かったのだが、古文の課題はというと、聞くとかそういう問題じゃなく、古語の用言活用形を全部覚えるというものだった。それは当日になって突然発表されたこともあって、はっきり言って、風呂に入る時間や消灯時間を考えてもまともな課題では無かった。だが、覚えなければあるペナルティが待っているので、私も含め皆一生懸命覚えた。

 そして、魔の朝がやってくる。
 朝6時に起こされた私たちは古文マラソンを行うことになった。
 説明しよう。古文マラソンとは、古文の用言活用表の一部を切り取ったプリントをランダムで渡され(何活用かは勿論消されている)、完璧にその活用表を埋められるまで(1つのミスも許されない)校舎を回り続けなければならないというものだ。
 このマラソンは非常に運ゲーである。なぜなら、古文の用言活用表といえば、難易度に大きく差があるからだ。例えば四段活用の語なら、たったの6字しか覚えなくて良いのだが、シク活用の語だと、11語も覚えないといけない。
 私はというと後者のように難しいものしか出ず、凡ミスを繰り返し、結局何度も何度も校舎の周りを走り回った。(ちなみに、走らないと先生に怒られるのでのんびり歩くこともできない。)
 私以外にもそういった者は数名おり、皆朝が早いこともあって汗びっしょりかつくたくたで、さすがに、先生もまずいと思ったのか、今回はこれまでと途中で止められた。

 その後には、さすがに6時間目までであるが、普通に普段通りの授業が行われ下校することになった。

 本当なんだったんだろうこの合宿。だって、課題に追われて、お喋りする時間もはっきり言って夕食時や朝食時以外無いし、オリエンテーションも全く無かったし。
 古文の活用形を体に染み込ませて覚えるための合宿だったのかな。

       

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