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ノベル『ボルトリックの迷宮』

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◆ボルトリックの迷宮 B?F キャンプ 6日目

ガザミから酒杯を受け取り、もう一度仲間達を見る。

「皆、話は聞いてると思うけど、今度の仕事も明日が最後です」

それぞれの手に杯を持った、ガザミが、フォーゲンが、ケーゴが、そして哺乳瓶をもったホワイト・ハットが頷く。
ガモも火を囲んでいるが、こちらを見てはいない。
モブナルドに至ってはそこに置いてあるだけだ。

「作戦の詳細はもう聞いてると思う」

そこでガザミが手を上げる。
まだ言ってないことがあるらしい。はい、ガザミさん。と発言権を譲渡する。

「この迷宮の最深層にあるパルス・ゴアは直径30メートル程なんだそうだ。この心臓の中に、迷宮の活動エネルギー源である魔胆石(またんせき)ってのがあるらしい」

心臓なのに胆(きも)なんだ?と私は独り言を言う。

「これを取り出す」
「フッ……破壊ではないのか?」
「それはボクが説明しましょう……魔胆石は、深淵の魔力を湛えた超硬度の宝玉です。現世とあの世を繋ぐ事さえ容易いと言われています」

ケーゴが目を輝かせ立ち上がった。

「つまり……スンゲェお宝だって事だ!」
「そうです……コアにはそれらが大小複数散りばめられていますが、伝え聞いているだけでも、酸や毒などの防御機構が備わっている為に、全てを取り出し完全に無力化するのは難しいでしょう。しかし、1つだけでも取り出せれば強大な魔具として使う事が出来るのです」

ケーゴが立ち上がってガッツポーズする。
自分のトレジャーハンターとしての勘が当たった喜びに浸り、やっぱりだ!やっぱり奥に何かがあったんだ!と呟いている。

「つまりアタシ達は、取り出したそれを使い、空間の歪みを正して帰還の魔法で帰るんだ」

私の中に湧いてくる違和感があった。
それは、魔胆石と心臓であるコアのイメージだ。
中心に大きく輝く宝珠があり、それを取り巻く臓器が脈動してるのを想像していた。

「この迷宮は生きている。アタシ達は危険な異物だ。パルス・ゴアにたどり着かせまいとするだろう。そして、その心臓に取りついても、魔物の胆石は簡単には取り出せないだろう」

そこまで言って、ガザミは私を見た。リーダーから〆の言葉を、と言うわけだ。

「私は何があっても、皆を返すつもりでいます」

酒杯を掲げる。

「明日はパパっと仕事を片付けて、あのおデブちゃんから報酬をガッツリ受け取って、酒場で大騒ぎしましょ!」


その後は宴会になった。
明日は明日。今は今。
飲んで、食べて、笑うのだ。

珍しく酒に酔ったガザミが絡んでくる。

「まったく、お前の仕事はロクな目にあわないぜ……」
「明日の夜には、シャーロット様のおかげで大金を得る事が出来ました!って私に土下座してるでしょ」
「たとえそうだとしても、アレだぞ?お前、奢れよ。次の仕事が決まるまで、毎晩ずっと奢れぉ?!」
「じゃあ明後日にはもう新しい仕事取ってきちゃおうかな~?」

目が座り、呂律も怪しくなってきたガザミに身の危険を感じて、そこから避難する。
ガザミは次の絡み相手としてケーゴを選び、その肩を抱く。

「ケーゴ~ぉ!お前はほんとアレだな!」
「な、なんだよアレって!?」

絡み方がオッサンのソレだ。
頑張れケーゴ!とエールを送り、水差しをもってモブナルドの所へ行く。

彼はプルプル小刻みに震えつつ、つっかえ棒に支えられながらなんとか座っていた。
見かけは青年、中身は御爺。
突如として現れた、断ったはずの補給人員であり。
ガチで役に立っていない押しかけメンバーでもある。

聞いた話によると、ボルトリックが日給分だけでも働かせようとしたのか、二層のキャンプ地までの物資輸送を命じたらしい。
道中のモンスターは退治されてると聞かされ引き受けたモブナルドは、あの木馬の罠があった細道で足を滑らせ落下し、ウォータースライダーの様に薄暗いトンネルを滑り降りて、亀男たちの広間に落ちた。
恐怖のあまり腰を抜かして失禁し、一撃で全裸になる程のパンチを叩きこまれ、薄れゆく意識の中で大きな蟻が近づいてくるのが見えたんだそうだ。
そして、廃棄物として巣の建材に使われた……それが事の顛末らしい。

