Neetel Inside ベータマガジン
表紙

ノベル『ボルトリックの迷宮』
男の戦い

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◆ボルトリックの迷宮 B?F 5日目

◆ガモ

探索部隊が洞窟の奥に消えた後、残ったのは魔法の小僧(11)と剣士(25)と俺(19)だった。
3人が各々自由に、一見して伸び伸びと行動しているように見えるだろう。
しかし、水面下、潜在意識下と言い換えてもいいが、見えない所ではまるで互いを監視しているようなヒリヒリとした緊張感が漂っていた。

その渦中にあるのは、あの女の存在だ。

フォーゲンがのんびりと立ち上がり、のらりくらりしながら女のテントに近寄っていく。
申し訳程度に手にした粥の器は、明らかに言い訳のための小道具だ。
それを見たホワイト・ハットが滑るように寄り添い、共にテントの中を覗き込む事で剣士の企みを防ぐ。

奴等は既に相当量の媚薬を飲んでいる。
初日から、気取られないように濃いめの味付けをした、媚薬入りの食事を口にし続けているのだ。

そして、この迷宮に降りてからの5日間、ずっと団体行動をしている。
この密閉空間での男女混合生活は、予想以上に男を「その気」にさせるのだ。

そう、予想以上だ。
なぜなら、媚薬を飲んでない俺までもが、好みでもないあの女を抱くチャンスを伺っているのだから、予想以上と言う他ない。
勿論、抱くと言っても俺はもともと、愛だの恋だので女を見たことはない。
俺のソレは、全て性欲と支配欲を充たすためだけに行使される類のものだ。

小僧と剣士はテント前で何かを話し込んでいる。
剣士が頷いている。
そして、小僧がこちらにやってきた。

「母乳を飲みたくないですか……?」

お前は鬼の仔か。
この小僧は共犯関係になろうと言っているのだ。
互いに牽制し合うような状況ではない、連合を組んで事を成そうと、そう言ってるのだ。

「俺には何のメリットもないが?」

嘯(うそぶ)く。

「母乳を飲みたくないのですか!?」

何だその驚いたようなリアクションは。

「あの女、いや、あのメス豚になんの魅力がある?」

「でも母乳が飲めますよ……?」

どこまでも母乳で推してくる。
ここで折れたら俺が馬鹿みたいではないか。
説得ならもっとちゃんとやれ。

「フッ……ガモよ……」

フォーゲンの奴が来やがった。
そして二人は年の離れた兄弟の様に並び立ち、俺を見た。

「「……お前はいいのだな?」」

こいつら……最終意思確認を迫ってきた……。
「我らは触るし飲むが、お前はその権利を放棄しそこに座っている事になってもいいのだな?」と。

二人は颯爽とシャーロットのテントに向かう。
垂れ幕をめくり、最後にチラリとこちらを見た。なんて息の合い方だ。

「……まて」

思わず声が出てしまった。



我らは今、メス豚のテントにいる。
破れた衣を身に纏い、身を横たえた女を皆で囲う。
運命共同体のはずの我らだが、今また緊張感の中に身を置いている。

誰が初めに触るのか──。

最初に触れる。
それは確かに、誰にも譲れぬ役割ではある。
だが、窮地に立った場合には「コイツが率先して触ったのだ」と売られる運命を背負う事でもある。
……いや?まてよ?
俺が最初に触ろうが、何をしようが、ここに我らを誘ったのは小僧だ!
俺は女の乳房を鷲掴みにし、愕然とした表情の二人を見てニヤリと笑う。
執拗に揉みしだく。ムカつく女だが、胸は悪くない。

「……んっ」

女は細やかに喘ぐ。勝利の余韻に浸る。
今俺は、この女に対する僅かな征服感を味わっていた。

「フッ……最初に触れたのはお前だな?」
「ガモさんが最初に触った……これは動かぬ事実として歴史に刻まれました……」
「お前ら……」

母乳を飲もうと誘いをかけてきたのはお前らだろう!と激昂しそうになる。

「……だがお前は服の上から触っているにすぎん」
「なに……?」

フォーゲンの奴は、服の下に手を滑り込ませた。
直だ。
直揉みだ。
乳首が服を押し破る程に揉み上げる。意外に力任せだ。

「……あっ!」
「フッ……」

女の喘ぎが高まり、フォーゲンは満足そうに俺を見る。
「俺の方が感じさせたようだな?」と、その目が雄弁に語ってきた。
マウンティング行為とは味な真似を……。

「ふー……。二人とも……レベルが低すぎます……」
「「なんだと…?」」

溜息をつき、やれやれと肩をすくめる魔法小僧。
ワンアクションで人をここまでイラつかせるとは大した奴だ……(ビキビキ。

ホワイト・ハットはおもむろに両手でチュニックを捲り上げた。
女の乳房が露となる。

「「お前、それはちょっとアレだろう」」

思わずフォーゲンと二人で小僧を制する。
なんというか、この会合の趣旨は、寝ているこの女にコッソリイタズラをしてウサを晴らそう、だった訳だ。
その先に睡眠姦があるようなものではなく、紳士の紳士による紳士のための罪のない遊びのはずだった。
明文化こそされていないが、暗にそんな空気を共有していたではないか!?

