Neetel Inside ニートノベル
表紙

カーリマーターの聖典把握記
ミシュガルド聖典把握記2

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ニーテリアの世界は三分割されていた、
甲皇国、アルフヘイム、SHW商業連合国、
だが唐突にミシュガルドの大地が現れた、
まるで長く続いた戦乱の日々に、
安住の地を与えるかのように。

そしてそこに、
豊穣の神カーリマーターもまた存在した、
すべての人にミシュガルドに広がる、
広大な農地を譲歩するために、
ただそれだけの為のヴィジョンが、
人々の脳裏に焼き付けられていった。


ハルドゥは遺跡の傍で夢を見たが、
「おうちに帰りたい」
とある理由で、遺跡に囚われている彼は、
どんな夢を見ても郷愁に駆られるばかりである、
「ほんと、リアルな夢までみちまうんて」
秘境の地の遺跡でただ、他の冒険者を待つことも、
いまではほと諦めてしまった。
今や亡霊のように、そこに留まるばかりだ。


「夢だと!?」
ヤーヒム・モツェピは、
部下から受けた報告と自分が見た夢の一致に、
驚愕した。
「ホロヴィズ様も見たというのか
 遂にくるものが来たという感じだな」
今まで、このミシュガルドの大地で、
預言者は現れなかったし神託を受ける巫女も、
また数少なかった故に、
ほぼ全域に広まったその夢の噂は、
骨統一国家、甲皇国の駐屯所でも騒がれ始め、
ガイシでも市民が同様の噂を口ぐちに話始めた。
「これが機械神とは別の神の存在とするなら、
 我々はミシュガルドの神を認めざるを得ない、
 だがそれが許される事かどうか」
もとはエルフとしてアルフヘイムにいた、
ヤーヒム・モツェピは信仰に関して慎重だった。
首を突っ込むと厄介だからだ。
「機械を崇める奴らには毒かもしれんな」


「どこにあるんだろうなあー夢の場所」
ズゥ・ルマニアは自然を探索していた。
肩書きは動物園の園長をしているが、
今の目的はミシュガルド動物の調査・捕獲、
であるからして、自然の夢を見たあとは、
「あの場所ならきっと一杯自然動物が
 いるよねきっと」
双眼鏡を片手にして、探索を続ける。
「たのしみだなあ」


「あれなんだったんだろう」
リッター・エコロ少年は寂しそうに呟いた。
「でも相変わらず迷子だ、
 大交易所ってどんだけ広いんだ」
泣きかけ、である。
「少年も同じ夢でも見たのかい?」
尋ねてきたのはロビン・クルー、
自称冒険家である。
「なんだいまだまだちびっこいじゃないか」
相方のシンチー・ウーも居る、
彼女は人間と亜人間のハーフである。
「ぼく・・・・・・ぼく」
「大丈夫さ、家まで届けてってやるよ、
 近いんだろう?」
「あたしらも探し物をしてるんだ
 冒険譚ってやつをね」
ミシュガルドには本当に色んな人物が存在する。


伊予国 えひめ も夢を見た後、
「おっと尻尾取れちゃったよっと♪」
「生えてきたよっと♪」
一人遊びをしていたが、
「暇だなぁ、あの夢の場所って
 どこなんだろうなー」
パッとパラソルソードを開いて、
くるくると回してみせるが、
疑問はとけない。
パラソルソードを閉じて、
(そもそもお仕事募集中なんだよなあ)
考え事に集中している。


モローはアルフヘイム森林にすんでいた、
ヤギとヘビとライオンのキメラである、
彼もまたかの夢を見た。
「ニャー」
草原の夢、広がっている、
生きとし生けるものが戻っていく大地だ。
「メー」
そこにいけば獲物にありつけるだろうか?
「シャー」
様々な鳴き声を試して、
アルフヘイムから泳いできたモローは、
その驚異の体力を駆使して旅立った。


「ふんふん、とこんな感じだったかな」
絵を描いて夢を残そうとするものも多い、
ドワール・ルドラ、彼女もその一人である。
「風景よりやっぱり似顔絵の方が描きやすいなあ」
そういって、絵描き道具をしまうと、
「さて一人前にならなきゃね!」
トレジャーハンター目指して、
彼女の奔走は続く?
「あ、カカシさん、似顔絵一回30vipですよ」


