Neetel Inside 文芸新都
表紙

第十三登録所物語
働くカカシさんのお話

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カカシ達は不適な笑みを浮かべながら、
ミシュガルドの大地を開拓し始めた。
牧歌的な風景にただ、人の声が、
家畜のこえが無い、木々がこすれ合うような、
不気味な音がこだまする。
開墾、開拓、
ミシュガルドの大地に突如として、
農場が、農園が広がった。

イワニカは不安だった、
伝承に訊く、
ツォンタールが夜な夜な、
農場に訪れているのではないかと、
ツォンタールが乳を垂らして、黒い霧とともに。
ただただ、イワニカは不安だった。
大事な作物が荒らされないかと。

シノノメ ウタイは「大丈夫だよ」と、
指を振るうと鬼火で辺りを照らしてみせた。
農場は明るくなりやがて漆黒の闇の中に、
ツォンタールがいないことを、
黒い霧が農地を襲っていないことを、
イワニカに知らせた。
「そうね」

ルピート・スタッグは、
一面に広がった農地を見て、
人類の存在を強く受け取った。
だが、甲皇国の存在を伺わせるものはない、
ミシュガルドの荒野に忽然と現れた農地に、
ただ人間の技術進攻の速さを伺い知った。
たまたま見かけた斧を振るうカカシ等が、
老木を切り倒そうとした所を叩きのめしたが、
このカカシについたマークは、
「スーパーハローワーク」
果たしていかにしたものか?
大農場に対しエルカイダはどう対処するのか?

タラ・コッド=へリング・ド=レイクこと彼女、
タラちゃん、飲料水の補給地探索がてらに
ミシュガルドの川を偵察してる所、
切り出された丸太が、
イカダとなって流れるのを目撃した。
「あっスーパーハローワークの!」
イカダを漕いでいるのはカカシである。
順調に開拓は進んでいるようだ、
しかしあまりにもペースが速い、
「カカシは夜も昼も関係なく働いてるなあ」
人間とカカシの根本的な違いはそこに在る、
雨が降ろうが、風が吹こうがそこにいる。
「アンモナイトにかえろっと」
潜水私掠船「アンモナイト」を近くに、
停めたままここまで泳いできたのであるから、
彼女は船長といっても気ままなものである。

アレンはカカシがつれないのを見て、
カカシにものがついているか仕様突いていたが、
出てくるのは稲わらのようなものと棒、
棒と言っても性器ではなくただの棒、
「つまんないね」
人間はどうして働くだけのでくの坊を、
作ってみせるのか? 人間に反抗を示す為に、
妨害がてら破壊してしまったカカシの数は、
十体は数えたが、それでもなおカカシが辺りに、
居るのを見てついにその気を無くしてしまった。
戦意そのものが無いカカシ達に、
エルカイダの教えなどが通用するものでもない。
「あーあ、もっと面白いとおもったのに」
このカカシは一体誰が動かしているのか?
などと想いを馳せる前に飽きてしまった。

リーフはドリュアスが、
危険にさらされているのを、
目の当たりにした、斧を振るう恐ろしい、
カカシの化け物がところ構わず樹木をなぎ倒すのだ、
「せっかくドリュアスが地に足つけて休んでたのに!」
ふわっとドリュアスは浮かぶと、
「リーフ! しっかりつかまっておれよ!」
2人は、
ところ構わず開拓してまわる
カカシに迷惑していたが、
様子を眺めていると?
「アレ、あいつが鋤で掘り起こしてるあれって!」
カカシにとっては荒れ野を開拓しているだけ、
だが出てきた鉱石は確実にリーフの眼を輝かせる、
だけのものだった。
「あとで回収しよう、な? リーフ」
「うん!!」

「なんだこいつらは」
六録緑(ろくろくろく)は雑木林で鎌や、
のこぎりを振るう、カカシの群れに出会った。
「殺る気、というのか?」
刀を構えるも、カカシは一向にお構いなく、
ただひたすら辺りを切り開いていっている。
「ろくじいじゃ」
「なんだちょっと」
「どうやらこやつらは術者があやつる
 人形のようなもののじゃの
 もともとこちらを相手にしておらん」
「なにを相手にしている?」
「わからん、
 しいていうなら
 ミシュガルドそのものかのう」
「・・・・・・わからん」
刀を鞘におさめると、
通り過ぎていったカカシの一隊を見送った。

