マネージャー

ライブハウス。
これもひとつのヴァーチャル空間なのだが、要はオンラインゲームをやるような感じで
自分のキャラを登録し、擬似的に音楽が聴けたり見たりすることが出来る。
専用サーバーへ接続すれば地下に居ながらも
様々なミュージシャンやバンドのライブが擬似体験出来る。

彼女は恐ろしくなるくらい音楽を聴いていた。


はみ出した音

常軌を逸した音

雑音

ノイズ


忌み嫌われるような音を選び、それを好んで聴いていた。
そういった音ほど慈しむような気持ちで受け入れながら。
普通はこういった音は耳を塞がれ、嫌われる。
だが、彼女はそういった音も全て許したいと言った。

許される音と許されない音。
本来、そんなふうに音は分けられはしない。
まるで女神のような考えだなと思った。


俺の居る地下世界ではあらゆる雑音の許されない世界だった。

雑音の無い世界。
彼女は雑音だらけだった。


「私、マネージャー探してるの、あなたやらない?」

彼女はチョコレートをかじりながら気だるげに俺に言った。

「え?」

「マネージャー、まぁ、主にスケジュール管理とエフェクター運びだけどね。」

「俺が?」

「あなた、いつも私のライブ見に来てくれるから丁度良いと思って、どう?チケット代タダにするわよ」


そして俺は彼女のマネージャーになった。