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ミシュガルド一枚絵文章化企画
「動力付戦闘鎧の歴史」作:防衛軍LOVE(6/9 22:34)

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君達は動力付戦闘鎧を知っているだろうか。
甲皇国で開発された人間の動きを強化する、装甲戦闘服、機械の鎧だ。

有名なところではアルフヘイム大陸での初期の戦いで当時世界最強を誇ったアルフヘイム精霊魔法騎士団を壊滅させるのに大きく貢献し、甲皇国の優勢を決定づけた重鎧甲0弐型「竜破」がある。

…何?知らない?ガロンフルメールの方が有名?
自分の作った兵器を過剰に持ち上げるのはやめろ?

いや、ま…まぁ、確かに竜破は構造的に動力機関周りを攻撃されるともろかったり足回りが壊れやすいだとか中がくそ熱いだとかなんとか現場から苦情が来たりしたが…。
だが!しかし、竜破は開発された当初非常に画期的な兵器で、初戦から少しの間は向かうところ…故障以外敵なしだった。
……南方戦線に戦線が広がったら名前程竜族相手に活躍できず時に飛龍に蹂躙されたり、戦争後半に敵に魔導タンクが出てくると弾が届かないし当てても跳ね返されるしで手も足も出なかったりしたが、それはそれだ。

さて、竜破最大の問題点はその生産性の悪さにあった。
細かで精密な部品はマンシュタインにある少数の工場でしか作ることができず、数が確保できない。
更にせっかく出荷された竜破も、激しい戦闘を行うとすぐ部品を消耗してしまって替えの部品が無いせいで使えなくなってしまう。

これではいけない、という事で、新たに生産性に優れた動力付戦闘鎧が開発される事に決まった。
そして作られたのが巷では「ガロンフルメール」と呼ばれている量産試作型の動力付戦闘鎧だ。
このガロンフルメールが登場した事で、竜破は分類上動力付戦闘鎧から、動力付重戦闘鎧という分類になった。
ガロンフルメールは装甲と搭載兵器を減らした代わりに鎧の操作性や整備性は竜破よりもはるかに容易になっており。
最大の特徴は動力源が「水」になっていて、現地にて動力源の確保が非常にしやすくなっている事だ。
勿論、この水は工業用水のような汚染された水ではなく、綺麗な物でなければならないのだが、アルフヘイムでならそれの入手にも困らない。
部品も竜破程精巧な物を必要とせず、故障率も低い。
一体一体の能力は竜破に劣っても、数を揃える事ができて修復も容易なら兵器としては優秀である。

新しい甲皇国の主力兵器となるべく期待されて開発されたこの新型戦闘鎧は、まず試作機が数体作られて本国で様々なテストを受けた後、実戦に導入される事が決まった。
この時その試作機の装着者に選ばれたのが、ガロンフルメールの名前のもとになったガロン・リッタール氏である。
彼は身体能力が甲皇国兵士の中でごく平均的で、機械に関する知識が豊富にあり、試作戦闘鎧の性能を評価する為の装着者としてとても理想的だった。
実際、戦場で事前に行われた動作テストや行軍試験等でガロン氏は要求通りの動きをし、結果も良好だった。
間違いなくこの新型の鎧は次期主力兵装として適切な物だろう。

そう思われて行われた最初の実戦テスト、場所は南方戦線、小規模、無名、半分民間人で構成される敵集団に対する攻撃作戦。
誰も敗北など想像していなかったこの作戦で、期待の新兵器は敗北してしまった。
しかも一撃で、そりゃあもうぱっかーんとド派手に。

…あ、これこれ、これその時の戦闘記録、である。

右側の裸寸前の人物が装着者ガロン・リッタール氏で、左がそのガロン氏と戦った敵の竜人だ。
左の竜人…どー見ても民間人である。
勿論、軍の要警戒対象にもなっていない、ノーマークの人物だ。
話によると相手が民間人であると見てガロン氏が攻撃を躊躇した次の瞬間、一撃でガロンフルメールを吹っ飛ばし、氏を裸にしたらしい。
そう、たった一撃だ。
竜人族とはいえ民間人にたった一撃で破壊される鎧、そんな物が兵器として本当に有効なのか、致命的な欠陥や運用上の問題があるんじゃないのか?
偉い人達がその話を聞いて、そう考えるのも無理無い自然な流れである。
逆に鎧の開発にかかわってきた人間達は装着者の側に問題があったんだと考えた。
敵と相対していない所ではあれだけ性能を発揮した鎧が、いざ実戦では一発で倒される。
これはガロンがわざと負けたとしか考えられない、と。

それにしても一撃であんなに派手に吹き飛ぶものかと思うが…、まあ、そういった考えがやがて動力付戦闘鎧という装備自体への不信に繋がっていった。
生産性が向上したとはいえ決して安くないコストでありながら、歩兵を多少強くした程度の性能で、いざ強敵と相対したら全く使い物にならないでは話にならないという事である。
更にこの時期には機械兵や、正面兵器として動力付戦闘鎧を上回る力を持った、戦闘車両や動力戦闘機、新型銃が登場し、ガロンフルメールの正式採用は無くなり、動力付戦闘鎧自体の価値が薄まってしまった。

…だが、本当にこれはガロンフルメール側の落ち度なのだろうか?
いくらガロン氏が民間人相手に攻撃を躊躇い、ガロンフルメールがコストダウンされた物だったとはいえ、本土でのテストで優秀な成績を出したガロンフルメールが一撃で破壊されるのはおかしい。
つまり、この女性が強い……そう考えるのが自然…ではない!違う、断じてない。

