顔を近づけて優しく弟に語りかける百鬼丸。死の直前、閉じられていた多宝丸の右目が開きます。明言されていないので筆者の推測になりますが、妖怪を倒して体を取り戻していく百鬼丸と自らの死によって生まれつき開かなかった右目を取り戻した多宝丸の対比として描かれている儚いワンカットです。
その後、妖狐の本体を倒し、勝利報酬として鼻を手に入れる百鬼丸。世界中の匂いが全部鼻に入ってくるような全能感を堪能した後、ふたつの藩を隔てるようにして反り立っていたばんもんを圧し崩し、両方の町に平和が訪れます。
●まとめに
体の一部を取り戻してもどろろと百鬼丸の旅は続き、息子が殺された事を知った醍醐景光はこの一件に激高して藩を挙げて包囲網を敷いて、『兄弟殺し』をした百鬼丸は見ていて気の毒なほど精神的に落ち込んでいきます。
容赦なく、ほぼ無秩序に大量の人々が人が殺され身内さえも手に掛けてしまう『ばんもんの巻』という一切の救済が無いこのお話。普段見かける手塚氏のコミカルで親しみのある絵柄がこの殺人描写の多い『どろろ』では更に淡々とした恐怖感を読者に植えつけて心を蝕んでいきます。
戦国の世において米ひとつ分より軽い平民の命。鬱蒼とした世界を垣間見た体験により、今自分が生きていられる事のありがたみを得た気がします。
『どろろ』総評価
おススメ度
★★☆☆☆
欝度
★★★★★
読みやすさ
★★★★★
今回も長くなってしまいすいませんでした。
今回はこの辺りで失礼します。