甲皇国の水槽の中、ボーイイーターは眠っていた。
「例の夢は見なくなったようだな」
「あの反応は他の機械兵でも見られました」
元は魚人の少年であった彼も、
禁断魔法によって、
ゾンビのような魚人族と成り果てた、
ボーイイーターは今や甲皇国の兵士、
「もともと扱いづらいボーイイーターだ、
 この上、夢想されたりしたら、
 敵の術中にはまるかもしれない」
彼は、
ただ水槽の中を漂い、次の出撃を待っていた。


スリパリー・アヘグニー、5mはあろうかという
体躯を持つ巨大な蜘蛛もまた夢を見た。
だが捕食することで手一杯な彼は、
蜘蛛の巣で捕まえた、
シャギー・アヘグニー(1m位の蜘蛛)
をむしゃむしゃと咀嚼した。
やがて食べ終わると、夢の事など忘れていた。


「あの夢からすると、もっと北の方か?」
ジョワン・ヒザーニャは膝に力を入れて、
夢の場所を目指し陸路を冒険していた。
「くっ膝に力が入らねえ!」
道中、いためた膝が災いしたのか、
長い旅の最中で痛みが爆発した。
「兄弟よすまねえ、おれはここまでのようだ」
ジョワン・ヒザーニャを助けに、
治安維持隊が駆け付けたのはそれから、
しばらくしてからのことになった。


「そこに行けばご主人がいるというのかしら」
リエカ・リリアはメイド服を風にはためかせ、
ながら、考え事をしていた。
神からの啓示があった、それは確かである。
「でもどうやって行けというのかしら?」
ハーフエルフの彼女はまだまだ若い、
旅慣れていないこともあって不安も大きい、
「ただ道中の魔物は刀の錆びにしてやれば
 いいんだし、考え事していても仕方がない
 じゃない」
皆が夢を見たということもあって、
その場所に主人が来ることを願って、
「何処にいるのですかご主人様」


リヴァイアサンは黒い海の中でそれを見た、
異なる神の力を海の悪魔は見た。
普段、深海で眠っている、
リヴァイアサンも怒りに満ちて、
黒い海を荒らしてまわっていたが、
やがて落ち着きを取り戻すと、
大渦とともに深海に戻っていった。


「カカシは無事に定着しそうだね兄さん」
「そうだな弟よ」
ストライア兄弟は話し合うと、
経済の状況を見回していたが、
「問題は夢の話だね、あれ兄さんも見ただろ」
「ああ、悪くない夢だが、いかんせん異質だ」
兄のリーバーレーと弟のテイオーは、
甲皇国はホロヴィズとの協力関係にある故に、
「機械の必要があるとならなきゃお金は動かない」
「もう気分屋の開拓民に頼っても居られない」
「そんな時にあの夢ときたら、どうしたものか」
「ホロヴィズも見たそうだ、気分悪そうだったな」
2人はつばのおきなシルクハットと、
ド派手なスーツ姿をして、
2人して揃って超バランス空気イスで、
話し合っていたが、
「そろそろ立ち上がる時が来たようだね兄さん」
「そうだな弟テイオーよ」
経済に夢がどのような効果を与えるかは知れず、
なおも新聞が書きたてるその内容に、
ビジネスチャンスを感じたのか。
「農具が売れに売れそうなのは確かだね」


「ゴム、ゴム」
ミシュガルドに住む職人人、ゴム人もまた、
みたのだ夢を、
「オレ、ゴム、作る」
体を引き伸ばして薄く延ばしたゴムを作ると、
それを引きちぎって特殊なゴムにした。
「コレで、と」
ゴム人はギリギリとゴムで、
巨大なスリングショットを作り出すと、
自らの体でギリギリと引き絞り、
「イケッ!!」
発射した!
そして着地点でバウンドすると、
遥か彼方へバウンドしながら遠ざかっていった。


ローロとカミクイムシ、
アレク書店でローロとカミクイムシが、
争っていた。
「あっちにいきなさいよ!」
虫よけの結界の期限が来ていたのだ、
「もうまったく」
彼女は得意の棒術で虫を撃退していたが、
ほと疲れてしまった。
(あの夢、兄さんも見てるのかしら?)

