高校一年生の冬:ちょこれーとクライシス

 私は、雨宮篝のことが大嫌いだった。
 知り合いになったのは幼稚園の頃。どんなふうに出会って、どんな言葉を交わして、どんなふうにお互いを傷つけあったのかは覚えていない。
 篝は典型的ないじめっ子だ。
 遊び感覚で他人の心をずたずたにする。
 悪意はあっても悪気はないから、自分が原因で学校が燃えようが隣国が転覆しようがいつも必ずどこ吹く風。
 私が「死ね」という言葉の意味を理解したとき、私が真っ先に思い浮かべたのはもちろん彼女の姿だった。
「誰かを殺したいって思ったことある?」
 あの日、あの時、あの瞬間。
 無邪気ににひひと笑いながら私にそう尋ねたのは、他でもない篝自身だった。
「あるよ」
 私は即答。
「へえ、誰を?」
 と首を傾げた彼女を、私はじーっと三分間ほど見つめ続けた。
 とにかく察しの悪い篝も、流石に「あれ?」と思ったらしい。
「そっか」
 と小さく呟いて、
「ごめんね」
 と欲しくもなかったそんな言葉を、これまた小さく呟いた。
 高校一年生の、夏のことだった。