「いらっしゃいませ~ご主人様」
「あらおひとり」
「ふむ」
「最近へんなお客が多くって」
アリシア・スノウはメイド喫茶で目撃した事を、
メイド喫茶「もえ☆VIP」に訪れた、
ガイバル・ギルデリックに話し始めた。
「あれよ、カカシ連れ、
 なんでもミシュガルドを開拓するって
 いうんだけれど」
「カカシ、じゃと?」
「どうみても出来てるのよね、カカシと
 カップルでの来店は別に構わないけど
 なんだか拍子抜けしちゃう」
「ふむ、なんだか分からぬが、
 ここは侍女を紹介してくれる店だと、
 聴いてきたのだが」
「あら?御指名かしら」
「我が家もだいぶ散らかってきておってな、
 一人、派遣してほしいと思っておってな」
「・・・・・・」
「どうじゃな?」
どうとは、どうなのだろうか?

「おらおらしっかり働けぇ!!」
アルマ・フラッシュポイントはカカシと組手を、
していたが、そのドワーフ式格闘術を前に、
もともと、農耕用のカカシは容易くへし折れた。
「なんだ?こうやって使うものではないのか?」
農地を耕す働くカカシ、
スーパーハローワークがやっとの想いで作り上げ、
各国にリリースした働くカカシさんである。
「つまらん、土いじりしか出来ぬ役立たずか」
「他にも使い道があるんですよ」
イワニカは説得してまわるので精一杯だが、
「なに? 工兵、橋を作ることもできるのか」
「はい、農場に必要な建築物は一式つくれます」
「――――――ではさっそくだが」
戦場に橋でも掛けるつもりだろうか?
カカシもまさか戦闘地域に派遣されることに、
なるとは露とも思うまい。
「・・・」

「キシャ―!!!!!!!」
闇に墜ちたダニィの、
クワァンタム・オブ・ソラス~
アナザー・ウェイ・トゥ・ダイが炸裂した。
目の前に数多に生まれくるカカシに、
「木偶がぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
何を発端にかはわからないが、
ただの農業用の働くカカシだったものものが、
唐突に強くなっていた。
精霊樹に反応したカカシは、意志を持ちはじめ、
自らに防壁を施したすごいカカシさんに、
なってしまったのだ。
「砕けろぉぉおおぉぉぉぉ!!!!」
精霊樹で出来たカカシさんは、そうやすやすとは、
くだけない、ちぎれない、無双されない、
そして、その意志は、『農業で人間を幸せに』
「だまれぇぇ!!!!」
唐突に降ってわいたすごいカカシさんを前に、
ダニィの
クワァンタム・オブ・ソラス~
アナザー・ウェイ・トゥ・ダイの、
ラッシュは留まることなく繰り出される。
農家はあっけにとられていた、が、
「もやしちゃえばいいんじゃね?」
ものの価値の分からない農家は、
そういって精霊樹に火を放つと、
「貴様ァ!!」
ダニィの怒りの矛先は農家へと向かう!
「ひっ」
すんでのところを燃えてるすごいカカシさんが、
庇ってくれた、
「か、カカシー!!!
 この恩は必ず返すからなあ!!」
逃げる農家、はたして逃げ切れるのか?
・・・・・・なんだこれ?