(――――――ローロ)
トミロ、ローロの兄である彼もまた、
あの夢を見ていた、
そして彼の加わるパーティーもまた、
かの地の調査を始める役割の一端を、
担うことになっていったのである。
(また会えるといいね)


「そうその夢をどうするっていうんだ?」
ショーコはトレジャーハンター、
彼女は財布を無くしていたので、
仕事を選んでるヒマがなかったのだ。
「夢のために冒険するからついて来いって?」
正気の沙汰ではない、
ショーコもその夢を見ていたが、
ミシュガルドでそんな開拓の大地があるとは、
知れないものである。
「でも背に腹は返れないか」
彼女も仲間とともに旅立つことを決意した。


「最近調子悪いな」
ツィツィ・キィキィは蝙蝠亜人である、
自らのエコーロケーション能力が突如見た、
夢のせいかうまく働かなくなり参っていた。
蝙蝠独自の暗所でも場所を理解する能力である、
ものの、それが使えなければ、盗賊稼業は、
致命傷だったからである。
「少しぶら下がって寝とこうかな」
蝙蝠独特の睡眠方法でダンジョンの天井に、
足でつかまりさかさまの状態になると、
広い翼で全身を包み込むようにして、
しばしの睡眠を楽しむことにした。
「いい夢みたいな」


「たあありゃああああ」
ナキシ=オークトーンはカカシに一撃をお見舞い、
すると見事にカカシは砕け散った。
「おお、すごい!」
彼女の怪力の為せる業に甲皇国兵は驚嘆の声を、
あげた、
「ふんどんなもんだい!」
ナキシの見た目は亜人のようだが、
丙家一族の女騎士の娘なので、
甲皇国でミシュガルド兵団、部隊長の一角を、
努めている。
(でもあの夢、なんだったんだろうな?)
皆が見たという緑の平原の夢、
それは確かにあったのだ。


「よいしょ、とカカシさんこれで素敵に
 コーディネイトできちゃったぁ!!!」
カカシはルレット・スレーダーの手によって、
色とりどりにコーディネイトされた。
普通に服を裁縫していては、
あまりのデザインの奇抜さに、
客にそっぽ向かれてしまっていたが、
ことカカシさんにはとてもしっくりなじむ、
何より不気味に思われがちなカカシさんである。
から、明るい色が好まれたのだ。
「えへへ、楽しい服だね」
彼女もまたあの夢を見たが、
「あそこにカカシさんたちが行くんだね」
と夢の続きを連想している。
「楽しみだねえ」


ボロールはふわふわと漂う
ミシュガルドのカビの菌であるが、
動物に寄生することが、
シュヴァルツヴァルド博士に、
よって知らされている。
だがそのボロールさえ浄化されてしまう、
広大な土地がミシュガルドにはあった。
かの夢を見たボロール感染者は、
もがき苦しみながらも、ボロール菌から、
解き放たれ、完全にボロール菌は植物寄生型に、
戻り死滅し、患者は回復した。
「こんなことがあるのか!?」
皇国軍で隔離治療されていたボロール菌の、
患者たちが一斉に回復したため、
この夢が起こした奇跡の一つとして数えられた。


「ミスター・ストークよく頑張ったぞ」
カカシを標的にした一連の砲撃が終わり、
甲皇国軍ミシュガルド派遣軍開拓地は、
アレッポ警備隊隊長、安堵の瞬間であった、
相棒の自律歩行自動砲ミスター・ストークが
想ったように機能したからである。
「これでミシュガルドの妖怪どもは
 一網打尽にすることができるな」
彼もまた夢を見た一人であったが、
「ミスター・ストークも夢を見たかい?」
と言葉をかけて機械を労う姿は、
「未開地を開拓しきった暁には、
 あの夢のような世界が広がってるさ
 きっとね」
と自らの機械文明を誇ってみせた。


「イェイ、みなさんおたのしみぃ?!」
マルグリット=フィネルはダンサーである。
出身国はアルフヘイム、
とても開放的なエルフの女性である。
大交易所の大通り、人だかりができる。
「みんなフロンティアにいってみたいかー!」
おーっと歓声が沸く、
「だったら踊らなきゃ損だわ!ねえ!」
くるりと廻ってみせると、
集団を前にして、
ふたたび踊りを続けた。
題して「夢のフロンティアぁ~」


