プロローグ

それは余りに突然だった。

ゆっくりと緞帳が上がった瞬間、それは起きてしまった。



目の前に広がったのは、ステージ狭しと律儀に並ぶ大量のアンプ、
いや、【アンプの壁】であった。
1台、2台とかそんな生易しい次元ではない。
あまりの多さに思わず数えてみたが…8台もある。
ライブハウスに備え付けてある全てを総動員したかのような数である、
というより、実際あるだけ持ってきたのだろう。


その圧倒的な光景に絶句した。


呆気に取られ、茫然としていたら両端から門番のように佇む
巨大な黒スピーカーから轟音が放たれ、果てしなく鳴り響いた。
と、同時にその音を追いかけるよう幾重に重なり合うカラフルな照明と
怪しげに動き出すレーザーが眼球へ容赦なく突き刺さる。
すべての空間をどこまでも凝縮し、ひたすら埋め尽くさんとばかりに、
ありとあらゆる神経や感覚を遮断するような、



壮絶な音











阿鼻叫喚







音の塊…!!!



それを無慈悲に全て受け止めなくてはいけない健気な両耳。
そんな小さな穴から脳髄へ否応にも到達し揺らし続けられても、
現在進行形でこんな惨状を強いられているにも関わらず、
僕はその場から逃げる事も、ましてや動くことさえも出来なかった。

―…音楽?音楽だって?これはショーと偽った拷問の間違いじゃないのか?

そして、そんな爆撃のような音を鳴らし続けるヤツは、
先祖から末代までの恨みつらみルサンチマンを一挙に引き受けてしまった
極悪非道なテロリストの首謀者かと思ったが、我が目を疑った。


美しく輝く短い白髪と華奢な身体を震わせながら、
たった一人の少女が真っ黒なギター(いずれそれがジャズマスターだと知る)を
ひたすら無心に掻きむしっていた。
その痛々しいまでに姿が、地面を揺るがすような轟音とのギャップが、
照明と相まい、ただひたすら神々しく見えてしまった。

それが彼女との最初の出会いであり、







今に続く俺の地獄の始まりだった。
sage