Neetel Inside 文芸新都
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悪童イエス(完結)
あとがき

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 というわけで「悪童イエス」完結です。いろいろ書きたい事が山盛りなので、とりとめもなく長い後書きを書きます。
 ちなみに私はキリスト教徒でもなく、また他の宗教の信者でもありません。イエスや聖書について特に詳しいわけでもありません。逆に宗教アレルギーも特にありません。その辺りはドストエフスキーやトルストイを読み漁っていた頃に消えました。

 元々の掌編版「悪童イエス」を書いたきっかけは、幼稚園のママ友さんに誘われて行った、キリスト教教会でのクリスマス・パーティでした。子供向けに作成された、イエス誕生のエピソードのアニメーションが流されたのですが、私にはとても物足りない出来でした。イエス生誕時におけるエピソードで真っ先に思い浮かぶのが、ヘロデ大王による、幼児虐殺です(自らの地位を脅かす者の誕生を怖れた王が、預言の子を始末するために、ベツヘルム地方の二歳以下の子供を虐殺した、というエピソード)。私の頭の中では、引き続き行われているクリスマス・パーティの最中に、既に「悪童イエス」の原形が形作られていました。

 長編版「悪童イエス」を書いている最中に感じたのが「ヘロデ大王のエピソードって、たぶんイエスのカリスマ性を誇張して表現するための、創作だよな」でした。ある時期一人のスーパースターが活躍した。その全盛期に惜しくも亡くなってしまった。彼の信奉者達は、彼の偉大さを広める為に、事実及び事実でないエピソードも書き残した、という事なんじゃないかな、と。

 とりとめもなく話を続けます。

 2018年、私の住む街は震度6弱の地震に襲われました。その際は幸い我が家のライフラインは全て無事でしたが、その後の台風の直撃時は停電し、私は仕事中でしたが、妻子は避難所生活を経験しました(幸い5~6時間で復旧)。これを書いている2019年3月半ばの今も、地震と台風の爪痕は残っており、屋根の上にいつまでもブルーシートの敷いてある家々、復旧が後回しにされている、壊れたままのフェンス類などが、あちこちに散見されます。
 私は昔、当時の自分の心境が反映されたような、荒廃した街を舞台にした話をよく書いていました。その頃に想像だけで書いていたのと似た風景が、日常に広がっていました。不謹慎な言い方かもしれませんが、その様な環境は、創作意欲を強く掻き立てました。我が家のベランダの前のフェンスがようやく修繕されたのも、2月半ばの事でした。

 現在我が家には、この4月から小学生になる娘と、1歳3ヶ月になる息子がいます。昔のようにパソコンでの執筆活動は、とても出来る状況ではなく、ほぼ諦めており、創作活動も滞っておりました。それが今作のように週一ペースでの連載が出来たのは、スマホ執筆に切り替えたのと、いつの間にか昔のような執筆環境が整っていたからです。それは「読書習慣」「音楽を聴く」「書きやすい執筆ソフト」です。
 綺麗な話ではありませんが、家のトイレに小説の文庫本を置いて少しずつでも毎日読む事で、様々な刺激を貰っています。今作執筆中に読んでいたのは、多和田葉子「献灯使」、平野啓一郎「透明な迷宮」、中村文則「教団X」(途中)です。仕事と子育てで忙しくなる前に読んでいた作家達ばかりなので、あまり冒険出来てません。
 音楽は現在Spotifyに加入して日々聴いています。元々好きだった曲、アーティストからの繋がりがほとんどですが、元来小説執筆中に音楽を流している事が多かったので、重宝しています。
 執筆ソフトは、色々な物を試した訳ではないのでこれがベストかは分かりませんが、JotterPadというアプリを使用しています。
 スマホ執筆に切り替えた事で、通勤時の電車の中や、夜中に目が覚めてしまった時や、時には子供をだっこして寝かし付けながらでも書く事が出来るようになりました。まとまった時間ではなく細切れな執筆になる事で、逆に切れ目なく創作の事を考え続けるようになりました。

 今作において様々な楽曲を取り上げていますが、元々はこんなに音楽と絡む話の予定ではありませんでした。イエスが弾き語りに加わり小銭を稼いだ所から大きく話が転がっていったのです。「千文字前後掌編小説集」において「人の歌声」シリーズを書いた名残りでもありました。
 私は主に高校時代、ギター少年でした。一番長くやっていたバンドは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのコピーバンドです。あまり練習熱心ではなく、どちらかというと既に文学少年にシフトチェンジしておりました。私と違い本格派のバンド仲間には、 Rage Against The MachineやKORNのコピーをしている者達もいました。一度だけですが、その中の一人とNIRVANAのコピーバンドを組んで、ベースを弾いたこともあります。今作の中でその辺りの時代の曲を多用しております。私が高校を卒業して20年経つという事実に恐れおののいております。

「悪童イエス」執筆中の2月半ば、下の子が入院しました。私自身体調を崩しており、妻も付き添い入院する為、上の子の幼稚園への送り迎えや家事全般、病院への見舞いと、へとへとになる日々でした。そんな中、疲れて重くなる足取りを奮い立たせてくれたのは音楽の力でした。退院の日、駅から病院へと向かう私はKORNの「Twisted Transistor」をリピート再生しておりました。下の子はもう元気です。

 誤字も含め、修正したい箇所もありますが、長編版「悪童イエス」は完結です。ここまで読んで下さりありがとうございました。次回作として、引き続き音楽と絡めた「音楽小説集」や、完結の目処を立てやすいよう、長編への改変が可能そうな掌編を書こうかな、など考えております。ではまた。

(了)

       

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