小僧はニヤリとしながら、剥き出し乳房のアンダーに親指と人差し指を添え、乳首を頂点としてぷるぷると揺すった。
そのまま右は時計回り、左は反時計回りに揺り動かし、双房を打ち合せる程ぶるんぶるんと暴れさせる。
トドメとばかりに、両脇から乳房を救い上げそのまま曲線に手を滑らせ、乳首をギュ!と摘まみながら吊り上げ、手を離した。
おっぱいは跳ねながら元の型に戻った。

「……あんぅ…!」

喘ぎにも熱が籠る。
それは、あからさま過ぎた。
露骨で、直接的で、激しく、そして大胆過ぎた。それは正に性の暴力だった。
俺は勃起した。
フォーゲンも勃起した。
ホワイト・ハット本人も勃起した。
起きないのか!?これで起きないのか!?

「お、オイ。起きちまうんじゃないか!?」

何故、俺が焦って声を上げねばならんのか。
普通ここまでくればこの場から逃げようとする。
しかし、フォーゲンは逆により大胆な行動に走った。
まさかのチキン・レース化現象が発生する。

「フッ……武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり……」

その口が、男を求めてツンとし乳輪から盛り上がった乳首に近づく──。

「馬鹿な!それを許せばお下がりの乳を飲むことになるではないか!」

俺は激怒した。フォーゲンと乳首の間に手を差し入れてガードする。
そこからは戦争だ。
乳を掴み合い、乳首を我先に咥えようと、そのポジション取りに終始する。
三つ巴の争い。体格で負ける小僧が脱落する。
俺は負けん。
こんな小童共に遅れを取ってたまるか!

「……ダメ!」

女が叫び。パチっとその目を開けた。
激震が走った。
皆が凍り付く。

「フッ……」

フォーゲンは流麗な動きで女の身体から手を引いた。
ホワイト・ハットもいつの間にか少し離れた場所に正座している。
俺の手だけがその乳房を掴んでいた。

「…………違うぞ」

掠れた声が出た。
喉がカラカラに乾いている。

「そうです……違います。お姉さんが考えているような事ではないんです……」

責任を感じたのか、小僧が援護に回る。
女は捲り上げられていたチュニックを整え、起き上がると俺達の全員の目を覗き込んできた。
その瞳孔には羞恥と怒りが焔となって唸りを上げている。
ドラゴンだ。
瞳にドラゴンを住まわせている女だ。

「なにが……ちがうの……かな……?」

奴の気が数倍に膨れ上がった。
こいつ!恥ずかしいのを誤魔化す為にも無理やり盛大に怒るつもりだ!!
そんなテンションで思いっきり俺達を殴るつもりだ!!!
受けるか?避けるか?この前のように受け止めて捻り上げるか!?

「お、お前だって悦んでいただろうが……!」
「このスケベ!!!」

振り上げられた手から発せられる圧力は、亀の化け物のパンチを彷彿とさせた。
その手が一瞬光ったように見えたのは気のせいだろうか。
3日4日は顎の痛みで飯が食えないレベルのダメージを予感する。
好きでもない女の乳を揉んだ対価がこれでは割が合わなさすぎる!

「フッ……待たれよ」

その腕を掴んだのは、意外にもフォーゲンだった。

「ガモは兎も角!アンタまでっ!!!」

おい。何で俺は兎も角なんだ?あ?泣かしてやろうか?コラ?お?

「フッ……急を要してな。ケーゴ達が危ないのだ……」

フォーゲンが起死回生の一撃を放つと、女の顔色が変わり、怒りを忘れ説明を求めだす。

窮地は脱された。
この時以来、俺達3人の結束は若干強まった。


◆???

テントがバタバタと寒風に煽られている。
ああ、そうだ。ここは傭兵団のキャンプだ。

外に出ると、雪降る原野で野営をしていた。
焚き木のおかげか、寒さは感じない。

何処かの砦を攻めに行こうとしてるんだっけ?
あれ?援軍に駆けつける最中?
んん?要人護送中だったかな?
……なんだかどれもピンとこない。
冒険者みたいにダンジョンに潜っていた気がする……。

「シャーロット!こちらで前線の様子を報告してくれ……」

ゲオルク様が大天幕から顔を出している。実に厳しくも凛々しい真剣な表情だ。
顔でわかる。おっぱい大好き傭兵王の顔だ。
作戦立案に詰まったのか、傭兵王のまだまだ旺盛な性欲ゆえか、老境故の人恋しさに襲われたか。
私には特定の相手もおらず、こうして声がかかる事がある。