「あの夢で無茶な旅をする人が増えちゃって」
エタノールというアルフヘイムの女性は、
ヒーラーらしく治療室で冒険者を治癒する。
「あなたもあまり無茶しちゃ駄目よ」
冒険者らしい風貌の男にきっと眼を向け、
次の怪我人の治療をするが、
「あらあらキリが無いったら」
完全にエタノール目当ての怪我人の、
多いこと多いこと。


捻式ビスボルトは見た夢を反芻しながら、
全身に電気を流して、夢を消去しようと、
していた、が、しかし植え付けられた夢は、
想像以上にビスボルトの脳にあたる、
オーパーツにはまってしまっているらしく、
消せそうにない。
「・・・」
ビリビリ電気怪人のビスボルトが、
フロンティアの夢をみる意味があるかは、
誰かが知ることだ。


「あそこにもプロテインがあるのかな!」
ドラゴンと人のハーフであるラプソディは、
その全身筋肉ともいえる肉体美をみせつけ、
ながら、ボディビルダーの様にポーズを、
決め続けている。
まわりの住民は狼狽えるばかりだ。
「なっ皆、夢のお告げがあったなら、
 俺に極上プロテインの情報を、
 教えてくれないか!」
さわやかな、いや暑苦しいスマイルで、
輝き続ける筋肉ボディがそこにはあった。


「キュィィ・・・」
数多のミシュガルド冒険者を葬ってきた、
原生生物のウィピーという化け物は、
突如として脳裏に焼き付けられた、
全身を覆う草原の風景に反応していた。
そこに行けば狙うべき獲物が来ると、
算段をしているのだ。
「キュィキュィキュィィィ」
普段なら群れることのないウィピーが、
集団で移動し始めたことが目撃された。
酸液の涙を流しながら。


「ふぅぅむぅぅ」
レドフィンはその勇ましい体躯を誇る、
竜人族のオスであるが、オスと呼ばれるように、
見た目は本当にドラゴンそのもの、
赤いドラゴンが二足歩行しているという風体に、
いかにも仰々しい爪と牙、大きな翼を持ち、
腕っぷしも大層強く、一騎当千以上の武勇を、
誇る凄まじい竜人だが、
そんな竜人でも夢の干渉を受けるのだ。
「馬鹿げているフロンティアだと?
 虐げられたものが集う理想の大地だと?」
人々が口ぐちに夢のフロンティアを話す中、
レドフィンは怒り心頭であった。
「強敵!ただそれのみが
 ミシュガルド来訪の理由!」
はやばやと翼を広げ飛び立つと、
より強い相手を探して、火の息を上げるのだった。


「うひひひひ」
ガー子はガーゴイル族の女の子、
冒険者がいつもより多くなったのを、
きっかけに商売をより一層やりやすくしていた。
といってもその商売というのは、
+99強化装備を暴利といっても過言ではない、
やり口で売りさばこうとするやり方だが、
「いますぐ必要なんだ、まけてくれよ!」
翼をパタパタさせながら不適に笑う、
「だめですよ、だんな、お金たりません」
「くっよこせ!!」
ゴチンっとハンマーを振りかざすと、
冒険者は気を失って動けなくなってしまった。
「だめですっていうのに、まったく」
近頃の冒険者はフロンティアを目指して、
軽微な装備でやってくるもので、
皆、弱者ばかりなようである。
「こういうのばっかりじゃ、
 せっかくのカンスト装備も売れないな」
ガー子は心なしかやりにくいことを知り、
夢のフロンティアとやらを軽く恨んだ。


「いつどこで亜人が襲ってくるかも
 わからないというのに」
スズカ・バーンブリッツ
司令部附参謀幕僚は、
ガイシに植民してきた皇国民が、
唐突にみた夢でフロンティアを目指す、
開拓民へと変貌を遂げていくのを目の当たりにし、
「あのような装備も警備も行き届かない場所に
 人々を行かせるわけにはいかない
 迅速に夢とやらを打ち砕かなければ」
甲皇国ミシュガルド派遣軍から、
植民地へと告げられたのは、
夢はミシュガルドの悪鬼の類が流したデマだ、
ということである。
ミシュガルドを開拓しにやってきた、
人々にとっては、冷や水を掛けられたような、
ものであるが。
「これでは得をするのはSHWばかりだ
 一体、何を考えてるのだ神とやらも」
彼女たちは、
ミシュガルド開拓の激化を喜ぶ輩の考えを、
どうような算段なのかと、
上で話し合うことに尽くしていた。


