気が付けば私の友達は、雨宮篝だけになっていた。
 元々、ひとりで過ごす時間を愛していた。
 生まれついて、友情を排するタチだった。
 友達なんて、篝でさえ必要ないと思っていた。
 そもそも篝なんて嫌いだ。
 たくさんたくさん血が流れた。死ななくてもよかった人々が何人死んだと思ってるんだ。
 それでも私は――彼女に迎合した。
 所詮私は、口では正義を語るけど混ぜるな危険をぐちゃぐちゃにかき混ぜるのが好きな――。
 ジャンキーだった。
 篝に私がどう見えていたのかはわからない。
 無理しているように見えたのか、タイマンでなら勝てるくらいにひ弱に思えたのか。最初から私という人間に興味なんてなくて、ただお手頃価格だと思ってから手にとってみただけなのか。
 私には――篝が酷く寂しそうな女の子に見えていた。
 なるほど、私は別に寂しくなんてないけれど、私たちは似ているね。
 そう思ったから、一緒にいることに違和感はなかった。
 何をどうしたって私たちは独りだ。
 一足す一は二にはならない。
 一が悲しく並ぶだけ。
 それならいい――と思ったのだ。
 だけど、そんな不条理な状況下にいても、私と篝との関係を性格に言い表すのに友達という表現を避けて通ることは出来なかった。
 そう。
 私と篝は友達だ。
 友達は――大切にしなければならない。
 だから殺さなかったとも言えるし、だから殺せなかったとも言えるし、だから――殺したくなかったのだとも言える。
 でも、篝は死んだ。
 これまで恨みを買ってきた誰に殺されるでもなく。
 忽然とこの世から姿を消した。
 篝の死は友たる私に少なからず置き土産のようなものを遺していった。
 軽度の心神喪失と、永遠に始まらないバレンタインデーだ。
 私は繰り返される二月十三日を篝のベッドで過ごし、彼女の残り香を求めるように布団の中で身体を丸めていた。
 半永久的時間の反復――それ自体は珍しいことではない。
 私自身これまで何度もそういった事象に巻き込まれてきたし、容易ではなかったにせよその悉くを上手いことやり過ごし、乗り越えてきた。
 だけど今回は――その度にいつも隣にいたはずの――篝の姿がない。
 足手まといだった篝。
 ただの臆病者と底が知れていた篝。
 どうしようもなく弱くて少し追い込まれるとすぐに泣き出してしまう篝。
 人としての器が呆れるほどに小さい篝。
 小心者。卑怯者。馬鹿者。愚か者――。
 あれ。
 ひょっとして私は――。
 雨宮篝に、してやられたのかもしれない。