動画はこちら(4月23日に発表されたばかりの新曲)
https://youtu.be/LNNPNweSbp8

歌詞、和訳
https://denihilo.com/rolling-stones/living-in-a-ghost-town


 生と死が逆転している。かつて賑わいを見せた街はどこもロックダウンされ、生きている者は誰も歩いてはいない。賑やかなのはゴーストばかりだ。ゴーストタウンの内側で静かに時を過ごさざるを得ない生きている者達と違って、我々ゴーストは生きていた時より遥かに自由に動き回る。
 しかし虚しく、楽しめない。ゴースト達の吐く溜め息は空気を揺らせない。やがて一人二人、三匹四匹と、朝焼けにかき消されて、あるいは地下へと沈み込む。

 かつてこの街では、いや、かつてあらゆる土地では、ドラムがビートを刻み、ギターがかき鳴らされ、サックスやらトランペットやらもうるさいくらいに鳴り響いていた。暴動が起こり、やけくそ気味に窓ガラスが割られると、その音までが音楽に聞こえた。路上で歌い踊る者達が自然発生してパレードが始まった。そこで爆発する若者達のエネルギーは決して健全な物だけではなかったが、ゴーストまでも沸き立たせた。勢い余って天国やら地獄に飛んで行ってしまう者もいれば、生きている者に平気で混ざって談笑している奴らも居た。
 そんな日々がかつてはあった。無限に思えるくらいに。だけど今は。だけどこれからはずっと。だけどもう誰も何処にも。いない、訪れない、戻らない。

 人類が現れる前、と古株のゴーストが言う。長い間こんな風だったよ、と。かつては神と呼ばれたその古株は何でも知った風な口を利く。
 ーーその頃は寂しかったかい?
 ーー寂しさなんて知らなかった。
 ゴーストタウンに強い風が吹き荒れ、何処かの店頭から這い出して来たマネキン人形が転がっていく。削られた顔に表情が生まれ、笑っているように見える。新顔のゴーストが不思議そうにそれを眺めている。まだ自分は生きていると勘違いしているゴーストが増えてきた。毎日毎日。ゴーストタウンにゴーストが溢れる。何の不思議もないけれど。生きている者はいないのか、と問いかけても答えはない。

 歌声が響く。無人の街に。
 開け放たれた窓の内側から。
 同じ曲が繰り返し、どの窓からも。
 ーーあの曲は何て曲だい?
 古株のゴーストに訊ねてみる。
 ーーローリング・ストーンズの新曲だよ。
 知ったかぶりの古株が答える。
 人生は美しかった、と歌っている。全人類の全人生を代表しているみたいに。
 歌声が多く、大きくなる。けれど歌声の主達は家の外には出てこない。ひょっとしてもう皆ゴーストになっていて、生き残っているのは歌声だけなのかもしれない。
 夕焼けが沈み、夜が来る。
 街中がゴーストで溢れかえる。
 ゴースト達も歌い出す。
 I'm a ghost
 Living in a ghost town…
 歌声だけが、生き延びている。

(了)