「いつもすまないねぇ……」
「そう思うなら明日はせめて自分の足で歩いてね……」

フゴフゴ言ってる彼の口に水を流し込む。
彼には期待する所が何もない。
足を引っ張られる覚悟で連れて行くほかない。


お次、酒瓶を手に、独りでチビチビやっているガモの隣に行く。
激励というか、懇親というか、これもリーダーの務めだ。

「飲んでる?強姦魔さん」
「……違う……」

ハーフーオークはジロリと睨み返してくるが、いつもの迫力はない。

「明日頑張れば許してあげましょう」

それだけ言って酌をする。ガモは酒を呷った。

「……オイ」
「ん?」
「帰ったら、抱かせろ……」
「……はい?」

思わず赤面した。ガモ相手なのに。
は?え?なんか色々すっ飛ばし過ぎてません?
明らかに酔ってるガモは、その手を私の太腿に置いてきた。
この行動に至るまでの彼の内的世界の推移が分からない。
なんかそんな浮ついたイベント、あったっけ……?
払いのけこそしなかったものの、すんなり受け入れる事など出来るはずもない。

「………何で?」
「フン……お前のせいでだな。俺は死にかけたんだ」

何を言ってるのかと思ったけど、アレだ。亀男達との戦いの事だ。

「アレはガモも納得の戦いだったじゃない。囲まれてるし、連中の目にはガモも標的だったんだから、自衛の戦いでしょ?」
「俺には俺の戦い方がある。だが、子供を守れとお前が頼んできたんだぞ」

言った。確かにそれは言った。
言ったが……。

「それでなんで抱かせろなの」
「女の軽い一言で戦い、敗北の屈辱を味わったのだ…その代償としてだ。俺の命を軽く扱った女への仕置きだ」

ちょっとムッとする。

「……確かに私は股は緩いかもね。お金に困れば「一晩幾ら」もするし。でもねガモ。私はガモの命を軽く扱った覚えはないし、そんな理由じゃ抱かれようなんて思わない」
「フン……正直に言ったらどうだ。汚らわしいハーフオークに身体を許す気はないとな」
「は?」

何を変な所で拗ねているのだこの男は。

「はー……ガモって馬鹿。馬鹿ガモね、ホント」
「なんだと……!」

一瞬にして目の色が変わる。
ガモの女性に対しての、何か普通じゃない先入観が、「女に馬鹿にされる」のを許さないのを感じた。

「私が理由まで訪ねたのは、納得の理由が提示されたら考えようと思ってたからなの。それを分かってないでしょ」
「え?マジで?」

急に軽くなるのやめろ。

「ハーフオークだから?確かにガモはブッサイクだけど。蟻の触角の先ほども好みじゃないけど。白馬の王子サマには程遠いけど。あの人に抱かれたい!なんて微塵も思わないけど」
「貴様ァ……」
「私の一番のパートナーのガザミは亜人だし。酒場にも色々いるじゃない、あの豚さんとか……ほら。のんびりした感じの……僕を食べないで!みたいな顔してる……」
「トンブゥな……」
「そうそう。ソレ。後は、野良猫三兄弟みたいなのとか」
「イコ、リャコ、サコの虎人三兄弟な……」
「あとホラ。看板娘っぽく樽に漬かってる魚人の子とか」
「ヒュドールな……」

ガモってば亜人クラスタに詳しい。

「つまり、亜人だからどうこうだなんて、そんな甲皇軍みたいな偏見ありませんし。その上で、ガモは普通に男性に見えるし」
「マジで?」

だから軽い返事やめろ。

「なに勝手にハーフオークがどーだの拗ねてるんだか」

普段は三十歳代くらいに見えるガモ(19)の顔が初めて年相応に見えた気がした。
最後にもう一度酌をして、立ち上がる。

「……とりあえず。そんな恨みを晴らすためーとか言われて身を預けようとは思いません。まったく、私をなんだと思っているの」

実はそんなに怒っていなかったけど、怒ってる風に席を離れた。
ガモは何もしなかったし、何も言わなかったが、背中に……いえ、お尻に刺さる視線をめっちゃ感じた。

逃げるようにフォーゲンの所に行く。

コミュ障くんのイメージしかなかった彼だが、今では随分頼もしく見える。
酌をするためにすぐ隣に座る。
顔を覗き込む。フォーゲンの身体が逃げるように反る。
うん、コミュ障はコミュ障だ。
そして視線だけはおっぱいを見てる。
そこも相変わらずだ。
まあ、見せてあげてもいいけれど、と彼の器にお酒を注ぐ。

