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 土日・祝日は、稼ぎ時だ。定休日は月曜日。
 
 街中から離れた住宅街の一角には、顔なじみの常連さんがやってくる。昔ながらの散髪屋《とこや》の息子として育った俺は、毎日、近所のじいちゃんを始め、いろんな年頃の男性と顔を合わせることが多かった。

「じいちゃん、かゆいとこないか。大丈夫?」
「おぉ、ユウ坊。問題ないぞ」
「オッケ。じゃあ泡流すからな。熱かったら言ってくれよー」

 本格的に家の手伝いをはじめたのは、中学に上がってからだ。最初は玄関先や床の掃除をしていたが、成長期がやってきて身長が伸びると、両親から「祐一もちょっと手伝ってみんか」と声をかけられた。

 ハサミを持てることはなかったけれど、常連のじいちゃん達の頭を洗ったり、ドライヤーで乾かしたりもした。
 肩たたき、マッサージのサービスは好評で、自分で言うのもなんだが、けっこう可愛がられていた。

「っかー、ユウ坊のおかげでコリが取れたわ。これで寿命が2年は伸びたのう」
「いやいや、それは大げさでしょ。けど長生きしてくれよな。友重のじいちゃんが来てくれないと、うち潰れちまうよ」
「そりゃあ大変じゃ。長生きせんとなぁ。わははははは!」

 町内会長をしている、友重《ともしげ》さん。うちをごひいきにしてくれる常連の一人で、70を超えても明朗快活。誰に対してもよく笑い、気さくに話しかける、町内の人気者だった。

「ところでユウ坊、おまえ、麻雀は打てたりせんか?」
「へ? まーじゃん?」
「最近ワシらの間で、麻雀が流行っとってなぁ。将棋や囲碁とは違うて、面子が最低でも3人いるやろ。なかなか集まらんのよな」
「あー、俺も麻雀はやったことないなぁ」
「やだわ友重さん、うちの大事な跡取りを、ギャンブルの道に連れていかないでくださいよ」

 母さんが冗談まじりに笑うと、友重さんも慣れたように笑う。

「心配せんとってください。べつに雀荘で打とう言うんやないですよ。集会所でね、身内で菓子でも食べながら、5千円そこらのオモチャの卓を使うて、ボケ防止に遊んどるだけですよ」
「ふーん。んじゃ素人でもいいなら、俺もせっかくだから覚えてみるよ。麻雀」
「お、そうか? まったく、ユウ坊は歳の割に、大人の付き合い方っちゅーんを分かっとるなぁ。わはははは!」

 ――それが先週のことだった。

 そして今日も朝早くから二人、近くに住む町内のじいちゃん達が、顔を見せにきてくれた。一人は相変わらずの友重さん。もう一人は、宮脇という温和なおじいちゃんで、気が合うのか、よく一緒にうちの店に顔をだしてくれた。

「ユウちゃん、もうすっかり一人前やなぁ」
「いや、まだまだ。そんなことないよ」
「ある意味、もう何年も下積みしとんのと同じやもんなぁ。将来はこの店継ぐんかな?」
「おやおや宮脇さん、それはちょっとまだ時期尚早ってやつですよ」

 父さんが、のんびりとペースを合わせて応える。
 うちの店に客席は二つだけ。父さんがハサミを持って、お客さんの髪を切り、続けて母さんが頭を洗う。それが30年近く続いてきた。その中で、俺がやっと手伝いに混じりはじめていた。

「こりゃ失礼。そうかそうか。大きくなった言うても、まだ中学二年やもんなぁ。いけんねぇ。ジジイの感覚でものいうちゃ」
「んなことないよ。じいちゃん達の話、おもしろいよ」
「そうかい? ありがたいねぇ」

 7歳の時から、店の待合席で二人の仕事を見てきた。今は母さんと交代で職場に立ち、お客さんと話しながら、頭を洗っている。

「それじゃあ、ユウちゃん。店を継ぐかはともかくとして。なんぞ将来、やってみたい事とかあったりするのかい?」
「んー、どうだろう。まだなんも分かんないなー」

 宮脇のじいちゃんの頭を、ドライヤーで乾かしながら、相づちを打つ。

「そうなんやなぁ。まぁなんぞ最近は、どうやって生きたらええか。ちゅうのが流行っとるみたいやしね」
「あぁ聞いた聞いた。昔とちごうて、世の中、なんもかんも便利になったしなぁ」

