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カーリマーターの聖典把握記
ミシュガルド聖典把握記4

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カーリマーターは万物を司る神ではない、
ただヴィジョンを届けるだけの神である。
ゆえに、多神教うごめくミシュガルドで、
力なく、今まで動けずにいた。
だが今は違う、
多くのミシュガルド開拓者の力を借りて、
ようやくミシュガルドの地を、
他のものに知らせることが可能となった。
これは喜ばしい事ではあるが、
同時に夢の介入を受ける顛末となった、
冒険者達は足並みが乱れ、
おお、多くのものの血が流れる。
カーリマーターは血を望まぬというのに。


キルは遺跡を守護する機械の兵隊だが、
夢を見たことでより警戒を強め、
普段よりも多く動くようになった。
そう「キルキル」と金属音をたてながら、
侵入者を殺さんという意気込みを、
より強くした。
夢に介入されたのだから、
それほど怒るのも無理もない。


「あのねーえぴもねえゆめをみたの」
「あの夢だね、本当に皆見てるんだ」
夢は誰かの欠片だという、
エピスモーというこの怪鳥もまた、
欠片のひとつを見ていた。
ハーピーに属する彼女も。
「えぴ、はこびものしてえらい?」
「えらいよ、冒険の助けになるからね」
「えへへ」


奥地に入った旅人はアゲポヨ菌に侵されて、
兎になってしまった。
「弱ったな白兎人みたいじゃないか」
人間はフロンティアを目指して時に、
無茶をし過ぎている。


「夢のケーキね」
アサモはパティシエの女の子、
一流のパティシエを目指して修行中。
「あの草原みたいに
 ふわっとしていたら
 どれだけいいかしら」


到底この夢はミシュガルド以外に届く、
ことは無い、
クノッヘン皇帝の耳にも届かない、
ただその側近が噂しているのみである。
「ミシュガルドに夢のフロンティアがある」
と、皇帝は病に伏せながらも、
情報が錯綜する中で形づくられた、
皇帝向けの嘘を見抜いていた。
甲皇国はミシュガルド開拓で、
出遅れていたのだ。


「うー」
アイリはエルフゾンビの女性、
そんなゾンビも夢を見たが、
今はまたゾンビに戻っている。
夢を見た瞬間は、
「まあ、なんてきれいな!」
などと一瞬人間に戻っていたので、
周りの一同ははっとしたのだが、
夢から覚めると。
「あー」
またゾンビに戻っていたので、
夢の効力とは限定的なものである。
本当に。


プレーリードラゴンも夢を見ていた、
ミシュガルドの大地に辺境の国ハラッパから、
連れてこられたかの乗り物用の竜も、
二足歩行で駝鳥のように駆けるかの竜も、
「キシュッ」
だがくしゃみをすると忘れてしまった。
主人の顔は覚えても、
関係無い夢を心にとめておくほど余裕はない、
そうやって、また走り出すのだ、
「ハイヤッ!」
ご主人にまたがられながら。


「あの夢なんだったんだろうな」
フリオ・パオという少年は、
スーパーハローワークから、
親の商売の都合でやってきてから、
自らマンホールの下で見つけた、
地下道に秘密基地を作って、
活発に遊んでいたが。
「大人たちはみんなあの夢の話をしてる
 おれもいつかあの夢の所に行くのかな?」
大人の話について行けるか、
分からないが、まだまだ子供である。


「ようするに集団催眠だYOU!」
このサングラスをかけた男、
レイバンは甲皇国の催眠術師、
ホロヴィズの部下だが、洗脳を得意とする、
彼に相談が持ちかけられたのは、
例の夢の意味するところと仕組みである。
「ミシュガルド全域で
 夢を見るように仕組まれたのさ!
 ここに入植する全員がね!」
どのように仕組まれたというのか、
「それは船が怪しいね、
 船に揺られたまま眠りにつくと、
 変な夢を見る、それの延長だネ」
レイバンはあくまでも、
催眠術の延長だといって、
皆が見た夢ということ自体に懐疑的である。


「おまたせ・・・しました」
コックスズキはモンスターと人間のハーフ、
料理はもちろん絶品だというが、
ゲテモノ飲食店で努めていることもあって、
素人には入りずらい。
「チーフも夢見たんっすか?」
「・・・」
無口に料理を続ける彼に、
夢の有無は分からぬが、
彼は確実にみたのだ、緑の平原を。