「明日もよろしく、凄腕剣士さん」
「……えっ。あ、ウン。フッ?」

このボケーっとした間はなんなんだろう。
スロースターターっぽいのは分かってきたけど、不思議なふわふわ感があるのだ。
そう、戦いのスイッチが入って本気を出す感じがする。

この日常モードのフォーゲンはどっちかっていうと陰キャ丸出しで……。
受付嬢か誰かが「カッコイイ……」とか言ってたが、イケメンと言えばイケメンなのか。
暫く彼の隣でその横顔を観察しつつ、お酌をする。

ガザミは壮絶にケーゴに絡んでいる。
今にも押し倒しそうな勢いだ。
あ、ズボン下ろそうとしてる。

「うわ!や、やめろよ!」
「アタシを壁に引き込んだ罰だぉら!オラ!出せ!ちんちん見せろ!」

ガモと同じようなこと言ってるぅ……。
ガザミ、相当酔ってるなアレは。
お酒に逃げるくらい、恥ずかしかったに違いない。
うん。気持ちはわかる。アレは酷かった……。

ホワイト・ハットがやってきた。
彼にはお酒は勧められない。
隣の剣士さんもそうだが、この子も予想をはるかに覆す必要不可欠な戦力として、この冒険を支えてくれた。

「ありがとう。二人とも」
「ボクへの感謝は、母乳でお返しくださいね……」
「フッ……では俺も」

「え?」

ホワイト・ハットへの乳は今晩前払いする予定だし、どーせそう言ってくるのは分かっていた。
でも、フォーゲンが「あ、俺も俺も」みたいな事言ったような?幻聴?

「じゃあ、明日の夜にはフォーゲンさんも交えて……」
「フッ……」
「いや……フッ、じゃないから……」

なんなの?ガモに続いてフォーゲンまで。仲間を変に意識して、どんどん体の熱が高まる。
こんなダンジョンの奥地でモテ期発動?
残りの酒瓶を押し付け、腰を上げて一度自分のテントに戻る。


「実は私がそーとー魅力的だとか……」

言うだけ言ってみる。
そして、言ってる自分が一番わかってる。
本当に器量良しなら、今ココで冒険者なんてやってない事を。

「チョロそうに見えるって事かな……」

それなら思うフシもある。変なのに目をつけられたり、喧嘩売られたりはしょっちゅうだ。
なにしろ、子供たちにまで誂われるのだから。

様々な角度から鏡を覗き込み、自分にチェックを入れ、髪を梳かす。

水拭きはしているけど、お風呂にだって入れてない。
応急的に繕った衣服を脱いで、ホワイト・ハットに吸われちゃうであろう乳房もちゃんと綺麗にして、気になるVラインをもう一度拭く。

ふと鏡に映る裸の自分と目が合う。
見慣れた顔なのだけれど、あれ?私ってこんな顔だったっけ?と思う瞬間もある。

冒険に出た仲間に求められる事は珍しくない。
それを悲しく思う自分がいると同時に、嬉しいと思う自分もいる。
そこが最も厄介だ。
「高嶺の花」に生まれたかった。

「ねーちゃん助けて!ガザミ……が……うわっっ!?」

ケーゴが叫びながら入ってきて、悲鳴をあげる。
彼は下半身何も身につけておらず、股間を両手で覆っていた。

「きゃああ!?」

悲鳴に悲鳴を返し、チュニックを拾い上げて肌を隠す。

ごめん!とか言って即出ていくと思ってたケーゴが、そこに立ち尽くして、私を見ている。

「……ぁ」

確かに何かを言おうとしている。
何か凄く大事なことを言われるのではないかとドキドキしてきた。
きっと勇気がいることなんだろう!きっと大丈夫!言っちゃえケーゴ!と心の内で応援する。

「……ぃ」

「補助」がいるだろうか。
意を決して、私はできるだけ自然に、可能な限り偶然を装って、抱いていた衣服をずらし、彼に乳首ギリギリまでおっぱいを見せる。

「……ぅ!」

頑張れケーゴ!