 隣の席。ヒゲ剃りを終えて、さっぱりした友重のじいちゃんが、会話に混じってくる。

「メシ食うていくだけやったら、そこいらのコンビニで働いとったら、べつにかまへんしな」
「質素にしてたら、それなりに余裕をもって生活できますしね。遊ぶもんも、インタァネットを検索したら、無料のモンがぎょーさん落ちとって、娯楽にも事かきませんし」

 二人のじいちゃんが口々に言うと、父さんも、髪にワックスを塗って、形を整えながら同意した。

「そうですねぇ。わたしらの世代でしたら、自分が何者か、どう生きるべきか。っていう悩みを一度もってしもうたら、とりあえず山登りしたり、自転車で日本一周したりしたんですけどね」
「わはははは。えらいなつかしいですなぁ。深夜の夜行列車が、登山用のザイルを詰めた、ムサい男で、すし詰めになって、どいつもこいつも身一つで、自分探しの旅とかいうもんに、真剣に向き合うとりましたな」
「結局いきつくのは、自己満足しかない事に気づくんですけどね」
「まったくよ。今の時代は、その自己満を得られるのが難しいんやろうなぁ。インタネットで活動する若いもんも多いらしいけど、どうしたって、人の目にさらされてナンボいうんがあるんやろ」
「友重《シゲ》さんの言うとおりですわ。もし今の若い人らがが山登りしよったところで、登頂したんを写真にとって、ツイッタァなり、インスタなりに投稿したがるでしょうな。反応がなかったら、自己満足の無意味さに気づいてしもうて、結局はむなしくなってしまう」
「…じいちゃん達、詳しいなぁ…」

 俺は普通に感心してしまう。

「わははは。同居しとる息子と嫁を見よったら、よぉわかるで。ひまさえあれば、スマホいじって、フツーの晩飯や小物まで写真にとりよって、リツイート件数がどうのこうの言よるしな」
「やれやれ。友重さんとこもですか。うちの娘も、すきあらば猫の写真をスマホで撮ってましてね。そんなに撮ってどうするんだと聞いてみたら、猫は再生数が稼げるんやいいましてな。この前は寝顔をしつこく撮って、いよいよ引っかかれよりましたわ」
「あらあら、怪我は大丈夫でしたの?」
「えぇ。むしろ猫の方が、ストレスでハゲそうな感じですわ」

 宮脇のじいちゃんが、やれやれとため息をこぼした。
 俺たちは、いっせいにのんびり笑う。

「まぁ。ともかくそういう時代、いうことよな。他人から認めてもらえんと、自分を認めづらい。そういう感じなんやろう」
「そうですね。ある意味、やりたい事が見つからずとも、やりたい事を頑張ってる人を、応援する生き方も、逆に幸せなのかもしれませんね」
「そういうのもあるわなぁ。そういえば息子夫婦と孫がセットで、アイドルを追いかけよるわ」
「友重さんとこもですか。うちの娘も、まったく一緒ですわい」
「どこのモンも、似たような生き方しよるのう。せや、ユウ坊も、なんぞ追っかけとるんか?」
「いや俺は…そういうのはないかなぁ」

 話をふられて、苦笑してみせる。

「友重さん、ユウちゃんぐらいの歳やったら、自分がアイドルなるぐらいの気概でおると思いますよ」
「わははは。確かにそうや。ユウ坊がアイドルになったら、いくらでも賽銭投げたるで」
「そりゃどうも。ところで宮のじっちゃん、髪そろそろ乾いたと思うんだけど、どんな感じ?」
「おっと、こりゃええ案配ですじゃ。これ以上やったら、自慢の薄毛が焦げつくとこですわ」
「わはははは。まったくですな。宮さん、これ以上ハゲてしもたら、ワシらの推しんとこに、通う機会が減ってしまうで」
「そうそう。これからも長生きしてさ、末永くうちの店に金落としてってよ。ハゲてもさ」
「しっかりしとるでホンマ。わはははは!」
「んじゃ、宮のじっちゃんも、後はヒゲ剃りだけだな。母さん、交代よろしくー」

