あなたは炎、切札は不燃
第3ドロー、考察
リコーズは張り詰めていた息をふぅーっと吐き出した。首元を緩め汗をかいた首筋を拭う。
「いやはや、俺はギャンブルは素人なんだが……ビックリするような展開ってやつじゃないか、これは?」
「たしかにな」とバラストグールの男がミルクを一口すすった。
「普通ならありえない」
「そもそもルールすら俺はあやふやなんだが……あんたわかるか? どうしてリザイングルナは、カード破棄をせずに追加ドローできたんだ?」
「そこからか? まァいいけどよ……このボディ・ポーカーには、最初に切札を決める。オープンした時に手札にその切札があれば、ドローカウントが貯まり、次戦以降で使えるわけだ。今回は変則的な『ショーダウンしてから追加ドローして手札を変更していく』っていう展開だから、わかりにくいが、追加ドローして増えた札が切札なら場に出た時点でドローカウントが増える。それはもう『ショーダウンされた』札だからだ」
「……? よくわからん」
「おまえ考えないで言ってるだろ。……つまり、ここからドローカウントを増やすにはもう場に出ている手札を欠損させて捨てるか、手札の切札カウントで貯めていくしかない。リザナがこの状況で手を狭めることなく追加ドローするには、もうオープンしてる手札からのカウントを使うしかない。そしてリザナの手札で三枚以上開かれているのは」
「頭部だけ、か」
「だから宣言したんだ。隠す必要もない。自分の切札は頭部だと」
「待てよ。だったらなんでリザナはここでその追加ドローをしたんだ? べつに後で引いたっていいんじゃないのか?」
「後って?」
「まだお互いのドローが終わったわけじゃない。全部引き終わってから、まとめてドローするなり破棄するなり処理した方がミスがないんじゃないか?」
バラストグールは考えるというよりも、言い方を選んだような一息の沈黙のあとに答えた。それはどこか寂しそうでもあった。
「あんたは正しい。理屈で言えばそうだ。でも、いいんだよ、これで」
やれやれ、これだから賭博師ってやつは……
リコーズは首を振って、またテレビの画面に視線を戻した。
【現在】
リザナ、ドローカウント1(6消費済)
慶、ドローカウント3(4回戦まで破棄したカウントの余り:初期値)