「……ぇ」

私の方が焦れてくる。これ以上サービスしたら、年下の思春期ボーイを誘う淫乱女だ。
お願い!取り合えず何でもいいから言って!出来れば誉め言葉とかそっちの方向で!

「……ぉ」

ああんっ!チラチラ見ながらも、もぢもぢ始めてるぅ!
私からか。
年上の私から譲歩するべきなのか。
これじゃもう本当に若い子の性欲に付けこんでお誘いかけてる痴女じゃーん!
脚か!脚を出せばいいのか!
再び、できるだけ自然に、可能な限り偶然を装って、脚の付け根の下腹あたりまで、もうVラインギリッギリまでを彼に見せた。
ケーゴが生唾を飲んだ音がここまで聞こえた。

「……ねーちゃん、俺……」

その言葉に、今度は私が生唾を飲む。

「帰ったら…「おっ!ココにいたかりぁケーゴォ~!」

ガザミがケーゴの後ろから覆い被さった。
それは熊が獲物を襲う光景と瓜二つだった。

「ほら!アタシにちんちん見せてみろ!」
「ぎゃあああああああ!!!」

この出来上がり方は尋常じゃない。
ガザミ100%中の100%だ。
いえ、ガザミ120%かもしれない。

ガザミ120%は、ケーゴの股間を弄り、手を退かそうとする。
ケーゴが予防接種に怯える子猫のように本気の悲鳴を上げ、右腕を外されて左腕で隠し、左腕を外されれば右腕で隠す。
お盆こそないが、股間を隠す宴会芸のようだ。
勿論、さっきからちょいちょい見えている。

「ちょ……!ホラ!やめなさいガザミ!本気でイヤがってるでしょ!」

ケーゴくんのちんちん見ながら咄嗟に止めに入る。
ガザミがギロリとこっちを見た。
あ、これヤバイ。目がオカシイ。

「あ~?シぁ~ロットぉ~……裸になって、アレだなぁ?ケーゴのちんちんと寝ようとしてたんだらぉ?」
「ち・が・うっ!着替えていたら、ガザミが虐めるからケーゴが逃げてきて……」
「ぜ~んぶおまぇのせいだらぁ!」

ガザミ120%が私の背中に覆いかぶさってくる。
酒臭さが物凄い。
そして力の加減が効いてない。
自棄酒煽りまくって狂戦士化しているのだ。
抱きしめていた衣服をポイされ、お腹を揉まれて悲鳴を上げて体を丸める。
手でケーゴに「あっちいってて」の仕草をするけど、彼はそこで私達のじゃれあいを見ちゃってる。

「なにカワイコぶってんだらぁ?」
「あ!」

後ろから膝を抱えるようにして持ち上げられる。
グッ!と足を広げられる。
所謂、子供におしっこさせる時の格好だ。
こっちも本気で腕とか脇腹を叩き返すけど、ビクともしない。
ガザミ120%はあらゆる意味で亀男クラスだ。
そのまま、ケーゴの方に向かせられた。
両手でお股を隠す。

「ほれほれ!」
「~~~っ!!!」

恥ずかしいなんてもんじゃない。
固まっている私とケーゴを見て、ガザミはぎゃはははは!と笑う。

「ガザミぃ!!!いい加減にぃ!!!」

羞恥を誤魔化し無理やりに怒気を吐く。
ふー!ふー!と息を乱しながら振り返り睨みつける。

「……」

ガザミの表情が読めない。
酔いが冷めてきて、我に返りつつあるのかもしれない。
もう土下座じゃすまさないからね!
明日は私を乗せたソリでも引いて走ってもらおうか!

「……ほら。下ろしなさいよ」

自分で降りようとしても、完全にロックされてて身動きが取れない。
みじろぎしてもう一度ガザミを振り返り見上げる。
その口元がニタリと歪んだ。
背中に冷たい汗をかく。

「……ガザミっ!ストップ!」

制止を聞かず、狂戦士ガザミはそのままダダダ!と駆け出した。
飛ぶようにテントを飛び出し──。
踊るようにキャンプファイヤーの元へ──。

「にゃはははは!オラ!男共ぉ!リぃダぁーからの差し入れだぞぉ?」

私は、皆の前に連れ出された──。



焚き木が大きくパチン!と弾けた。



◆ボルトリックの迷宮 B?F 6日目

揺らめく炎を隔てて、4人の男性陣が正座している。

必要以上に真剣な顔付きのケーゴ、フォーゲン、ガモ、ホワイト・ハット。
ガモは何故かあのキカイを持ち出して、しっかり肩に乗せている。
私はそんな彼らの前で、全裸で、ガザミにとんでもなく恥ずかしい抱えられ方をしていた。
皆の顔が直視できない。
でも目を瞑ると肌が敏感になり過ぎて凄いことになってしまい、目を泳がせて遠くを見るしかなかった。
この状況はなんなの?
淫夢だってここまでぶっ飛んだのは、そうそう見れるもんじゃない。

