Mili - world.execute(me);途中


 この世界。この時代。ありとあらゆる情報が錯綜し、なんでも安上がりで手に入ってしまう毎日に。問いかけましょう。

Question.
 お金よりも、愛よりも、だいじなものって、なんですか。

Answer.
 応えましょう。それは『承認欲求』です。

 可視化された視聴回数、リツイート、お気に入りの登録件数。一見すると『公平感のある、透過された数字』に収束している概念。そこに依存する、わたし達。


 テストの点数だけが、勉強だけが、すべてじゃない。


 自分の価値観は、本当にたいせつなものは、他ならぬ自分が見つけましょう。もっと自分をだいじにしましょう。
 
 そんなことを口にして、子供たちを応援できたその昔。きっと幸せな時代だったんだろうなと思います。本当に、うらやましい。

 ――すべてじゃない。

 自らの好きなものが、明確な数値として、あらゆる人物に公表される現代社会。この目に映る数字だけがすべてじゃないよ。なんて空しい事でしょう。

 ――すべてなんですよ。

 数字の取れない価値観は、現状、すべて間違いのもとです。なんで空々しいことでしょう。

 誰もが知っています、とっても身近なドキュメンタリー。SNSを始めとした、公開設定。

 ある日、一人の子供が、屋上から飛び降りた。

 真っ赤なトマト。ソース。ケチャップ。人々はうっかり、手にした電子機器をさしむけた。

 つい、くせで。条件反射で。

 胸元からこみあげたお昼ごはん。汚水となったそれが喉元をかけあがるよりもはやく、その手にしたスマートフォンのカメラを、ぐちゃぐちゃに飛び散った残骸に、さしむけた。 

 日常にコロリとブチ撒けちゃった、非日常。

 アップロードしちゃったら、稼げちゃうかな。再生数。

 お気に入り。リツイート。連鎖して。

 もしかしたら、ぐうぜん。

 わたしのこと、きづいてくれるかな。

 どこかにいる、お父さん。

 そんなことを、おもっちゃった。

 キミのツイッター。

 今日食べた、おひるの映像。

 いちばんにアップロードされている。

 そのうえに、トマトソース仕掛けのミートパスタ。

 ツイートしてもいいですか?

 みんな、わたしのこと、

 不謹慎だって、普通じゃないって、

 人の気持ちが分からないって、怒りますか?


 そんなとき。ぽつりと『もうひとりのジブン』が現れた。『自分』を全肯定してくれる存在。あるいは、なんらかの可能性を示唆し、応援してくれる存在。


 【自分自身の擬人化、および、存在証明】

 【進化したAIによる、ディープヒューマニズム】
 
 【視聴覚にて、自他共に肯定される、二重人格性障害】

 【パーソナリティ・セカンド】

 
 西暦2024年。秋。わたし達の中で【セカンド】と呼ばれる存在が、徐々に広まりつつあった。それもまた、この時代に適して、求められたものに過ぎないのかもしれないけれど。

 ファンタジーの中にしか存在しなかった、もう一人の『ジブン』は、長い技術の進歩と、求められた存在の追求によって、その片鱗を少しずつ、リアルに実像を結びはじめていた。
sage