 いつもの冗談めかした雰囲気で、明るい空気が流れる。俺たちの様子を後ろで見守っていた母さんが、ふと言った。

「そうねぇ…宮さん。よかったら、ユウイチにヒゲ剃りの方も任せてみませんか?」
「おや、ユウちゃん、ヒゲ剃りも覚えたんか」
「母さん、いいの?」
「えぇ。お客様がよければやらせてもらいなさい」

 それで今度は、店主である父さんの方を見ると、目があって、のんびりとうなずいてくれた。

「宮脇さん。一応、父親である僕が、すでに何度か実験体になっていますから。命まで取られることだけはないですよ。よろしかったら、引き受けてやってください」
「ほぉ、そこまで言われたんじゃあ、受けんわけにはいかんね」
「宮さん。推しの初仕事を受ける第一号ですな。わはははは」
「まったく。名誉なことですわ。よし、ユウちゃん、息の根さえ止まらんかったら大目に見ますぞ。遠慮なく削ぎなされ」
「じいちゃん、よけいなプレッシャーかけんでよ。知らんぞー、どうなっても知らんからなー」

 笑いながら、俺は洗面台から、ヒゲ剃り用のクリームと、カミソリを用意した。父さんと、母さんから仕事を任されたことが、内心とても嬉しかった。


「オッケー。どうよ、宮のじっちゃん」
「んん、バッチグーですなぁ!」

 初仕事は問題なく成功した。若干、緊張したのも確かだけど、いつものように、自分の中で『集中』のスイッチを入れると、すっかり落ちついて、話をしながら作業をする余裕もあった。最後に蒸した予備のタオルを渡して、気のすむまで顔を拭いてもらう。

「それじゃ、ユウ坊。会計をお願いしてもええか」
「はいよー」

 席から立ち上がり、二人が会計に移る。じいちゃん達におつりを渡すときに、俺はもう一度、言葉をかけた。
 
「なぁなぁ、友重のじっちゃん」
「おう。なんぞ?」
「先週な。町内の寄合で麻雀やってるって言ってたろ。俺もまだ覚えてる途中なんやけど、近くに打てる機会とかって、ある?」
「わははは。ええぞ。大歓迎や! いつがええ?」
「やっぱ、できれば土日かな。学校休みの方がいいな」
「せやったら、次の日曜はどうかの。町内で朝から、公園まわりの掃除をする事になっとるんや。ええ加減、落ち葉が目立ってきたけんの。それが終わったら茶菓子で一服がてら、ひまな年寄り連中で集まって、昼までなんぞできんか思うとったとこじゃ」
「それ、俺と……友達も一人、参加していい?」
「全然かまへんぞ。なんぞ、ユウ坊の友達も麻雀やるんか?」
「おや、最近は中学生の間で麻雀がはやってるのかい?」
「あー、そうじゃなくて。その子は普段、ネットゲームの麻雀をやってるみたいなんだけど、打つ機会というか、打てる知り合いがいないらしくてさ。それで俺が麻雀はじめたのを知ったから、一度、みんなで集まって、打ってみたいんだって」
「ほうほう。ならルールとかも、わかってるんやな」
「うん。役や点棒計算も暗記してるってよ。たぶん、初心者の俺よりは、ぜんぜん上手いと思う」
「そりゃええわ。名前はなんていうんや?」
「西木野さん。漢字はそのまま、西、木、野原の野」
「あいわかった。ほな日程が決まったら、ワシらの”らいん”で連絡したらええか」
「うん。頼むわ。じっちゃん」
「ふふふ。若い子らと打てるん、楽しみですなぁ」
「せやせや。もしかしたら、正体は若手プロで、ワシら無料で勉強させてもらえるかもしれんぞ。わはははは!」

 二人のじいちゃん達が、さっぱりした顔でわらう。

「ほんなら、今日はおいとまさせてもらいます。前川さん。お世話になりましたな。おかげで今日も気分爽快。気持ちよう過ごせそうですわ」
「いえいえ、こちらこそ。またおいでください」
「さいきん冷たくなってきましたから、道中、お気をつけて」
「おおきに。ユウちゃん、来週楽しみにしとるよ。ほんならね」
「ワシもヒゲ伸びるのが楽しみになってきたで。わはははは」
「またなー、風邪ひかんようになー」