「シャルったら
 またカカシ放りっぱなしだよ」
ルーと名乗る少女は自らの持つ妖精の羽を、
ぱたつかせると、カカシめがけて、
自らの体からのびる触手を伸ばして、
壊れたところを修繕して立たせてみせた。
「そうだね、
 シャルは私とカカシさんで、
 夢のフロンティアに行くんだもんね」
農業スタッフとして働いている彼女もまた、
夢を見たのだが、シャルと呼ぶ少女こと、
シャルロットは外出中のようだった。
「シャル、まだかな」
帰ってくるまでは動かないつもりなのか、
妖精の羽をはたつかせながら、
時間をもてあましていた。


アルフヘイムの癒しの精霊、
カマオ=ドールが呼び出された。
「あらあ、癒しが必要なのかしら、ね」
カマオ=ドールはオカマである。
「うふ、みんな夢のフロンティア目指して
 ビンビンなんだからこまっちゃうわね」
癒やされる側は反応に困っている。
「いいわ、初級回復呪文ホッテ!!」
回復呪文は発動した、
あとには悲鳴のようなものを残しながら。
※同じ掘るなら開拓してほしいものである。


「カカシに釣られるように神託が来たわね」
アルステーデ・アズール、彼女は夢を、
どのように考えるのか?
「わたしたちの計算が正しければ、
 夢のフロンティア発見までは、
 一カ月もあれば見つけられる」
計算高い彼女ならミシュガルドの合同報告所に、
上がった数々の文献から、場所を割り出せる。
「でも問題はその場所が遺跡群や、
 未開地を乗り越えなきゃいけない場所に、
 あるってこと」
そして彼女には理解出来ていた、
その場所が異例の空白地帯であるということを。
「どうやって植民地にするというのかしら、
 カカシは使えないことは無いけれど、
 カカシを使うってことは人も随伴するって、
 ことになるわけだし」
そして、
「なによりそんな地帯、ミシュガルドの、
 原生生物が黙ってないはずなのに、
 なぜ、保たれてると夢を語るのかしら?」
神を疑った。


ナエポヨ菌は活発に働きはじめると、
自らの顏とは似せぬほどに精力的に、
増殖を始めた、冒険者の腹の中で、
冒険者はナエポヨ~な顔をして、
トイレに駆け込むと下痢糞をした。
フロンティアを夢見てここまできたはずが、
原生生物の調理をあやまってしまい、
生食の部分が残ったままジューシーに、
頂いたのが災いしたのだ。
「ここでリタイヤか」


「夢を抱いた一団だらけか、
 これはチャンスだ」
ムゼンは亜人のような耳を兜から突きだして、
自らの持つ刀の鞘を手にしながら、
盗賊の血がうずいていた。
「強き者が弱きものを制す、
 これはいつの時代も同じ」
夢のフロンティア開拓者たちが、
皆総じて大量の出費とともにキャラバンを、
作って旅をするのを知っていたこともあり、
これに手をかければ大儲け出来ると、
ムゼンはしきりに仲間を募ろうとしたが、
「わるい、タッパの無いやつは雇わねえ」
と断られる。
「我が雇い入れるといっているのだ!
 我に集えと声をかけているのだ!」
ムゼンの声は虚空に響いた。


「よくないですね」
獣神帝ニコラウスは一連の流れと、
不意に見せられた夢の異質さを汲んで、
人間達が決起するのを快く思っていなかった。
「あの夢をみせてる神とやらが、
 みずからミシュガルドを切り売りする、
 腹積もりというなら、
 これは懲らしめてやる必要がありますね」
問題は場所と時間である、
散り散りに行動する人間達を叩きつぶして、
まわっていては時間も労力も無駄だ、
ならば集まったところを?
「夢のフロンティアとやらを、
 地獄に変えて差し上げましょうか」
かくして獣神帝ニコラウスもまた、
フロンティアの正確な場所を、
求めるものの一人となったのだった。


(あの夢がそんなに大事なのかな?)
ヒスイは学生という身分で、
ミシュガルドまでやってきた少女であるが、
その卒業研究のネタとして、神託を、
扱うのも悪くないと考えていた、が、
「また、あんな怪我をして」
夢のフロンティアを目指しては、
傷病者となって帰ってくる人々と、
壊れたカカシの群れを見て、
内心、呆れてしまっていた。
「またアルフヘイムは人手不足になる」
ヒーラーという便利な役回りは、
こういう時に重宝されてやたらと面倒なのだ、
ヒスイ自身、学生の身の上ながら、
治癒魔法を要求されて、困惑気味である。
「これもエルフの悲しいサガなのかしら」
卒業研究は怪我人の治療になるのだろうか?