何度も言うが、この女性は名だたる戦士でも何でもない民間人だ。
如何に竜人といえども、戦闘訓練も受けていない民間人が、一方的に一撃で動力付戦闘鎧を破壊できるはずがない、いや、破壊できてはいけない。
動力付戦闘鎧は大勢の人間…私もも含めた…が、それまでの研究と技術を結集させて作り出した物だ、断じて民間人にそんな簡単に負けるわけがないのだ。
……いや、竜人は個体ごとに戦闘能力に大きな差があるという話だが、それでも…動力付戦闘鎧が民間人の女に負けたなんて…、嫌だ、認めない。

え?じゃあなんでガロンフルメールは一撃で負けちゃったのかって?
あ、えーと…。

…ガロン氏の裏切りと、この女性の想定外の強さ、この二つが重なった、と考えるのが妥当だろう。
つまり、ガロン氏は最初からこの作戦、そして戦争をより凄惨なものにしていくだろう動力付戦闘鎧の発展に嫌気がさしていて、自らの敗北と死をもって動力付戦闘鎧の開発を遅らせようと考えていた。
そして負けるつもりで細工をしていたのだが、いざ戦ったら、女性が想定外の強さを持っていて、ありえないやられ方をしてしまった。
こう考えるといろいろな事に説明がつくしつじつまもあう、…と思う。

かくして真っ向勝負の兵器としては時代遅れの物となり、歴史の表舞台から消えつつあった動力付戦闘鎧だが、ある時期を境に再び表に現れる。
動力付戦闘鎧の新たな価値を見抜いた人物が現れたからだ。
その人物とは甲皇国の王位継承者の一人、カデンツァ様である。
カデンツァ様は落ち目だった動力付戦闘鎧開発部門に予算を出し、自身の武装親衛隊にわざわざ専門の部隊を作り出してまで運用しようとした。
そして作られたのが、第四武装親衛隊「甲皇国英雄ガロン・リッタール記念」装甲擲弾兵師団である。

民間人女性に一発で負けた男を英雄としていて、更に師団の名前にまでしている事について、公式では
「欠陥兵器を使わされ、それでもなお最後まで戦った勇敢な人物を称え、その失敗を人類が忘れない様につけた」
と言う説明がなされているが、詳しい所は不明だ。

第四武装親衛隊で用いられた兵器は、ガロンフルメールを更に簡易化し、生産性を大いに向上させた戦闘鎧だった。
この戦闘鎧については正式名称がよくわかっていない上特に通称も無いので、この場では量産型ガロンフルメールと呼ぶ事にしよう。
ただでさえ民間人に一撃で負けたガロンフルメールの、その更に簡易型が配備された第四武装親衛隊は資料によっては「規模も小さく、装備も第一、第二に比べて大きく劣っていた」と記されてしまっている。
だが、私は自信を持って言える、この第四武装親衛隊は決して装備の面で第一、第二に劣ってはいなかった、と。
現に、第四武装親衛隊は戦闘において大きな戦果はあげていないが、ぼろ負けしたという話も聞かない。
そして何より……この第四武装親衛隊こそ、あの三光作戦を最も凶悪に進めた部隊だからだ。

動力付戦闘鎧は気密性が高く防御力も高い為、防護服としてかなり優秀である。
その特性を利用し、第四武装親衛隊は敵支配領域にまず毒ガスをばらまき、その中を逃げ惑う敵兵士や民間人を攻撃するのに量産型ガロンフルメールを導入したのだ。
如何に歴戦のアルフヘイム戦士でも、強力な毒ガスを吸わされ、意識朦朧とする中量産型ガロンフルメールに襲われればひとたまりもない。
山岳部や森に隠れた民間人達に容赦なく毒ガスをまき散らし、苦しむ声目掛けて榴弾を撃ち込み、炎と毒ガスの中で量産型ガロンフルメールを使って逃げ惑う相手を殺していく第四武装親衛隊の姿は、甲皇国の童話に登場する「鉄の悪魔」を彷彿とさせる物だったそうだ。

一説によると第四武装親衛隊が禁断魔法で最も被害を受けほぼ消滅したのは、この残虐さとフルメールで目立っていた為、巫女が標的として選抜した為だという噂もあるが、これは定かではない。

こうして第四武装親衛隊の活躍で動力付戦闘鎧開発部門は息を吹き返し、今日も新たな動力付戦闘鎧を開発しているわけである。
さて、ここまでは戦時中の戦闘鎧について語ってきたが、ここからは戦後、対凶悪モンスター兵器として新たに開発されている最新型の戦闘鎧…動力付戦闘鎧超鎧甲0X型について…。

…え?近代のには興味ない?あ、はい。



ああ、そうそう、ガロン・リッタール氏。
公式には戦死したという事になっているけれども、戦死した瞬間を見た人間は誰もいないそうだ。
代わりに、この銀髪美人のお姉さまに生きたまま裸んぼで連れていかれる姿を見たという報告が、公式に幾つか存在している。
噂によると発情期の雌の竜人はすさまじい性欲を持っていて、強いオスを巣穴に持ち帰ってちょめちょめとこう…するらしい…
そしてこの話を聞いた兵士達がうらやましい奴め…とガロン氏の名前を憶え、試作動力付戦闘鎧が自然とガロンフルメールという通称になった…という話もあるが…。
……まあ、実際こんな美人に手籠めにされるのはうらやましい。

……発情期の間竜人は普段以上の戦闘能力を発揮するという。
…やっぱ素で負けたのか?ガロン氏。
いや、いやいや無い!それはあっちゃいけない。ダメダメのダメ。
動力付戦闘鎧は強いのだ!

       

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