「これ三国はどう動くんだぁ?」
アイリス・ドープ、彼女は削れた、
エルフ耳をいじくりながら、
ミシュガルド開拓が進むことに、
苛立ちを覚えていた。
「はぁ、わっかんないんだけど、
 わるいことになってるのだけは、
 確かよねー」
アイリス・ドープとしては、
ミシュガルド開拓など進まず、
三国が協定のまま永続してくれれば、
戦争もなく平和なのだが。
変なカカシを含めた農業改革で、
このまま開発が進むと厄介なのだ。
「どこを叩いてやるか、SHWなのは、
 確実よねー」
彼女はクラーケン新聞に狙いを定めた。


ウルトラ卵かけご飯のおいしさを、
最大限引き出すには、
ミシュガルドで米と卵を自給する、
必要がある、そのためにも、
いち早く開拓を進めなければ、
ならないだろう。
その土地がミシュガルドにはあるのだから。


スライヌは「ワンワン」と鳴くと、
粘液質の頭を振り回しながら、
夢の部分を酸液として分泌してふり払った。
夢は生けとし生きるものの欠片なのだ。


丙家監視部隊、
ビャクグン、エンジ、ハナバは、
夢によって甲皇国に動揺が広がってることを、
知って、
「ビャクグン、これどうしたもんだろうな」
齢千を越える竜の亜人ビャクグンは応える。
「継続して監視」
「ええービャクグンそれだけかよ!」
エンジは鳥天狗の亜人少年である。
「ハナバはどうなんだよ!」
何の亜人か不明のハナバは応える。
「ただ見てるだけでも面白いじゃない?」
「なんでこう、みんな、
 指加えてんのかねえ!」
あの夢を見たというのに。
皆が皆同じようにとはいかない。


「ブフォフォフォフォフォ」
オークのヴォルガ―は笑い声が止まらなかった。
「グヘへ、ヴォルガ―のだんな、
 たしかでさあねえ」
近頃、思ったように上手く網に掛かるのだ、
獲物が。
「このまま縄張り拡大してやろうかブフォ」
これも夢のフロンティアに踊らされた人々を、
恫喝して稼ぎだした力なのだ。


「変な神託だったなぁ」
リオバン・ニニはドワーフ族の女性だが、
ミシュガルドへはゴドゥン教の布教にきたため、
古い上着の悪魔に悩まされていた。
「リオバンはなんでも心配性だなあ」
「なによ悪魔」
他の事をする暇は無いようである。


ベスボロドフは食べたいものを、
貪欲に食べるオークであった。
「ボフッ」
夢を見たことも、忘れて、
今はただ、食べることに集中していた。


「まったくドブジンルイときたら」
ペペムムは獣神将の一角を務める、
今はネズミ型の形態を取っているが、
「あいつらそこを開拓しようと、
 しているのかしら、
 私たちの住処に近いじゃない」
今やカカシの開拓もすすみ、
夢のフロンティアの探索まで行われる現状、
ミシュガルド開拓は加速度的に、
行われていて、
獣神帝の凶行も忘れられてるがごとしであった。
「何回つぶしても
 ドブジンルイの群れが
 やってくるのだから、
 作戦を変えなくちゃいえけないわね」
ペペムムはすばしっこく動くと、
あの夢の攻略に着手した。


カナマラは転がっていた、
どこまでも転がっていて、
見た夢の大半がでんぐり返しの夢だった、
カナマラは粘液をべとつかせながら、
ただ夢を反芻するように転がっていった。
かのものも我が夢を見たが、
おかまいなしに転がっていった。


「あの草原は似てるんだ」
ディオゴ・J・コルレオーネは、
若かりし頃の郷愁に浸っていた、
そうまだモニークが小さかった頃の。
「悪くねえじゃないか
 クスリでひたる夢よりも、
 いいあんばいだったぜ、神様」
そして、現実に引き戻ってみれば、
「ただ、今は手早くやんねえと、
 いけない仕事があるんでな、
 手が離せねえ」
温厚とはいかない日々である。
「まあ、死んだらそっちに、
 行くのかもしれねえ、
 そんときはよろしくな神様」
人参タバコをくゆらせながら、
ディオゴは静かに席を後にした。


