用法用量を、守って正しいストーキングを




『用法用量を、守って正しいストーキングを』



つづきもの、来ました。最新分だけ読んでも、正直わけわからんでしょう。なんとなーく、、、女性的なにおいがする気もする。いま文面をなんとーく撫でているところ。「●」がほくろみたいに目立ってる。さて、やってみるか(煙草吸ってから)。

いきなりボストンバッグがサナギに例えられてます。しかも羽化したくて出来ない。もがいてる。はぁ、なんだか第一印象(ほんとに文面を目で舐めただけ)よりも文学的な匂いがしてきますね。

「開く、開く、開く。」か。「その暗闇の先で、誰かの笑い声がした。」か。なかなか良いじゃないですか、なんていうか、現代的に感じます。この作者はわりと現代の作品を読んでいるんじゃないでしょうか。

「甲高い女の声。
 鋏の音。
 悲鳴。
 アンモニア臭。
」~した。とか~だった。じゃない、この、「。」で終わるイメージの連鎖を適切なバランスでくみこんでくる感性、技法、「書きこなれている」感じがする。

あざみって、ヒロインかな?ルナ、っていう人もいるみたい・・・。しかも「ルナの髪」だ。やはり女性的なにおいがする。作者が男性だったとしても、女性を登場させたり、女性的なにおいを出せるのはたいしたもんだなあ。

ルナの髪。あざみは、そんな夢ばっかり毎日みているんだって。

そういえば、「ストーキング」ってタイトルについていたっけ。誰が、誰をストーキングしているんだろう。「ルナ」が「あざみ」をストーキングしているから、ボストンバッグからルナの髪が落ちたことに、あざみは戦慄したのかな?ストーカーの気持ちっていうのは、よくわからない。ストーカーでも戦慄することはあるのかな。

「●」ほくろのようだけど、場面転換をあらわすマークらしい。「潮はクローゼットを乱暴に開いて」結構な隠喩がつづきます。しかも「漁り」だしな。潮干狩りを思い出す。

あら?●以降を書いているのはあざみではないの?「あざみなんて嫌いだ。俺の好意を踏み躙りやがって、愛を裏切りやがって。
 美しい髪を粗末にしやがって。
 」俺って誰だろう。「ルナ」とは別の、誰かが存在するのか。

引用。「もはやここにあるのは汚物だ。他人の使用した紙コップ、生理用品、好きだった映画のパンフレット、爪、くしゃくしゃに丸められ干からびたティッシュ。」どうも、他人のゴミを収集していたストーカーの「俺」のなかで何かが変化してしまったよう。

また「潮」の比ゆ。おや?「潮」というのは人名ではないのか。だとするとだいぶ話が変わってきてしまったな。自宅のドアを開いて、部屋のなかに外の空気と自分の気持ちがはいっていって、それを潮に例えるのは良いものだと思ったんだけど。

「腸にどろりと溶岩のような熱が溜まっている。」それを放出するとしたら、穴は一つしかないように思うけど、そういう下品な話でもないらしい。「潮」=「おれ」であることが明らかになってきた。誤読していた。

潮はどうしてあざみを嫌いになってしまったのか。嫌いというよりも、愛憎。こいつがストーカーなんだろうな。「枝毛」これが比ゆじゃなかったら、相当に神経質なやつだ。あざみに枝毛を見つけただけで号泣するほど嫌いになるなんて。たぶん、なにかの比ゆなんだろう。わからんね。

「思えば遠いところまできたものだ。」僕にはわからないけど、いろいろあったのだろう。通常の時間の流れ以上に、激流が、感情の激動が、人を遠いところに連れ去ることはある。想像もしていなかった地点へと。

潮、あざみ、森、ルナ、何人かの登場人物がいるみたい。「あざみの別れ話」あざみは誰かと付き合っていたみたい。もう一人、「愛美」まで出てきた。この小説はなかなか油断ならない。物語性がぐんぐん高まってきた。

復讐の鬼のような想念(上手な描写)にとらわれる潮に、急に話しかけてくる人物がいる。てっきり、彼は部屋のなかで一人で泣いていたのかと思ったのに。だって、人目に晒せないような、危ないゴミだらけなんでしょう。

「「体調、悪いの?」
 良質な髪がいた。」さすがに「髪」という人名ではあるまい。「潮」はミスリードしてしまったけど、これは比ゆでしょう・・・間違えないよ。じゃあ「彼女」とは誰だろう?

「潮」とは、少なからず「すみにおけない」関係のようだ。すみにおけない?距離感の近い、というか。だって、彼女は、潮の額にさわり、脇からもぐりこみ、からだをささえるのだから。

冒頭のルナの髪の話、あざみの枝毛の話とは別に、また髪の話になる。AA風にいうと「また髪の話してる・・・」

ここで描写される髪は飴細工みたい。いや、飴細工はべたつくから、決してべたつかないふんわりした飴細工かな。染髪してるのか。真っ黒な髪という印象とも違う。それとも、灯りの加減のせいかも。

ここで「()」が入ってくる。引用。「潮は触れてみたいと思った。「(指先で溶けるように流れるんだろうな、きっと)
」印象に印象をかさねるようで、なんていうかスマートな、お洒落な感じがする。

