Neetel Inside ニートノベル
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 ◆五月二十三日・某所

「――その話、マコトじゃな?」
「はい」
「ふ、ふふふふ……そうか、遂にあやつも、世継ぎを決める時が来たというワケか」
「しかし九尾様、何もここまで待たなくとも、吸血鬼の一人や二人……」
「たわけめ。あやつが普通の吸血鬼なら、言われなくともそうしておるわ」
「は……と、言いますと?」
「……ふん、お主にこれ以上の事を話しても詮無きこと。とにかく、あやつが狙っておるその少年の事を、もっと詳しく話すがよい」
「は……」


 ◆同日・中学校の体育館

「短パンから覗く太もも……躍動する筋肉……飛び散る汗……実にけしからん!」
「そう言いつつ、目に焼き付けようと必死ですね、ご主人様。さすがの変態っぷりでございます」
「それにしても、なんで最近の男子生徒はブルマを履かないのだ!」
「昔から履いてませんよ、多分」
「私がその辺の事を決める係りの偉い人だったら、男子は全員ブーメランパンツで体育をさせるのに!」
「喜ぶのはご主人様だけだと思いますが」
「ちなみに女子は全員、サウナスーツでも着ておくがよい。痩せたい痩せたい言っているのだから、ちょうど良かろう」
「これからの季節、沢山の女子生徒が倒れるでしょうね」
「きゃー! きゃー! がんばってー、竹内く~ん!」
「……しかし、随分と女子に人気があるじゃないか、透クンは」
「それはまあ、あのルックスですから」
「と言うかフラムよ。透クンはインドア派だと言ってなかったか?」
「ええまあ、当人もそう言ってましたね」
「それにしては……」
「また竹内君のスリーポイントが入った!」
「すごーい!」
「スポーツも得意みたいだな」
「所謂、何でも出来る人だったわけですね」
「うむ。益々気に入ったぞ。少々黄色い声援が耳障りではあるがな」
「……って言うか、おばさんさっきからうるさーい」
「ほんとー、ってか、不法侵入だよねー」
「……おいフラム。おばさんっていうのは私の事を言っているのか?」
「それはそうでしょう。この中で一番の年長者ですから」
「しかし、貴様も私をよくBBA呼ばわりするが、見た目的には私はまだ20代くらいのはずだぞ?」
「ワタクシの場合は精神的な部分を指しています。しかしながら彼女達の場合は、見た目の部分だと思います」
「どっちにしても失礼な話だが……」
「ちょっとー、何をぶつぶつ言ってんの~? さっさと出ていってよ、おばさん」
「大体、おばさんなのに竹内君に馴れ馴れしいのよねー」
「授業中にも勝手に入ってくるし、正直迷惑なんですけどー」
「……なんだろうな、フラム。この、イラッと来る感じは」
「とは言え、正論ではありますが」
「貴様はどっちの味方なのだ、まったく。あ~……おい女ども」
「女どもとか言われたー、このおばさん超失礼じゃない?」
「ってか、警察に通報しようよ。明らかにこのおばさん、不審者だしさぁ」
「……いちいち人をおばさん呼ばわりするな」
「だっておばさんじゃーん」
「おばさんじゃないつもりなんだー? 受けるー」
「……あのなぁ。私は不老不死だぞ? つまりいずれは、お前達の方がおばさんに相応しい容姿になるわけで」
「でも今は違うじゃーん」
「ってか、吸血鬼とか言ってるんだって、このおばさん。マジやばいよねー、頭おかしいんじゃない?」
「……(ぷるぷる)」
「ご主人様、ここは冷静に……」
「いい歳して、現実と空想の区別つかないの~? お・ば・さ・ん」
「……闇魔法、アブソリュート・カタストロフ!」
「なっ、ご主人様! 冷静に!」
「え、え、なに、地震~!?」
「ひっ、お、おばさんから何か、黒いのが!」
「きゃー! きゃー!」
「最早許すまじ! 塵も残さず消え去るがよいわ!」
「きゃー! きゃー!」
「ご主人様! ご主人様! だめです、そんな大魔法を使ったら、この国が消し飛びます! ご主人様!」
「ふははははは! はーっはっはっは!!」
「うるさい」
「はふん!」
「きゃー! きゃー! ……あ、あれ?」
「竹内君がおばさんにボールぶつけたら、治まった?」
「何をいきなり、日本を滅ぼそうとしてるんですか」
「う~……だ、だってこいつらが!」
「だってじゃないでしょ、まったく。大体、僕ごと殺すつもりですか」
「あ、それは安心してくれ。攻撃魔法には防御魔法もセットでついていて、任意の相手には影響が及ばないようになっていて――」
「ともかく、学校に来るのはいいけど、静かにしててくださいよ。ただでさえ最近、注目されすぎて鬱陶しいと思ってるのに……」
「うう……はぁ~い……」
「……た、助かりました、竹内様」
「大変だね、フラムさんも」
「ワタクシの苦労を分かっていただけるのは、竹内様だけです」
「お、おいフラム! そうやって時々、透クンと仲良さそうにするのやめろ! 羨ましいだろ!」
「そう思うなら、竹内様のご忠告どおりしてみたらいかがですか?」
「うっ……う?」
「? どうしました、ご主人様。突然外を見たりして」
「ん、いや、今何か、茶色い犬か猫みたいなのが通ったような気がして」
「誤魔化してもだめです。大体ご主人様は――クドクドクド」
「(くそう……フラムの奴め、ここぞとばかりにお説教しおって……帰ったらお仕置きだ)」


 ◆同日・体育館裏

「コンコン、確かに凄い力だ」
「しかし、その一方であの少年、セレスを手玉にとっているぞ」
「ただの世継ぎ候補ではない、という事か」
「あの少年にも何か力が?」
「それを利用し、勢力の拡大を目論んでおるのかもしれん」
「九尾様にご報告せねば」
「コンコン!」
「コンコン!」

       

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