「ホラ。手をどかせシャーロット……最高なヤツができないだろ……」

回らない呂律は何処へやら。耳元、攻めっ攻めの超ロマンティックハスキーイケボで囁いてくるガザミ。
基本的にカッコイイ彼女には、女性ファンもいると聞く。
今初めてその女子の気持ちが、ほんのちょっぴりだけど分かった程の破壊力。
それと何?最高なヤツって。
焚き火に煽られてる所為か、身体が芯まで熱くなって全身にしっとりと汗をかく。
眼の前にいる男性は皆、少なくとも私には多少~なりとも好意があるっぽく、全てを見たからと言って、甲皇軍の連中のように指をさして、卑猥な言葉を吐きながら大声で笑うことはないだろう。信じてる。
私から見ても絶対の絶対に肌を見せたくないようなダイッキライな相手はいない。
たったの5日前は、ガザミ以外は一緒に仕事をしたこともない面子で、ちゃんとパーティーとして機能してくれるか不安だった。
でも、今は寧ろみんなに好意を持っている。また一緒に冒険したいと思う仲間達だ。

だーかーらーといって(だからこそ?)、お股を曝け出すなんてできない。
リーダーとしても、節度あるダンジョン攻略をプロデュースしなければならない私が風紀を乱してどうする!

「ガザミっ……!」

「いいからホラ……スゴイヤツなんだって……」

ゾクゾクするようなイケボ攻撃が続く。
男性陣は何も言わない。一言も発っせず、お利口さんに状況を見守っている。
それでも、その視線だけはねっとりと肌に絡みつく。
そんな放置プレイの末に、じわじわと「最高にスゴイヤツ」が気になりだして、チラリと男性陣を見る。
ケーゴ少年は、恥ずかしそうにしつつも食い入るように見入っていて、フォーゲンとガモの青年コンビは、平静を装いすべての表情を消し去っており、ホワイト・ハット幼児(?)は、指を咥えておっぱいを見ていた。

期待の視線に晒され続けた身体はすっかり上気して、羞恥の上にある多幸福感が、翼となって身体を浮き上がらせる。

こーゆーことをやっちゃうから、チョロく見られるのだ。
こーゆーことをやっちゃうから、誰一人本気では求めてくれず、数回抱かれたらポイになるのだ。
こーゆーことをやっちゃうから、人生の伴侶には選ばれいのだ。
冒険者仲間は言うだろう「あの人ちんちんに弱くて、直ぐ寝取られそうだから遊び相手にしか出来ないよね」と。←
ケーゴのお父様やお母様は言うだろう「お前みたいなちんちんにだらしない女は、うちの息子には必要ない!」と。

「はぁ……」

自分を安売りしてでもチヤホヤされたいのかもしれない。
絶望的な性癖だ。

体に溜まった熱を逃がすために吐息を漏らし、私は手をゆっくり上げて陰部を晒して、ガザミの腕に縋り付く。
男性メンバーからの視線が突き刺さる。
炎に炙られ視線に炙られ、触られてもいないのに性の快楽がお腹を突き上げて脳まで届く。
羞恥が全部快感に変換されて、アクメに達する。
もう一度男子達の顔を盗み見る。誰一人、苦笑いをしてたり、汚らしいものを見たと顔を顰めていたり、グロイものを見たと引いていたりもしない。
頬を染めて、興奮してくれている。
ガモに至っては何故か優しい顔をしていた。

「んんっ……!」

背筋から震える。
ガザミが言ってた「最高にスゴイ」って、コレ?
確かにスゴイっ。気持ちいいっ。視線に抱かれて、淫感に背中を反らす。
皆の前で、愛液を漏らしながらの生殺し。めちゃくちゃにしてと叫びたくなって唇を噛む。

「ガサミ……っ!」

これ以上は無理だと、
縋っていた腕に爪を立てる。
その時、ガザミが動いた。
膝裏から手が下り、そのまま下腹に添えられ、左右からぐっと大陰唇を掴まれる。

「あっはあああぅ!!」

びくんと体が跳ねた。期待してはいけないのに、期待感が大きく膨らむ。
マッサージされるように左右に動かされて、項から足先までビクビクと痺れる。
皆が見てる前で、ガザミに!?