熊勝春樹は、カカシと人間の恋物語を執筆し、
やがてベストセラー作品となり、
カカシ愛の尊さをミシュガルド中に轟かせた。
うん、悪くない。

竜人のようなそうじゃないような、
そんなティアラをしたトワイライトは、
竜の翼で空を飛びながら、
突然、森の合間に開けた麦畑に遭遇した。
「うわあ、綺麗です」
カカシ達が切り開いた農作地の一つであるが、
どうやら秘密裏に作られた隠れ里のような、
畑らしい。
「カカシさんカカシさん、イココを知りませんか」
カカシは問われると、遥か空の向こうを指差して、
「ありがとう!カカシさん!それではまた!」
トワイライトは去っていく、
麦畑にカカシだけが残った。

甲皇国皇帝クノッヘンの四男、
アイザックス・クノッヘンは、
文鳥を愛でていることで有名だ。
「カカシ?」
「はい、アイザックスさま、
 気に入られるかと思って」
「下らん」
スーパーハローワークが押し出した、
大量のカカシは時に愛玩用に、
主人に飼われることもあるものの、
お気に召さなかったようだ。が、
「ディティールが気に食わん、
 女に近づけようという意志が感じられん」
人一倍、こだわりの強いアイザックスは、
カカシを一度バラバラに解体して、
そしてまた元に戻そうとして見た。
「どれ・・・・・・」
そしてカカシの手足にあたる手袋と靴の部分に、
女の足と手を取りつけてみると、
「動くではないか」
不思議な霊力を持っているのか、
手の剥製や足の剥製、
果ては女の胴体の剥製などを組み込んでみても、
棒でつながれたカカシの体として動くのである。
「まるで生きているようだ、ははは」
この秘密はアイザックスのような趣味者で、
なければ当然知ることのないものである。
翌日、不気味に生々しいカカシを、
アイザックス・クノッヘンが飼いならしているの、
を見かけたものがいるが、
それが本当かどうかは、
あなたの眼で確かめるほかないだろう。

甲皇国皇帝クノッヘンの次男、
タンホイザーは、
カカシを相手に会話の練習をしていた。
「―――ソレデナ」
まだ馴染まない人工声帯を使って、
たどたどしくも、確実に会話をしていた。
このカカシは息子のミゲルに、
プレゼントされたものだ。
そのせいもあってか不思議と、
皇帝の重々しい空気も、
ここでは喉に影響しないようにも感じた。
ほんのひと時の気の紛らわしに過ぎないが。

アルフヘイムの竜人族の娘、エドワード
(本名はエリュシオンことエリス)
はイココを探していた。
「姫―!!」
カカシを通り過ぎる時に訊ねた、
「姫はどこに?」
カカシはだまって空を指差すと、
「そっちか、姫―!!」
エドワードは再び飛んで行った、
その後、イココと再会したのは、
またのちのおはなしである。

マギニアは竜の翼であおぎながら、
アツくなってきた地方を飛び回っていた。
(ミシュガルドもどこも空に違いは無いのね)
特段いうことも無く、と空から眺めてみると、
一頭、切り開かれた平原が目に留まった、
立ち尽くすのはカカシのみの畑である。
(害鳥と間違わられて撃たれるのは勘弁ね)
と、よく見ると、カカシは動いている。
(・・・・・・!)
思わず、空から急降下して、確かめるが、
いそいそと農作業にいそしむカカシの姿を、
確かに確認した、
(・・・・・・)
そっと指先で突いてみると、
反応は無い、ただただ、作業を続けるのみである。
誰が、何の為に使っているにせよ、
これには混血の竜人マギニアも驚かされた。
よくみてみると、
複数のカカシが共同作業もお手の物であり、
ここの平原をゆうに農作地に変えてしまうのも、
時間の問題のように思えた。
(・・・・・・)
マギニアは平原に吹く風に、
翼をはためかせながら、
竜の尾っぽを足に巻きつけて、
さびしそうに、彼らを眺めていた。

「なんだこいつらは!?」
ドラコ・ブレッドという竜人は、
寒そうな格好ながら、一頭高い岩肌から、
その視力を生かして見てとった、
カカシが、まさに地上のカカシ達が、
岩肌づたいに谷を移動して、
新天地を目指して旅をしている。
「変わった奴らだな、どこ人だ?
空を飛びながら訪ねるものの答えるものは居ない、
「つれないな、ちったあ話したらどうだ?」
ただカカシの一体がアシを滑らして、
谷間に落ちかかっているのを、
「おっとあぶないあぶない」
助けてやったりして、彼らが目指すところまで、
ついて行くことにした。
「そっちにいきゃあ、人がいるところに、
 出られるんだな、よっしゃついていってやるよ」
彼らが行く先は、未開地であることを、
ドラコ・ブレッドは知らない。