ハニィ・ベスパはぶんぶんと飛んでいる。
虫の亜人の少女、蜂のような風貌をしている。
「あの夢、見た人が多いんだろうけど、
 森は無かったみたいだね」
森を旅することをおもにし、
外に行くことはあまりしないハニィ・ベスパは、
ただぶーんぶんと羽音を立てている一方である。
「もっと色々しないといけないな
 忙しくやらなくちゃ手が回らない」
今日も拾いものをして、ウィンドウショッピングの、
夢を見てる、彼女であった。


「皆様、右手をごらんくださ~い、
 一番高いのが中指、いえ、
 フロンティアへのゲートでございまーす」
天城院るるぶは、
SHWのツアーコンダクター、
いつしか、夢のフロンティアへの道筋へ、
人々を紹介する役回りになっていた。
「皆さま、開拓精神、レッツトライで
 ございます」
開拓者たちを送り出す役目をになって、
先に先に開拓者をおくるのだ。
最前線へと送られる開拓者の群れは、
山となって帰ってくるのだろうか?


「おら、団子をやろうかのう」
シャムじいはエドマチで剣術を学んだ、
エルフの戦士であったが、今は和菓子を、
作って売っている。
「ミシュガルド饅頭なんてのはどうかの」
味はわるくない。
「夢のフロンティア、はあ、知らんのう」
今や観光客の名物みやげとなっている。


「すばらしいわ、目が見えなくても、
 夢で感じることが出来た景色は」
シュガーはアルフヘイム出身の、
盲目の女の子である。
「はいシュガーお嬢様、
 フロンティアは確かにございますとも」
インチキロボットのピポパも、
彼女の傍らを離れない。
「ふふふピポパ、行ってみたいわね」
「ええ、ですがフロンティアの道中には、
 巨大な谷がございます、
 近日中に橋が架かると噂なので、
 それからでも良いでしょう」
「そうね、それからにしましょうね」
シュガーは杖を突きながら通りを歩いて行った。


「参ったわね」
ジュリア・ヴァレフスカは甲皇国は、
ミシュガルド総督府、整備開発局局長であるが。
「SWHの地上げで一層厳しくなったわ」
甲皇国の土地開発環境は悪くは無かったが、
このところの機械兵の不具合もあって、
メンテナンスに遅れがみられて、
土木、建築の着工まで影響が出ているのだ。
「人力で行けるところはいくしかないけど、
 あのカカシも使うしかないとしたら、
 フェア・ノートの農耕機械も一式、
 揃えなきゃいけないわね、
 ああ忙しくなりそう」
当人の欲求不満のはけ口が一層必要に、
なりそうな事態である。
「はあ」


「夢のフロンティアへ行くぞ!」
つんつん、は、
アルフヘイム、小人族の亜種、
浪人生だが、一皮むけるために、
研鑚を積みに、
夢で見たフロンティアへ旅立つことを、
決意した。
「だがどうやって行くんだべか?」
まずはそこからが問題のようだった。


「あの大地ならば、国民を養えるか」
ゲオルク・フォン・フルンツベルクは、
傭兵仕事を引き受けて、
夢のフロンティア開拓へ向かい、
歩を進めることとなった。
「待っておれよハイランドの民よ!」
ゲオルクの生涯を賭した冒険譚の、
幕開けとなった。


「オレァもうながくねえ、決着の時だ」
マンボウは緑の平原広がる夢の大地で、
ウンチダスと対面していた。
「・・・・・・死んでいる!?」
ウンチダスは死んでいた、
「」
マンボウもショックで死んでしまった。


「いっただっきまーす」
カナン・ティースは、
ミシュガルドでは貴重な、
ウルトラ卵かけご飯を食べると、
「緑の平原を開拓したら、
 これが毎日食えるようになるんだな?」
依頼主はうなずいた。
「だったら、
 フロンティア探し手伝うよ!」
紅蓮術師である彼女の手腕を買って、
夢のフロンティアへの道を繋げるために、
冒険者は、歩を進める。


花の精霊のおっさんは、
夢のフロンティアに広がる花畑で、
ようようおと居座って満足そうである。
「夢見たかいあった」


とある歩く宝箱は、歩いて、
そのまま夢のフロンティアまで踏破したが、
そもそもその記録をとるものも居なかったので、
もしこの歩く宝箱についていくものがいたなら、
今頃、フロンティアは発見されていたのにな。


「そこにいけば母乳があるんですか!」
魔法使いのホワイトハット君は、
拘置所の檻の中から声をあげた、
魔法使いの腕を見込んで、
彼の保釈金を払おうという人がでたのだが、
「おっぱいは人類の宝です」
彼の性格と嗜癖というよりも、
吸血鬼という名のサガを垣間見て、
頼むのをやめてしまった。
「あー、いかないで!!お姉さん!」