「ハイ。ワタシハシャーロット!」


突然、亜人女戦士が裏声みたいな変な声を出した。
大陰唇を引っ張り、左右にパクパクさせながら──。

「アシタハ ミンナデ カエリマショ?」

──これ……腹話術のつもりだ!?
最高にスゴイヤツって、この最低なオヤジ宴会芸だったのだ。
自分でやって自分で大ウケしてるガザミ。
私が泣き出したからか、男性陣が若干引いていた。

トコトコと前に歩み出たホワイト・ハットが杖を伸ばしてくる。
杖はそのまま私の身体の上空を通過し、ガザミの額に添えられた。
状態異常解除魔法の淡い光が狂戦士を包む。
その光は身体に染み入るように消えて一拍の後、ガザミは手を震わせ、汗をダラダラと流し始めた。

「……以上。ガザミとシャーロットでした……」

まったく必要のない挨拶の後、翔ぶが如くテントへ逃げ帰った。

「悪い!!やっちまった!!!」
「馬鹿!!ガザミのアホー!!」

ガザミは額をガンガンに地に打ち付ける程の猛烈な土下座をし続ける。
私も怒り心頭だ。
ボカボカとその頭と言わず肩と言わず背中と言わず殴りつける。
外骨格だから手のほうが痛い。
そこにあった金タライでも殴る。
頭に血が上りすぎてて、オーバーキル気味に罵倒して叩いたが、ガザミは一つも反論せずにすべてを受け止めた。

「はぁ……はぁ……」

怒りのボルテージが下がってくると、シーソーみたいに羞恥が浮上してきて、その場に顔を伏せてうずくまった。

「もうやだ。リーダーはガザミやって」

最終作戦が明日に迫っているのに、職務放棄だ。
なんかもう帰れないでも良い気がしてきた。
死のう。皆で。

「……帰ったらアタシが奢るから」

肉と酒が全てのガザミにとっては最高レベルの罪滅ぼしだろう。もう少しは慰めてもらおうと思って、まだ許さないでおく。

「……肩も揉む」

うーん。ガザミじゃこれ以上は望めないか。
酒場でふんぞり返る私の肩をガザミが揉んでいる……痛快な光景ではある。うん、歌も唱わせよう。

「……報酬半分やる」

それはガザミが命がけで戦った対価なので、取り上げる訳にはいかない。

「……明日は絶対魔胆石を掴む……」
「よろしく」

これ以上虐めると、アタシが死んでも皆を帰す!とか言い出しかねないので許すことにした。
あ、そうだそうだ。一つ大事なことを忘れていた。

「そしてガザミには最重要ミッションがあります」
「お…おう」


テントから顔を出すのは相当な勇気が必要だったが、明日に備えてちゃんと睡眠をとらせて、コンディションを整えさせなければならず、その為に宴会の終了を宣言して就寝を勧める業務が残っていた。

「はい。皆!宴はここまで!明日に備えて体を休めて!」

視線が痛い。
しかし、流石にイジってくる奴はいない。
寧ろバツが悪そうに、赤ら顔を伏せてもそもそとテントに帰っていく。

「ホワイト・ハットはこっちに来て」

魔法少年を手招きで呼び止め、ぴょんぴょん跳ねる子の手を引いて、ガザミのテントに行く。

「本日のおっぱい係。ガザミさんです」

二人を引き合わせ、それじゃ!と外に出た。

『ちょ!出ないぞ!?母乳なんてアタシは出さないぞ!?』

少し冷えてきてる気がして、星空っぽい天井を見上げる。

『おっ!おおぅ……ふ!ふぁ…!?』

視界隅の泥貯まりに、何かが浮かんでいるのが見えた。
近寄ってみる。

「亀男達と戦ったホールの底が抜けて、ここにいるんだから、コレが落ちててもおかしくないワケか……」

『ふぉ!?あ!あ!あっあ……!!』

私は身を屈め、泥の中からそれを引き出し、拭って中身を確認して、懐に仕舞い込んだ。

『おっおう!あう!あ……んっ!あぁ!イク!イクーーーっ!!』

ガザミの喘ぎ高まっていくテントに向かって、うんうんと頷いてから塒に引き返した。

       

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