「それ、本当ですか?」
ウミトカゲ・レビは料理を配膳する手を止めて、
タラのほうをみつめた。
「ええ、本当、だいぶ山奥のほうにも
 スーパーハローワークのカカシが
 働きに行ってるらしいの」
タラ・コッド=へリング・ド=レイクは、
レビから食事を引き取ると、
いそいそと食事をかきこみはじめた。
「あのカカシさんは何も食べずに働いて、
 しあわせなんでしょうかね?」
「カカシの心配? レビはやさしいのね」
「いえ、だってあれだけ働いてるのだから、
 何か、食べないとつじつまが、
 合わないじゃないですか」
「そうかしらね、そうかもしれないわ」
少し考えてみればよく分かることである。
機械を動かすのに燃料や電気が必要なように、
船を動かすにもその動力は様々工夫して、
出てきているはず。
果たして、カカシのメカニズムとはいかに?

アイギュリー・ディロゴールは
己の魔素に干渉する、
目障りな障害物を破壊していた。
「消えろ!」
千年経って変わったことの一つがあった、
千年で人類は農奴から解放される運命にあったこと、
そして、それがいわいる新たなる問題の、
始まりとなったことである。
「こいつらは、許してはおけねえ」
カカシさんは無残な姿に成り果てて消え去った。
幾体も、幾体も、
「誰がこんなところに木偶よこしやがった?」
千年生きた竜であるアイギュリー・ディロゴール
竜と言っても人型の竜であることはさておいて、
「この木偶の数、
 大層な術者が居やがるようだが、
 何が目的だ、一体?」
術者はただ遠方から、
アイギュリー・ディゴロールの存在を感じた。
「――――――来たか」
術者は何者なのか?
その続きを教えてくれるのは、
他でもないこれを読んでいる、
あなたなのかもしれない。

しまった!
カカシさんの一隊が、
暗黒海岸に差し掛かってしまった!
カカシさんは開拓するのに忙しく、
場所を選ぶことはしなかった、
当然、脅威の存在達に出会うことになった。
暗黒海岸の脅威エッグキーパー!!!!!!
が、カカシさん達は目もくれず、
上を歩いたりして通っていった。
暗黒海岸の脅威!スライム!!!!!
が、カカシさんは発狂する心が無かったので、
ただ踏んで歩いて行った。
だが次に現れた、
暗黒海岸の脅威!!フェラァアルフロッグに、
なぐさみものにされてしまったカカシさんは、
幾体か居たが、それも少しの数だったので、
あまり問題なく進行していった。
やがて、暗黒海岸の脅威!
マンドラゴキノコがカカシさん達に生え始めても、
開拓するための足は止めなかった。
ただひたすら歩きつづけていた。
『農業で人間を幸せに』
ただその言葉によって動く人形であった。
その様をみたワァカァは、
この動く人形に一本の矢を弓ひいた。
「キキキキキキャキャキャ」
やっとカカシさんは歩くのをやめた、
それはもうカカシさんという名の形をしていない、
謎の生物に成り果てたものであったが。

「このクエールというのが、
 亜人種たちの命をつなぐ、
 ものとなっているのね」
頭をプルプルさせた生き物クエールは、
非常食として亜人種に用いられている。
がもちろん、それだけで生きるに非ず。
「わたしイワニカは、
 ミシュガルドの大地に適切な品種改良をした、
 穀物を定着させて、やがては、
 一大穀倉地帯を作るつもりよ」
カカシ達の群れを連れて、
こう宣言した女農場主は、
クエールの頭を摘み取ると、
口に含んだ。
「これがミシュガルドの土地の味か」
原産地はアルフヘイムであるとはいえ、
今や、ミシュガルドの栄養を吸って生きている。
「クエールのように環境に強い品種は、
 穀物改良のヒントになるかもしれないわね」
ただ、大穀倉地帯の開発に胸を躍らせて、
数多くのサンプルを求めて、
彼女のミシュガルド開拓は始まったばかりだ。

