自主企画始動

どうして彼女はこんな俺なんかに話してくれたんだろう。
マネージャーだからか?未だに分からない事ばかりだ。
一応、仲間だと感じてくれたからだろうか。

スタジオに行くと、彼女はいつも通り振る舞っていた
オススメのCDを紹介する感じでサラっと告白された。

「私、あと数年しか生きられないんだ。」

「…は?」

意味が分からなかった。文脈の流れとか関係なく、アイツは突然言い放った。

「だから、後悔したくないんだ。大変だと思うけど、
最後までマネージャーやってくれる?」

彼女のあの時見せた表情を俺は忘れる事なんて出来るのだろうか。
野外フェスにエントリーしたがいいが、音楽性がこういうもんなので
なかなか票が入らない。つまりこのままじゃ参加出来ない。

今までの彼女は驚くべきほどマイペースだった。
だが、次第にこのままではいけないという焦りが見えてきた。
自分のやりたい時にやっていたらダメだ。
なので出演してくれる場所や機会があれば全て出演することにした。

ありとあらゆるライブハウスに出演し、ありとあらゆる対バンとも共演した。

彼女の音は本当に少ないけれど、きっと届くはずだと思いながら、
俺は営業活動やイベントの宣伝を必死こいてやった。
そして、それらの活動を通して、少しずつ共鳴する仲間を見つけ、
そういう人らを集め、初めて自主企画を打つことにした。

場所はいつも馴染にしているライブハウスがあったので、そこにした。
そこは彼女が最もリラックスしていつも以上の
パフォーマンスや演奏が出来る所だった。そして何よりPAや音響が
他のライブハウスより抜群に強烈で、この界隈では轟音の聖地とも呼ばれていた。


彼女に残された時間は少ない。けど、このまま何もせずに終わりたくない。
100人キャパの小さいハコだが、大きな一歩になると確信し、彼女と俺は進み始めた。




残り僅かな寿命を必死に削りながら。
sage