「イチロウ、お前今日でクビな。さっさとこのパーティーを出て行ってくれ」
いつもの酒場に呼び出され、パーティーリーダーのマサヨシから告げられた言葉に、俺は唖然とするしかなかった。
「ま、待ってくれ、なんで俺がクビなんだ?」
俺のジョブはニート、世間では役立たずのごく潰しの職業だと疎まれていたが、それは周囲の人間が見る目がないだけであって、俺は俺なりに一生懸命頑張っているつもりだった。
「戦闘に参加するわけでもなし、皆の荷物を背負うでもなし、いつかジョブチェンジするって言っておきながらジョブチェンジする気もなし、役に立たないどころか負担ばっかし増やしやがって、もううんざりなんだよこっちは!」
「い、いや、ジョブチェンジする気は満々なんだ、だけど俺に合うジョブが無くて……」
「ジョブを選り好みできる立場なのかお前? いい加減にしろよ?」
いい加減にしろって言いたいのは俺の方なんだけどな。
ギルドに行っても斡旋される職業は、戦士や盗賊とかの地味な割りに重労働な低級ジョブばかり、俺は勇者とか賢者とかになりたいんだよ。
それなのにギルドの奴ら、低級ジョブから経験と実績を積んでからじゃないと上級ジョブにはジョブチェンジ出来ないとかぬかしやがる。
確かに今の俺には魔法や剣のスキルは皆無だ。だけどな、俺には秘められた才能があるんだよ! いつか才能が開花するときの為に、せっかくお前らに俺の将来を投資させてやっているのに、それが理解できないんだろうな。
「ああ、わかった、辞めてやるよこんなパーティー! いつか俺が勇者になってから泣きついてきても遅いからな!」
そう言い捨てて、俺は酒場を出ていった。