「君も、この大地に連れてこられたんだね」
ルキウス・サンティは、船倉一杯に、
詰め込まれて連れてこられたカカシたちのことを、
知って、苦労をねぎらうようにそう言った。
「僕もこっちに来てしまった、どうしようか、
 これから決めかねてるんだ」
カカシはそっとうなずくと、
差し出されたルキウスの手につかまって、
立ち上がった。
「ようこそミシュガルドへ」
カカシはこの大地がミシュガルドという、
異界であることを始めて知った。
ルキウスと意志を持つカカシの、
奇妙な友情関係がはじまった。

「おうちかえりたいよぉぉぉおおお!!」
デイジー・キタックは大交易所支店
に詰め寄せた、報告書の山を片付けるので、
定時に帰れそうにもない。
それもそのはず、昼夜問わず働く、
カカシさん達が上げた成果は機械並であり、
さまざまな土地で突発的に開拓が始まった故に、
その物量と作業の幅に大交易所支店にも、
対応しきれない量のフィードバックがあったのだ。
「ひぃぃぃぃぃぃぃん!!!!!!」

甲皇国からミシュガルドに就任した、
下級士官、
リーザーベル・ヒノエ・シャーデンフロイデは、
唐突に起きた農業改革にいら立っていた。
無理もない、農業を礎を担っていたのは、
もとより甲皇国の機械産業であったはず、
それが今は小作農が働くカカシさんを使って、
簡単に土地の開墾を始めてしまう始末なのだ。
「ええい、わずらわしい!!」
上下関係というものがある、
機械は人間の上位互換であるし、
何よりも機械化された甲皇国にこそ、
文明の覇者たる資格があるはずである、なのに、
「あれの仕組みを調べるぞ!
 仕組んだ奴も同時にな!」

甲皇国の上級士官、
ヘルグ・リュッツェンも同様であった、
「ここミシュガルドは帝国の前線といっても、
 過言ではない土地、ということは」
ミシュガルド開拓に後れを取ることは、
帝国の存亡にかかわる一大事である。
「――――――しかし」
甲皇国のミシュガルド進出は遅れていた、
もともと未開地で使うように出来ていない、
農工機械の類では、大規模農地を確保するのも、
未開地の飛び地のように広がる耕作地を前に、
成果が芳しくなかったからである。
「スーパーハローワークと
 手を組むか、それとも?」
エコロジーの観点からいって技術的に、
遅れを取っている甲皇国の機械技術では、
大気汚染や水源汚染も同時に引き起こしてしまう、
ここは譲歩して、カカシのメカニズムを、
甲皇国の科学班に解明させるより他ない。
「この先が肝要だ、どうなることか?」

ホルガー・ヒノエ・イッソスは、
甲皇国からホロウィズにつき従ってやってきたが、
当初から難航していたミシュガルド開拓に、
軍がかりだされる始末に頭を悩まされていた。
「皇国一市民が為に兵を使うなどと」
だが、いまだミシュガルド開拓において、
穀倉地の要となる拠点を多く手に入れてない現状、
兵に安定供給する食糧を得ないことには、
「――――――計画さえままならないか!」
甲皇国からミシュガルドについてから、
苦労続きである。
広大な大地に潜むモンスターを前に、
開拓を行う民はおびえ、
冒険者の報告を頼りにしても、
連絡が途中で果てる始末である。
「果ては連中があのような木偶を、おのれ」