 店の表まで出て、手をふって見送る。二人は足取り軽く、いつもと変わらない、すずしげな鈴の音を残して去っていった。

* * *

「安心したよ。祐一」

 店に戻ると、父さんが言った。

「え、なに、もしかして、ヒゲ剃りミスるとか思ってた?」
「いやそうじゃなくて。日曜に友達を連れて遊ぶっていうのがね」
「へ?」

 意味がわからず、首をかしげてしまう。母さんも言う。

「祐一、あなた最近、土日はお店の手伝いばっかりだったでしょう。小学生の頃は滝岡くん達とよく遊んでたけど、最近は、休日に誰かと遊ぶ祐一を見てないなって、お父さんと話してたのよ」
「そうそう」

 父さんが、ハンドクリーナーで床を掃除しながら言う。

「平日も、大体まっすぐ帰ってきて、閉店まで店の手伝いをしてくれてるからね。正直、僕らもそろそろ歳だから、とても助かっているし、お前にちょっと甘えているところがあったんだ」
「あ、いや…店の手伝いは好きにやってるだけだし。滝岡《タキ》は最近、3年が引退して野球部の部長《キャプテン》になって、土日も率先して練習に顔だしてるからで。一応言っとくけど、友達がいないとか、イジメとか、そういうのはないから」
「その点に関しては、あまり心配してないよ」
「祐一には、お父さん仕込みの会話術があるものね」
「はは、そんなにたいしたものじゃないよ。単なる年の功だし、時々、息子の話術に、舌を巻く思いをしてるぐらいさ」

 父さんが微笑する。確かに、思えば。この家に俺が引き取られてきた時とは顔色が違っている。50歳も半ばを過ぎた二人の顔は、だいぶ昔に仕事を引退した、常連さんと比べるべくもないが、確かに”老い”を感じさせる。

「友重さんと、宮脇さんもおっしゃっていたけどね。僕らはもしかすると、祐一の将来を、この店に縛り付けているんじゃないかと思っているんだ。たとえば滝岡くんのように、野球選手になりたいといって、スポーツを始めるのはもちろん、仮に、アイドルになりたいというなら、それでもいいと思う。祐一はとても器用だから、やろうと思えばできるんじゃないかな」
「いや俺は、そういうのは興味ないからさ…」
「うん。つまりね、自分のやりたいようにやればいいということさ。祐一は…やっぱり引け目があるのか、僕らに対してはあまり自己主張をしない方だろう。そこが逆に心配だ。という話を母さんとしていたんだよ」

 父さんの声は、いつも静かで落ちついている。それでいて、自然と相手をきづかう気配が感じられる。

 その背中を、鏡に映る正面の顔を、俺はじっと、見て育った。

 俺がこの家にやってきてから、8年間。その雰囲気が、私生活共々に変わることはなかった。身内のひいき目はあるのかもしれないけれど、美容師は、父さんの天職なんだと思っている。

「まぁそういうわけだから。好きに生きなさい。何事も、ほどほどにね」
「うん。わかったよ、父さん」
「それじゃあ、お客さんも途切れたし、少し早いですけど、お昼にしましょうかね」
「賛成。そうしようか」

 母さんが、軽くぽんと手をあわせ、父さんが相づちをうつ。その流れで、いつものように、俺の腹も嬉しそうに鳴る。空腹がつらくないのは、本当に幸せなことだった。


//interlude Chapter_BGM or SONG
//ありがとう by KOKIA

 昼には1時間休憩をとる。うちがチェーン店だったり、他にスタッフがいれば、交代で上手く回すこともできるのだろうけど、やってくるお客さんとそこまで変わらない年齢の二人は、素直に休憩をとることにしていた。

