Neetel Inside ニートノベル
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ウドン西川さんが貸してくれたお部屋は、小さくて真っ黒なお部屋だった。

「全部真っ黒、この学校を作った人は黒色が好きでござるか?」
「昔々、真っ白な悪霊がこの町に現れて悪さしてたそうでゲスが、暴れている内にお腹が空いて黒いうどんを食べたでゲス。その時に汁が跳ねて体が黒くなってしまい、大人しくなったとか…。我が校はそのお伽話が好きで全部黒色にしてるでゲス」
「凄い話でござるな!」
「ゲスゲス!じゃあ何か困ったら、この西川か隣の部屋の倉田くんに相談するでゲスよ」

ウドン西川さんは忙しいらしく、学校での用事が終わったらまた何処かの地に行くそうだ。
拙者はここに来るまではずっと同じ街に居たから、そういうのも良いなと思う。

…ところで、この部屋には何があるのだろう。
たぬたろうのご飯、机、布団、冷蔵庫、お風呂にトイレ…、一通り何でもあるみたいだ。

トントン

「こわいちゃん居ますかー?」

この学校の人はウドン西川さん以外は知らないけど誰だろう。
玄関を開けると知らない人が、エビ天を持ってニコニコ笑ってた。
拙者がタヌキのたぬたろうと常に一緒な様に、エビ天を持ったこの人は恐らくピョンピョンエビ天組の人だろう。

「初めまして、隣の倉田です。一緒に学校行こう」
「倉田さん、初めましてでござる」

ウドン西川さんが拙者のことを見てくれる様に頼んだらしく、今日一日学校で共に過ごしてくれるそうだ。
学校の場所は分かるけど、何をして良いのやらサッパリ分からなかったので大助かりだ。
授業も組ごとに違うというものでは無く、みんな同じものを受けるとの事で倉田さんと居れば問題ないだろう。

「みんなこの部屋で授業を受けるんだよ」
「ところで、黒うどん魔導学校って何を学ぶ所でござる?」
「色々な座学や実習とか…、たまにうどんの食品サンプルを作ったりしてるよ」
「食品サンプルでござるか…。いや、もう拙者には関係の無いこと」
「どうかしたの?」

…今日の授業は食品サンプル作りで、拙者には上手く作ることは出来なかった。

「これは、不味そうでござるな…」

だがそんなサンプルでも、たぬたろうは気に入ってくれたみたいで完成後ずっとパチパチと手を叩いてくれた。

「たぬたろうは優しい良い子でござるな」
「…」

出来そこないでも、気に入ってくれた者が居るなら拙者は嬉しい。
サンプルは先生に提出すれば、今日の授業はお終いとの事なので早く渡してしまおう。

「良いでヤンスよ、それ」
「本当でござるか、吉田先生?」
「流石、ウドン西川が見込んだ生徒でヤンス」

先生がそう言うのなら、あの出来そこないのサンプルも喜んでいる事だろう。
拙者は倉田さんと一緒に食堂でご飯を食べながらそう思った。

「作ったサンプル凄く恰好良かったよ、明日は街に遊びに行こう」
「ござる!」

前の街、拙者は新しい場所で上手くやっていけてるよ。

       

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Neetsha