Neetel Inside ベータマガジン
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「なーるほーどー」
猫型の浮遊する座椅子というか柔らかそうなふかふかの、
ソファーに座ってほおづえ突いてる女性、
名前はアルステーデ・アズールといったか?

「それにしても内密な話ということで
 二人きりになったわけだけど
 存外、よくある話という感じだったわね」

「……よくある調査報告だと?」

「なんであなたが無事だったのか
 そもそも爆発なんてあったのかしら?」

魔法使いにとって仲間と共にした冒険は、
そもそも第三者やなるべくだけ背後に、
利権を抱えた団体の介入を避けたいという具合だった、
が、こうして一人生き残って帰ってきた時、
話の裏付けも何もかも足りていないのは確かだ。

「まあ実際、皆、自由に報告してるし、
 中には与太話の類もあるってことで、
 私としては嘘でも本当でも、
 ミシュガルド探索の役にたつなら使わせてもらうわ、
 そして
 まだレポートとしては体裁が整ってないようだし、
 とりあえず生物調査の記録として、
 発表を手伝ってもいいわ、
 生物の危険度の審査もこちらでやるし」

正直、魔法使いにとっては今回の冒険はここまでだ、
自分ですらどうやって生きて帰ったのか、
とりあえず山一つ吹き飛ばした爆発に巻き込まれて、
気づいた時には高度8000身の丈尺の上空にいたという具合で
そこから魔法のローブを滑空用に変形させて、
夜の地平線を町の明かりを頼りに夜明けまで飛んで、
やがて魔法帽を膨らませてゆっくりと降下した。
ところまではなんとか記憶してるが、
その後の陸路はほぼほぼ馬車やトカゲに揺られて、
ここまで運ばれてきたという次第だ。

合同調査報告所には本来あまり話をしたくなかったが、
ミシュガルドには想像を越えた存在が明らかにいると、
なってはもはや手段を選んではいられないだろう、
すぐにでもメフエを単眼の魔法使いの存在を、
そしてノッケルトル、
あの強大な存在はミシュガルドに混沌をもたらすだろう。

「ところで、魔法使いちゃん
 あなたは
ミシュガルドで冒険者登録をしないのかしら?」

「え?」

「あなたから聞いた話だと
 十分な実力がある魔法使いを無謀な冒険に
 出すのは人類の損失と感じるから
 是非、生き証人として
 後続の冒険者たちを導いてほしいのよね 
 私としてもあなたの話は
 考古学的な価値があると思うから」

別に断ることはないだろう、
何にしても名もなき冒険を
今後も続けるつもりは無い。

「そうですね
 隊長たちの安否を
 知るためにも」

こうして魔法使いは

「名前は何て言うの?」

「シャウル、シャウル・マファラートです」

再び冒険を始める。

名もなきところから名のある旅へと。

今は、
魔法使いシャウルはアルステーデの用意した宿に、
想像だにしない次の舞台を待って。

「アルステーデ様、話さなくて良かったのですか?」

「んーそうね」

そう言ってアルステーデは手に資料を持って、
そこには単眼の女の写し絵があった。

「メフエ・マナカマ
 登録に来るとは思わなかったけど
 何にしても二人はうまく管理しなきゃ
 いけないわね」

何の狙いがあるにしても、
人材は多いことにこしたことにはない、
特に未知の存在であふれているミシュガルドにおいて、
ものの真価を見ただけで理解する魔眼の価値は大きい。

「爆発自体は近隣を探索していたものからも
 報告があがっているし
 生き証人が二人もいるとなれば、そうね
 何にしてもシャウルはかこっておけるでしょうから
 所属に関してはスーパーハローワークでいいわね」

「彼女はアルフヘイムの出では? 魔法使いですし」

「違うでしょうね
 人間であそこまで魔法を使えて
 名無しでやれる存在がいるとしたら
 噂に聞く隠者の島の住人かもしれない」

「隠者、
 血筋に頼らない技術のみの純粋な魔法使い?」

「隠者の島の出身なら
 メフエの狙いを探るのに
 うってつけではある
 まあおいおい調べていきましょう
 時間はたっぷりあるのだから、ね」

かくて調査の結果として、
ミシュガルドの遺産なるノッケルトルまで話が
及ぶことになったが、
よく考えたら危険度の話とかあんまりしてなかったので、
またまとめておこうと思う。

       

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