「機械兵0参型前へ!」
「了解シマシタ」
夢見る民を無事に帰還させるために、
派遣された機械兵の数は幾多のものである。
が、その機械兵にも異常がみられていた。
「やはり、コードに無い、
 干渉がみられる、
 この部分を切り離さなければ」
整備兵は外科的な処置で、
機械兵0参型の内部演算部分を解体して、
再構築していく。
「全部の機械兵がこうなのか?」
「ええ、不具合の原因にはなりませんが、
 それでも干渉を受けたことは確かです」
夢の干渉、
人型で自律歩行を行える分、
より人と似た思考パターンを持つ、
だが夢まで見るなどとは聞いたことが無い。
「切り離しても遜色無いですが、
 作業要員がかなり必要になりますよ」
「構わん、甲皇国の歩兵は
 夢の遮断が先行されるそうだからな」
こうして甲皇国は出遅れていた。


「バケモノの居ない場所だと?」
酒場で話を訊いたヨハンは、
ミシュガルドを魔の大陸だと考えていたので、
驚いていた。
「人が住むところ以外でそんな場所が、
 ここにあるとは思えんな」
既に数多くの魔物を斬り伏せてきた身の上から、
もしそのような安全地帯がこの大地に存在するなら、
あっという間に支配者が現れているだろうと、
考えたのだ。
「まてよ」
人が多く集う場所は魔物もまた?
「この話悪くは無いかもしれない」
獣神帝ニコラウスの噂を訊いていたヨハンに、
とっては、かのものがどのような腕を持つのか、
気になっていた。
もしフロンティア建設が適ったのなら、
当然仕掛けてくるだろう。
「みつけてみせるさ、
 この名剣アルカトラスにかけて
 強敵どのとやらをな」


大いなる森が広がっている。
その中にいる精霊。
大いなる森の精霊もまたかの地の夢を、
見ていたのだ。
「この先は神聖な場所・・・立ち去れ・・・」
「うわ、なんだこのジジイ頭の化け物」
「ワシじゃよ・・・・・・」
「切り捨てちまってもいいんじゃねえか」
「攻撃をやめるのじゃ・・・・・・」
夢のフロンティアを探索する冒険者たちは、
「いや、待てよ、こいつが死守するって、
 ことは相当のものが隠されてるんじゃ」
「フロンティアも近いってことか!?」
「まつのじゃ・・・・・・」
誤算をし、道を誤ってしまうものも、
多くあった。


型番:AS-002PIXY 通称「ピクシー」は、
「夢のお告げがありました」
故障していた。
甲皇国で製造されたピクシーは、
情報伝達の役に立つという理由があったが。
例の夢の干渉から日常会話を、
行う、普通の妖精のように化けてしまっていた。
「夢はみるものです、機械も」
「おかしいな、こんな喋りかたしなかった」
「そうですか、私は悪くなってしまった
 また、捨てられるのですか?」
「嫌だな、システムが故障した機械なんて」
去っていく使用者。
「さようなら使用者」
「さようなら」
ピクシーは寂しそうに呟いていた。


「いろんなものが故障しているようだけど、
 私は大丈夫よ!」
ホロヴィズ将軍の娘、メルタお嬢様は、
機械の手足と体をガコンガコン言わせながら、
「メ、メルタお嬢様、
 万が一のことがあってはいけません!
 治療を受けてください」
「なあに? 治療って夢診断?
 そんなもの必要無くてよ!」
メルタは単身、フロンティアの視察に行くつもりだ。
「ホロヴィズ将軍に申し訳が立ちません、
 ここは一度引き下がってください、
 お供の機械兵が整備できあがるまでは」
「まったく、これだから機械は人が、
 動かしてこそだと思うのよ」
といっても、現状の姿に満足している訳、
ではないのだが、
「お嬢様、どこへ!」
「散歩よ散歩、街の中の様子を、
 警備がてらね」
メルタは顏のクリスタル透明装甲ごしに、
機械の体を動かして出動した。