 常連の人たちも、そういう事情をなんとなく察しているのか、食事時に顔を見せることはあまりない。

 店の裏手にある台所。みそ汁の具を切って、コンロの上に乗せた鍋に放り込む。その間に茶葉を入れ、湯呑に3人分の緑茶を注いでいたら、炊飯器が音をたてた。

「おっ、ご飯炊けた。もうよそっていいよな?」
「いいわよー。居間の方に持ってってちょうだいな」
「はいよー」

 しゃもじを濡らして、炊飯器の蓋をひらいた。目の前を、白い湯気の群れがふわりと広がり、食欲をさそう。

「ん、美味そうだね」
「父さん、みそ汁の方、頼む。もう温まったと思うから」
「任された」

 父さんが小さくうなずいて、みそ汁の鍋の火を止めた。

「お母さん、お椀は、茶色いやつでいいのかい」
「いいわよー」

 食器立てのガラス扉を開き、こっちも椀にそそいでいく。いつもの流れ。毎日変わらない生活のリズムが繰り返された。


 日曜の12時。

「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
「いただきまっす」

 畳敷きの和室に、円形のちゃぶ台。俺たちはそろって箸を手に取った。父さんがテレビのリモコンをとって、ニュースをつける。去年買い替えた、液晶テレビだけが、まるでそこだけ、近未来のように浮いていると思ったのも、すっかり慣れた。

「あ、そうだ。父さん、母さん」

 白い炊き立てごはんに、豆腐と油揚げのはいったみそ汁。コロッケとキャベツの千切り。里芋とニンジン、きんぴらの煮つけ。あたたかい食事に箸をつけながら、二人に聞いた。

「俺、昼から出かけてきていいよな?」
「かまわないわよ。さっき言ってたお友達?」
「あ、いや。今日は違う。ちょい、買い物。普通に」
「給料の方はたりてるか?」

 みそ汁を飲みながら、父さんがちょっと冗談めかして言う。俺もそれに合わせて口元をゆるめた。

「休日の日給千円は、俺にとっちゃ大金ですよ。社長」
「よしよし。有能な助手をよそに取られずにすみそうだ」

 なんかよくわからん小芝居をしていると、テレビのニュース番組がいったんCMに入り、全国チェーンの電気屋の紹介が流れる。

『――秋と言えば、芸術の秋! 
 映画に、音楽、プログラムや動画編集まで!!
 ヨロバシデンキでは、新規のデスクトップPCから
 お手軽に持ち運べるモバイルPCまで!
 各種、最新性能のパソコンを多数取りそろえております! 
 読み込み速度はサクサク! 
 不要な待ち時間とはオサラバ!
 パソコン買うなら、ヨロバシ=デンキ♪」


「……」

 んぐ。里芋を食べながら、なんとなく見てしまった。
 最新のハイスペックPC。動画編集が楽になる。

「祐一」
「ん、なに、母さん?」
「貴方が欲しいものって、パソコン関係のものだったりするの?」
「えっ、なんで?」
「ごはん食べる手が止まってたわよ。あとこの前、電気店からのチラシを熱心に見てたことがあったでしょ」
「あー、PCはまぁ…確かに早いのがあればなー、とは思ったことはあるけど…。モバイルのちっこい奴があるしなー」
「たしか、12月の暮れに買った、年末セール品のやつだね」
「あぁそうそう。祐一がめずらしく、じぃーっと、熱心に見てたのよねぇ。いつだったかしら」
「俺が小3の時だから、5年前かな」
「そうか。もうそんなに経つのか。早いねぇ」

 確かにあっという間、といえばそうかもしれない。

「もしかして、調子が悪くなってきたのかい?」
「いや、今のところはまだ全然動いてる。ただ、最近の無料アプリってさ。どんどん便利なのがでてる分、性能も上がりまくってるみたいなんだよね、あと自動更新系のアプデも入ると、さすがに5年前のモバイルだと、プログラムを処理する量が増えてるみたいで、けっこう重いなーって感じるんだわ」
「パソコンは難しいわねぇ。インターネットが遅いの?」
「あぁいや、ネットを見る分には、今ので問題ないんだけどさ。”よーつべ”とか”ネコ動”を復窓で開いてると、固まったりする」
「ふむ…お母さん。せっかくだからパソコン一台買ってみようか。。祐一が必要なのだったら、良さそうなのを渡して、古い方をお下がりでもらっていいんじゃないか?」
「そうねぇ。わたし達は、天気予報が見れたら十分だものね」
「ちょ、父さんいいから。それは大丈夫だからマジで。最新のって店で買うと、10万軽く超えてたりするから」
「知ってるよ。まぁなにか欲しいものがあれば、遠慮なく言うように。たまには父親らしいこともさせなさい」

 父さんは相変わらず、のんびり笑い、味噌汁をすすった。