Neetel Inside ニートノベル
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 ◆四月十二日・登校中

「透クン透クン」
「また貴方達ですか」
「どうしたら私の世継ぎになってくれるのかね」
「……そもそも吸血鬼なんてものが本当にいるのかどうかが疑わしいんですよね」
「目の前にいるじゃないか」
「そう言われても、貴方は……セレスさんと言いましたっけ。セレスさんは、見た目には普通の、白人の女性ですから。見た目で分かるフラムさんと違って、単に、自分は吸血鬼だと言い張っているだけの可能性もありますし」
「むう……そこまで言うならば仕方ない。おいフラム、例の物を」
「かしこまりました。十字架です」
「ぎゃー!」
「何やってんですか」
「ど、どうだ。十字架に弱いんだから吸血鬼だろ?」
「そう言えばそんな事言ってましたね……他にはにんにくも嫌いで、日光も嫌いなんでしたっけ」
「しかも長時間血を飲まずにいると、イライラして眠れない!」
「弱点だらけじゃないですか。ますます吸血鬼になんてなりたくないですよ」
「ですよね」
「おいフラム! 貴様は相変わらず、どっちの味方なんだ!」
「ではご主人様、吸血鬼の長所をお話になられてはどうでしょう」
「ん、そうだな……歳をとらなくなるぞ。永遠に美しい姿のままだ。すごかろう?」
「という事は、セレスさんも実は相当な年齢なんですか?」
「こう見えて500年は生きているBBAでございます」
「誰がBBAだ!」
「フラムさんも同じくらい生きてるの?」
「いえいえ、スライムは人間と同程度の寿命しかありません。ですからワタクシはまだ、15歳でございます」
「へえ、それでも僕よりは年上なんだ」
「左様でございますね」
「それにしても、スライムって初めて見たよ。本当にいるんだね」
「おい」
「モンスターはスライムに限らず、人の目に触れてはならないという決まりがありまして。今回のような事は稀なのでございます」
「じゃあこんな堂々と出てきたら、他のモンスターから怒られるんじゃないですか?」
「ええ、普通なら怒られるでしょうが、セレス様絡みとなれば、他のモンスターも黙るしかないようでして」
「へえ」
「お、おい、二人とも……さっきから私を無視してないか?」
「それって、セレスさんが偉いから?」
「いえむしろ、面倒ごとに関わりたくないからだと」
「ああ、なるほど」
「おい、無視するなって」
「まあ、いざとなれば人の記憶を操作するくらいは造作も無いですが」
「それは魔法みたいなもの?」
「そうですね」
「それはちょっと興味あるなぁ」
「お、おい……フラムに透クン……」
「もっと知りたいな、フラムさんの事」
「あぁ……いけません、ワタクシはご主人様の忠実なるしもべ……でも、ワタクシ日本に来たら、ぜひ日本の果物を食してみたいと思ってました」
「そういう事なら家に来ればいいよ。確か、冷蔵庫にイチゴがあったと思う」
「う……うわ~~ん! ば~かば~か!!」
「……あ、泣きながら帰っていった」
「少々やりすぎましたかね」
「…………くくくっ」
「竹内様?」
「ん、ああ……大人の女性が泣いてる姿って、いいよね」
「……え?」

       

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