トリガーは夢の干渉を受けて
すぐさま三人の眷属を動かし始めた。
ヴァルグランデ、
チャラガ・ラパ、
サーシャ・グラバスである。

「御意」
ヴァルグランデは、
甲皇国の軍人である。
今回の任務は、
夢のフロンティアを含めた、
SHWの動向を探るために、
ガイシから派遣される。
「でっかいな」
ヴァルグランデの体躯を見て、
驚嘆する甲皇国民たちは、
彼がフロンティア入りするのではないかと、
内心わくわくしながら、
その歩みについて行った。
やがて、ガイシの外に出ると、
皇国兵を伴って、
華々しい出陣となった。


「フローリアの技術と似ていますな、
 あのカカシとやらも」
チャラガ・ラパはそういうと、
夢見の件にも応えた、
「アルフヘイムでも似たような
 神託は巫女が受けるものですが、
 わしの脳にも届いた、それより」
それより、
「ゴブリンに教わるなんて、
 恥ずかしいと思わんかね?」
魔法学に精通しているチャラガ・ラパは、
ひとしきり彼に師事しようと、
やってきた若者にそう答えると、
杖をこんっとついて、立ち去った。


「そうなのねお客さんも買い取るつもりで」
サーシャ・グラバスは超超高級娼婦である、
その地位を利用して、情報を訊き出していた。
もはや夢のフロンティアは実際にあるもの、
として取引が行われていて、
彼女を買った大商人もまた、
その土地に買いを出している一人だったのd。
「でもお高いんでしょう?」
既にあるとされている土地の値段だ、
開拓者がやっきになって、
発見した暁にはと、土地の算段をやっている。
これがどう転ぶかなど分からないのに、
投機の話は早く動くものだ。
「そんなことより、はじめましょうか」
サーシャ・グラバスの深い夜が始まった。


トリガーは観測者に仰ぐと、
神と称されるカーリマーターを、
ヴィジョンを発生させる装置では?
と考えて、それは古代ミシュガルドの
科学技術が為せる業だと推論した。
それを知るために三人の眷属を、
ミシュガルドの地に遣わせたが、
それがどう効を奏するかは、
今のところ未知数である。


獣神将から放たれた血の使い魔たちは、
人間の足跡を追って、
一番深くミシュガルドに食い込んでいるもの、
は誰なのかを調べようとしていた。
当然、夢を見ることも無い、
かの血の使い魔は、
早々と、人間の足跡を追いかけると、
「なんだこの魔物は!?」
それが止まったところで引き戻し、
獣神将のもとに飛んで帰っていくのだった。


「長い髪、おもしろいね」
コゥルンはみつけたものに、
銀のナイフをさずけるという、
ミシュガルドの幸福の妖精かなにかか?
「三つ編み作っちゃった、
 ありがとね」
よく笑っていると、
銀のナイフを置いて立ち去ろうとした、
その時に訊ねた。
「君も夢を見たのかい?」
「うん、いい夢だったね」
そういうと今度は本当に去っていった。
やはり妖精も夢は見るのだ。


「お友達増えるのかな、えへへ」
アルナ・アルアリアはアルフヘイム出身の、
動物使いである。
冒険を始めると、大交易所は、
夢のフロンティアの、
話でもちきりであった故に、
「悪くないよね、そんな夢があっても
 そこに行こうとしてる
 動物たちの気配も感じるもの」
すでに動物と心を通わせることのできる、
彼女はミシュガルド原生生物も同様の、
夢を見てることを感じ取っていたのだ。
「感の良い子はもう行ってるかもね」


「え、え、前線にですかぁ」
ナノコ=オークトーンは自らが所属する、
甲皇国の隊で料理番を務める一般兵だったが、
「姉さまも行くって?
 それじゃあ行かないわけには、
 いかないですけど」
「軍の方針だ、フロンティアとやらを
 叩き潰さなければなるまい」
また戦いになるのだろうか?
「ひー」
ナノコは苦手な戦いが、
自分にまわってこないことを祈った。


また再び、巡ることが出来た、
次々と、我がフロンティアに、
参入せんとするひとの足音が響く、
カーリマーターはただその音を、
聴いて、待ち続ける神である。


ミシュガルド聖典キャラクター第四登録所

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