リーザーベル、ヘルグ、ホルガ―は利害の一致から、
今件の連絡を取り合い、
スーパーハローワークの動向を探る。

アンドロギュノスは、カカシを見た。
カカシには雌型と雄型が用意されていた、
そのことがアンドロギュノスは不快極まり、
無かったが、
彼を崇める信者たちにとっては、
性の存在しないアンドロギュノスと同じく、
カカシゴーレムは完璧な存在に映っていた。
「ふん」
アンドロギュノスはカカシの性差を産んでいる、
装束とかつらを取り去ると
「おおっ」信者たちは驚嘆の声をあげた。
「見よ、性差など無くとも動いておる
 これこそ性を超越せよと
 そちらに強く説いてきた証拠だ」
カカシのコーディネートにすら、
アンドロギュノス教団の型をはめようとするが、
甲皇国でいち早くカカシの存在に気づき、
これを信徒たちの友としてあてがうことを、
決めた、アンドロギュノスの真贋は確かなものである。
アンドロギュノスはカカシを利用して、
甲皇国でのそして、
ミシュガルドでの名声を高めることに成功した。

「カカシだぁー!!?
 教練用の木偶ではないのか!?」
ルドヴィコ・アクティウムは自らの太刀を振るって、
カカシを一体袈裟切りにしたが、
「連中はなぁにを考えてるのだ!」
「さ、さあ、さっぱりです」
甲王国の精鋭騎兵集団、
『青の部隊』は部隊長、
ルドヴィコ・アクティウムは、支給されたカカシを、
持て余していた。
「士官連中は何を考えて、こんな木偶を!」
今や開拓の伴として、利用価値のあるカカシは、
軍隊での導入も考えられている故に、
「ただ、未開地では騎兵は使えないです」
「なにが言いたい?」
「こいつらが開拓した大地でなら、
 騎兵の活用範囲が広まるという話で」
「なにが所以にこの無能に助けられねばならん
 義理があるというのだ!」
苛立ちは、広まっていた。

「量産型機械兵の使い道は決まっている、
 いつだって敵とたたかうことを目的としている
 だが、今回はミシュガルドという土地そのものが、
 我々の行く手を阻んでいるのだ」
ティモシー・ハルダー曹長は、
ミシュガルドの自然の脅威を前にして、
「だが! このようなカカシに先に行かせる、
 ことを、人類であったなら、兵であったら、
 許しておけるものだろうか!」
「カカシは許してやってほしい、
 すまない、出来心だったんだティモシー」
「アイザックスさま!」
今や、カカシごときが!と言える段階は、
過ぎていた。
「ギンボの無念が浮かばれません!」
ギンボとは、
「甲皇国英雄ガロン・リッタール記念」
装甲擲弾兵士団の一員で、
アルフヘイムの戦役で数々の戦歴を、
上げた武装親衛隊隊員のことである。
魔力タンクとの戦いで死亡したことから、
彼は英雄として祀られているのだ。
「人類の底力を見せたギンボだが、
 今試されているのは人類の寛容だ、
 すでにアンドロギュノスが動いているのは、
 わかっているだろう?」
「は、しかし!」
「もはや止められぬ流れの中にあるのだ、
 ミシュガルドにおいては、
 ああいった小道具が場を席巻する時代に、
 なりつつあるということだ」
「・・・・・・」
※さすがにカカシがそこまで機能はしませんです

「これがスーパーハローワークの主流なのね」
フィオーラはカカシをみやると、とんとんと、
叩いて、丈夫さを確かめた。
「でもこれアルフヘイムの技術?
 それとも甲皇国の技術?
 スーパーハローワークが独自でとは、
 考えられないけれど」
よく働くカカシを作ったはいいが販路拡大に、
困ったスーパーハローワークの大社長らは、
大交易所の基本的な姿勢にのっとって、
アルフヘイム、甲皇国にも貸し付けて、
利益を得ようと考えたのである。
「人間の代替か、エルフの代替も?
 クラウス様はこれを使うおつもりかしら?」
カカシの使い道はどうであれ、
混沌としている雲行きに変わりは無い。
「フィオーラ、また木偶のチェックかい?
 飽きないねえ、愛してるんじゃないの」
「オルガったら!」
オルガ・グゥヅゥもこの騒ぎを訊きつけた一人である。
「あたいとしては、ちょっと痩せっぽち過ぎだね」
「あら、オルガのほうが怪しいわね」
「そんなことより、クラウス様は動いたのかい?」
「わからないわ」
分からないことだらけである。
ミシュガルド開拓の方針はそれぞれであるものの、
大交易所に従うなら、全くの自由であり混沌、
その状態を秩序をもって律していられるのは、
各国が無期限停戦にも近い、
ミシュガルド開拓時代に突入したからであるものの、
「これで開拓のペースが進んだらどうなると思う?」
「どうなるって?」
そう、開拓そのものが足早に終わってしまえば、
あとは土地の奪い合いしかない、
再びの戦乱の日々の幕開けだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二度とアルフヘイムでの戦役は、
引き起こしてはならない、
ただここはミシュガルド、
未来は定かではない。