「皆が湧き立っておる、いかんな」
SHW商業連合国の移民たちは、
新聞にかきたてられ、夢のフロンティアを、
カカシと魔力タンクで制圧するのだという、
勢いで勇み足であった。
「必要以上に情報が流れ過ぎておる、
 誰もが、警戒せねばならん時期に」
ダンディ・ハーシェル(51歳)
ベテラン傭兵である彼は雇い主を、
探しているが、そのどれもが、
夢のフロンティアという得体のしれない場所へ、
向おうという一隊であることに、
危機感を感じていた。
(あるかも分からない場所への護衛とかな)
夢のお告げなどは信仰心が特にない、
ダンディにとっては分からないことであり、
それを信奉し湧き立つ人々の想いもまた、
理解できないのであった。
「断るよ、ワシも年だしな」


「人間どもが、湧き立って面倒なこと」
獣神将エルナティは黒い翼をはためかせながら、
人間の様子を偵察していた。
「ニコラウス様がおっしゃるには、と」
人間が行きつく先を先回りして調べろと、
だが、どれも未熟な冒険者ばかり、
途中で挫折しては引き返すものもの、
「これでは調べものも進まないわね、
 あの夢のお告げ、もっと効率よく、
 ことを進めてる人間はいないかしら?」
いない、
皆開発途上である。
「・・・・・・」
「こんなことニコラウス様には報告出来ないわね」


「あらぁ、冒険やめちゃうの?」
「うん」
「情けないのね、フロンティアまで、
 あと少しかもしれないのに」
ハイランドの戦士シャーロットは、
自らの胸に顔をうずめる冒険者を、
慰めていた。
「もうちょっといってみましょうよ」
「もう怖いんだもん」
「ねえ、息巻いて開拓しつくしてやるって、
 言っていたじゃない」
彼女にとっては一仕事終えたいと思って、
申し出た傭兵仕事だったゆえに、
「もういいんだ、お金支払うからさ」
慣れない血をみた冒険者は、すぐに、
へたってしまう、こんなことでは、
ミシュガルドの開拓は一向に進みそうにない。
「はあ、まったく駄目ねえ」
シャーロットはため息をついた。


「またあの夢の話してるよ」
ラピス=マトリクスは薬学に精通している、
魔法使い、ミシュガルドにはるばるやってきたのは、
自らに掛けられた呪いを解くためだったが、
「アルフヘイムびとまで」
エルフに魔法を教わった彼女にとっては、
その様子は異常だった。
「まったくどうにかしてる、ね、色々と」
そういってまたふらふらと歩きだすと、
仕事の事を思い出したのか、
店屋に入っていった。


「おいゲフェングニス立て」
エルフへイム至上最悪の犯罪者である、
ゲフェングニスはミシュガルドの地に、
護送されていた。
 本土で犯した罪の重さから、
ミシュガルドの孤島に流刑、
のちの終身刑となったのだ。
「ここミシュガルド監獄を
 生きて出られると、思うなよ」
そんな彼も夢を見た、緑の平原の夢を。
拘束具で全身を止められた男は、
エルフの長い一生を牢獄で送るのだ。
そのような夢は彼に必要だったろうか?


「未だその時ではない・・・・・・」
謎の剣士フォーゲンは見た夢と、
それに扇動される人々を眼にして、
そうつぶやいた。
内心、巻き込まれるのが嫌だったのだ。
「あなたは、セイゲンさまでは?」
(・・・・・・)
「いやフォーゲンでしたか、間違えました」
あげくに人違いに会う、
それもアルフヘイム最強の剣士と呼ばれた、
セイゲンとである。
「フッ・・・・・・」
気は悪くないが、
キャラ被りしてないかが気になる、
フォーゲンであった。


数多のキャラがまたしても夢に踊った。
緑の草原、実りの黄金、
果てしない牧場の夢を、
だが、未だたどり着くものはない、
いつかはそこに向えるのだろう。
それがいつかを決めるのは、
まだ早い段階であるが。


出典

ミシュガルド聖典キャラクター第二登録所

http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=18143

       

表紙

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Neetsha