私が生まれる前に伝説の傭兵として名を馳せ、一時は甲皇国の王妃であったエレオノーラ様と世紀の大恋愛を演じたサーガの主人公とはとても思えない。
もっとも、傭兵王サーガの中では、実物よりも美形に描かれ、エレオノーラ様に一途な愛を捧げるが故に、女を一切寄せ付けない、禁欲的で高潔な人物とされているのだから、同一人と思えないのは当然なのだが。

「奥様に言いつけますよ?」
「馬鹿なことを。儂の心は彼女を裏切ってはおらぬ」

身体は?と聞こうとしたけれど、黙って付き従う。
天幕の中には軍議台があり、周辺の地図が張られ、小隊単位の駒が並べられていた。
見知らぬ軍師役の青年が「それではこれで」と引き下がるのを、片手をあげて呼び止め。

「よい。続けよ」

ゲオルク王は重たく響く言葉を告げ、椅子に腰かける。

「え!?」

何時もは必ず人払いをするはずが……。
私はその隣に座る。
皴に塗れた、歴戦の傷跡が瘢痕となっている大きな手が伸びてきて、腰を引き寄せ、チュニックの上から乳房に触れてくる。

「……んっ」

軍師役の青年は恐らく、今味方している陣営から派遣されてきた者だろう。
しかもそれが結構若くてイケメンさんなのだ。
サラサラの黒髪で……目は大きく……ちょっとつり目で……まだ少年の面影もある……あれ?どこかで見たことがある……?

ゲオルク様のデリカシーの無さを怒って、その腕を少し抓った。
傭兵王はそんな事ではビクともしない。寧ろ反撃してきて強めに胸を揉まれる。

「……あっ!」

私の熱を手掌に感じてか、チュニックを捲り上げてくる。
イケメン軍師の面前に乳房を露出させられる。
そのまま、羞恥に私が喘ぎ、我慢できなくなるまで、平然とした顔で、難しい話をするのだ。

「……ですが。これでは……」
「恐らくそうではない……」
「しかし、甲皇軍は……」
「俺が奴ならこう動く……」
「なんですと……では奴らの目的は……」

それにしても、今回の軍議は長い。
その最中、愛撫する手は一度も休まない。

「……あんぅ…!」

まるで2人掛かり3人掛がりで嬲っているようなテクニック。
軍議を邪魔しないようにと、太腿をすり合わせ、仰け反り、肩を震わせ……。

「……ダメ!」

声を上げて…………目が覚めた。

テントの中に身を横たえている。
能面のような表情のフォーゲンが、ガモが、ホワイト・ハットが、私を取り囲んでいる。
服を捲り上げられ、おっぱいをバッチリ晒されていて、あろうことかガモの手が張り付いていた。

「…………違うぞ」

ガモは何かが違うと言っている。

「そうです……違います。お姉さんが考えているような事ではないんです……」

着衣の乱れを直し、起き上がると、謎の連帯感を出している3人の顔を見る。
これはあれか。寝込みを襲われそうになったのか。
自らの尊厳と、心を砕いて築いてきた信頼関係を、諸共に踏み躙られた事への怒りが沸々と湧きあがる。

「お、お前だって悦んでいただろうが……!」
「このスケベ!!!」

ガモの最低な言い訳にカッとなり、奴の左頬を虚空の果てまで吹き飛ばしてやろうと手を振り上げ、フォーゲンに制止される。
心配しなくても全員ビンタだから大人しく首を洗っていなさい!

「ガモは兎も角!アンタまでっ!!!」
「フッ……急を要してな。ケーゴ達が危ないのだ……」
「え……!?」

もう一度テントの中へ視線を巡らす。
そうだ。ケーゴがいない。この3人にケーゴが加わっていてもよかったのに。
危ない?ケーゴ達?つまりガザミも──!?

「何があったのか説明を!」

亀男戦後、床が抜け落下し、皆はここで目を覚ました。
私一人だけが眠り続けている間に、キャンプを構築し、ケーゴがリーダーとなり、ガザミと一緒に帰還の糸口を探しに先に進んでいる──。
そう聞かされ、急ぎ武装するとテントを飛び出す。追わなくては!
半壊している防具は身体にフィットせず、動くたびにガチャガチャ煩い。
走り出すと胸が飛び出してしまい、もういらない!とブレストプレートを脱ぎ捨てた。
必要経費として一番いい鍛冶屋の銀製の最高級品を請求してやる!
そうだ!なんなら魔法の戦斧も!

泥の洞窟を走る。
フォーゲン、ホワイト・ハット、そしてガモも急ぎ荷物を背負って後に続いてる。

『うあアあおあヴァああおああアアああああえああああああほあああああああおおあおおああああ!!!』

何かが聞こえてきた。
音を吸収する泥壁の洞窟なのに、空気を震わせて反響している。
それだけ物凄い悲鳴だという事だ。
恐怖の色が濃い、複数人数の悲鳴が合算されたものだ。

「ケーゴ!ガザミ!!」


洞窟の終わりが見える。
どんな恐ろしいモンスターがいるのか。
私は警戒しつつも躊躇はせず、淡い光の中に飛び込んだ。

       

表紙

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Neetsha