「チャッ」
レンネル・ジャーヴィッツは銃を構えると、
カカシの胸に風穴があいた。
「効き目無しか」
銃を終うと、すぐに構えて、
続けて三体の頭部を連続で早打ちした。
「頭もダメ、これが戦いだったら?」
カカシに戦意が無いことは分かっているが、
分かっていても、ここはミシュガルド、
いつカカシがモンスター化して襲ってくるか、
まったくの未知数なのだ。
「効き目があるとしたら、そこか!」
素早く膝を打ち抜くと、カカシはもたつき、
這いまわるばかりでうまく動かなくなった。
「ゾンビみたい、うへえ」
腕が衰えないようにと鍛錬を続けてきたものの、
さすがに、這う様に同情したのか、
レンネルはくさっぱらに寝転がって一服始めた。
「ふう」
賞金首を探してしばらくたつが、
今はどこの役所も支所も、
当分、カカシの事で働きそうにない。
「ほんのすこしの休暇ってところかな」
カカシは働く、人の数だけ。

イワニカはカカシが無事定着していることに安堵した。
「船倉を満杯にして連れてきたときはどうなるか
 と思ったけれど、無事に開拓を始められそうだわ」
「船倉を満杯にって奴隷みたいじゃない」
シノノメ ウタイは眉をしかめた
「・・・・・・そうね、ことを早く進めすぎたかしら」
「あなたには宿を世話になったけど、
 忠告しておくよ、あまり自然に介入、
 し過ぎない方がいい」
「そう?でも開拓ってそういうことよ」
「それだけ危険だってことだよ
 とくにここミシュガルドではね」
「ありがとう」
「いいえ、お礼をいうのは私、
 一晩の宿を有難うございました」
「いえ、いいのよ、
 またいつでも歓迎するわ、
 わたしもさすがに一人でカカシといると、
 居た堪れなくなることがあるもの」
「ええ、その時は喜んで」
こうして2人は別れたが、
お互いの信念に変わるところはない、
いずれ出会うこともあるだろうが、
その時にはどうか、
ミシュガルドの大地に光明が差していることを。

「ええーまたカカシの整備ですか?」
「たのんだよ、芝の手入れで破損してね」
ポルカは貴族の家で働く侍女だが、
最近はもっぱら、カカシの修繕につき合わされている。
「我が家のカカシなんだぞ、
 身支度は整えなきゃな」
「はいー」
今や裁縫仕事でカカシの服や、
敗れた作業着の手入れも手慣れたもので、
カカシ専門のコーディネイターなども、
街で噂になるくらいであるから、
手に職がつくとはこのことである。
(・・・・・・でも、わたしは)
ポルカの未来は分からないが、
1つだけいえることはある。
カカシはスーパーハローワークにとっての、
光明であるということ。

さあ、きみもカカシを飼おう!



お読みいただいて、
有難うございました。
これ全部スーパーハローワークの、
カカシ販促用の宣伝文句みたいな、
ものなのでして、
ええ、
間違ってもカカシにミシュガルドを、
支配してほしいとは思っておりませんから、
今回はこの位でゆるしてほしい。

今回利用させて貰ったキャラクターは全部
第十三登録所のキャラクターになります。
本当に個性豊かなキャラクターがいっぱいで、
胸躍る心地で執筆させていただきました。

ミシュガルド聖典キャラクター第十三登録所↓
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19903

ではねがわくば、
あなたのミシュガルドライフが、
一層、捗りますように。

ありがとうございました。

       

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Neetsha