潮は別に狂人ってわけでもない気がする。たいてい、ストーカーなんて孤独なもんだからな。イメージの話だけど。

それに妄執に取り付かれきっていたら、さらさらとした心地よい髪の印象などに気持ちを切り替え切れない気がするし。

「幾分気が楽になったが、それでも体調は最悪だった。
」「この気分の悪さはあざみのせいだ」、と潮は言っていた。それが原因で体調まで悪くなったのか、体調の悪さが気分の悪さとバッティングして、余計に気分が悪くなったのか。

潮と彼女の関係性はわからないままだけど、潮は少なからず、「彼女」を悪くなく思っている。彼女は言う「いいんだよ、潮君の為だもん」甲斐甲斐しい。

ここまで読んで、描写は流れるようにスムーズに行われていると感じる。つくりものらしさ(小説らしさ)はあるにしても、今まで積んできたキャリアと、これから投げない安定感っていうか。

「良質な髪」とはどういうこと?大好き(だけど大嫌い)なあざみの「枝毛」と「彼女」の「良質な髪」との対比は。心変わり?

引用。「「いやだ……お前を、離したく……ないのに……」(中略)潮は気がついていない。
 今、自分が言葉にしたことの意味を。
 言葉にしてしまったことの、意味を。」

あざみから良質な髪の彼女へと、心変わりというよりも、「心移り」が起こるのだろうか。物語ではそんな風に人間関係と、それにまつわる心情が変化していくものだし。

どうやら、潮は相当に朦朧としてたようです。次の日、「良質な髪の彼女」が誰だったのかも、思い当たっていない。「いや、一人思い当たる女はいるが・・・」と考える。潮に相当熱をあげている女。

「自分の部屋によく知らぬ女がいた。」「朝起きたらいろんなものがピカピカに片付いている。」という状況。

なんと、あざみのストーカー(潮)のストーカー(良質な髪の彼女)だったのでしょうか。そういうストーカーの連鎖の話なのでしょうか。作品のタイトルからすると、そんな気がする。

「ローテーブル」この言葉を使ったことは、僕の人生では一度もない。やはり、作者は僕とはぜんぜん違う読書体験をしてきている。

「錠剤の入った瓶と空になったグラスが一つ」良質な髪の彼女は、宣言通りに薬局で薬を買ってきたんでしょう。潮がなんらかの持病をわずらってるわけではなく。

しかし、彼女が部屋から出て、戻ってきて、キッチンをガタゴト片付ける音で目が覚めないとは、潮はどれだけひどい昏睡状態だったのかな?

糸杉あざみ。フルネームが明かされた。「森」というのもいる。すこし植物的すぎるようにも思う。

潮はあざみとルナについて考える。ルナは尻軽女でトラブルメーカーらしい。「ルナのような目に遭わせる」この辺りの事情はよくわからない。

ルナは殺害されたのかな?潮と森は遺体を「回収」したのかな。いや、そうなら「ルナは十分にツケを払った。(中略)ルナはそっとしておこう」という言い方はしなそうだ。あと、なんとなく、森は男性であるように思う。

潮が欲しがる「あざみの資料」とは?良質な髪の彼女が片付けてしまった、潮のストーキングの収集物のなかにまぎれていたのかも。

・・・ここまで読んで、正直ストーリーというのは苦手ですね、どうも。立派に書けているし、見えざる舞台背景、人間関係があることはわかる。

煙草吸って頭を休めよう。潮のように。

朝、潮もだいぶ落ち着いた模様。壮大な復讐劇がはじまる、というわけではなさそう。つかずはなれず。この辺り、やはり現代的に感じる。

瀬賀という新しい名前が出てきた。何人いるんだこの小説。夕日は山間に消えていく。風も冷たくなっていく。潮もおちついていく。瀬賀という人物は、電話口でなぜか動揺している。

潮は思い切り吠える。まだまだ吹っ切れてはいないみたい。それにしても、欄干に両手を付いて吠える、っていうのは、近所迷惑じゃないのかな?どこか田舎の話なのかもしれない。

またほくろ。今度は「愛実」の視点に変わる。どうやら、「良質な髪の彼女」は愛実だったよう。しかもだいぶ(異様に)潮にいれこんでいる。燃やされているのは、潮が収集したあざみの私物だろう。

「お前を離したくない」という言葉。愛実は、潮が愛実に言った言葉だと考える。「子宮がもだえた」男性作家がこういうふうにいうことはあるかな。「彼の傍でしてしまった。」マスターベーションだろうね。

結婚の際に唱えられる常套句。愛実の想い。燃やされるあざみの私物。以上の三つが三重奏になって文章が進む。うまいもんだ。挿入されるパチパチ、という効果音。煙が目にしみる(たぶん二重の意味で)涙もでてくる。

それから、たぶん、潮と愛実とのやり取りが『』の連続で語られる。潮、だよね?愛実、だよね?このやり取りは。

潮は偏執的な性格みたい。愛実は盲目的な性格みたい。それから、愛実は潮を「せんせい」と呼んでいるみたいだ。とりあえず、あざみと、潮と、愛実の三角関係、ゆがんだ三角関係が語られ、この回は終わる。

「ねえ、潮君……せんせいにとって、私は愛ですか?」
という愛実の問いに対しての、最後の「潮の記念品の中に、愛美はいなかった。」のしめくくりもきれい。



『作品感想』



現代的な小説読まない僕には新鮮でした。これくらい書けるなら、プロになれないもんなの?それともプロを目指してるのかね。上手。僕くらいの人間には分からないけどね。プロとこれくらい書ける人のちがい。