日曜日はきっと、月曜日のことが嫌いだろうな。
 休みの終わりと、週の始まり。
 ぐるぐる何度も繰り返す、ルーティーンの尻尾とお口。
 相容れない、と私は思う。
 だけどそれとこれとは、宿命的に、離れることは出来なくて。
 月曜日の思いはわからない。
 嫌いなのか好きなのか。
 ひょっとしたら、無関心ってこともあり得るのかも。
 アンノウン、アンノウン。


 声が聞こえた。
 とある二月の夕方五時。
 それは多分、成層圏から雲を突き抜け落ちてきた。
 スクールバッグに提げた小型のレーダーが、びーびー鳴って煙を上げる。
 空で何かが燃えていた。
 あれはきっと、壊れたラジオか何かだろう。
 おそらく、何が駄目だったのだ。失敗したのか、意図的にはずれを引かされたのか。
 火球は、三か月前までは「隣町」と呼ばれていた巨大なクレーターの底へと落ちていく。雨水が溜まってちょっとした湖の様相を呈しているその場所は、ちゃぽんと大きな波紋を作ったばかりで何事もなかったかのようにそれをごくりと飲み込んでしまった。
 校舎の屋上からその一部始終を見届けていた私は、一本だけ胸ポケットに仕舞っていたたばこを口先に咥えながら百円ライターにしゅぼっと小さな火をともした。
「あら、あら、あら。それは流石にどうなのでしょう、真昼さん」
 椅子の上に立つ私を、クラスメイトの浪裏心裏が困った様子で見上げている。
「……私だってJKだし。たばこの一本くらい普通に吸う」
「いえいえ、そうではなくて」
 向きが逆です、と浪裏がジェスチャーを加えた口パクで伝えてくる。
「……わかってる。わざとだし」
「あら、あら。そうですか」
 浪裏はふふふと笑う。
「……浪裏は、こんなところで何してんの」
 今日は土曜日。
 もちろん、学校はお休み。
 環境変異が盛んなこの時期だから部活は運動系も文化系も全面的に休止中。
 どうしてここに?
 自然な疑問。
 それをそのまま口にするのもそうだった。
「きっと、真昼さんと同じ理由です」
 穴の開いた空。隣町のクレーター。底のない湖。いつも決まって同じ場所から落ちてくる神様の落とし物。
 それを遠巻きに観察したからなんだって話。
 理由なんかない。
 なんとなくこうしているだけ。
 レーダーがびーびーびーびーうるさいから、こうせずにはいられないってだけの話。
 理由なんてないのに。
 私と同じ理由が、彼女にはあるのだという。
 不思議な話。
 だけど道理だ。
「浪裏も、私とおんなじなの?」
「おんなじですよ、私たち」
 どこから引っ張ってきたのか、いつの間にか浪裏も、椅子の上に立っていた。
 ほとんど同じ身長。似たような髪型。瞳の色とか。あれとかこれとか。
 共通点の多さに辟易とする。
 ところで、真昼さん、と浪裏。
「――明日が何の日か知っていますか?」
「明日?」
 明日。
 は、確か。
 二月の……十三日だ。
 たぶん、何もない日曜日だと思う。
 何の発展性も伸縮性もない話題。
 首をかしげて終わる。
 ライターの火を、今更ながらかちっと消した。
「あら、あら。いけない人ですね、真昼さんは」
 平和を欲さば戦に備えよ、ですよ。
 彼女は口だけを動かしてそう呟く。
 声はなかったのに。
 なぜか言葉が頭に刻み込まれる。
 レーダーが鳴る。
 びーびーびーびー。
 きっとまた、何か空から落ちてきたんだろう。
 でも、私の視線はなぜか。
 浪裏の唇に釘付けされていた。
 明日は何の日。
 そんなの、わからない。
 でも、きっと明後日は――。