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ミシュガルド一枚絵文章化企画
「セックスしないと出られないスライム」作:ボルトリック・マラー(7/28 21:18)

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 みなさん、おこんばんは。ボルトリック・マラーだ。またまた俺がすごいものを発明してしまいました。名付けてセックスしないと出られないスライム。
 獲物を体内に入れると衣服だけを溶かすというすんばらしいモンスター、ゲスライム。ゲスライムの変異種だけを14世代に渡って交配し生み出したのがこのスライムだ! その名の通り獲物を体内に閉じ込めて、セックスするまで監禁するぞ。
 すでにスライムの中にはローパーを入れてデュエルスタンバイ!! あとは分かるな。この中にシャーロットちゃんを閉じ込めて、エロエロな展開をばっちりカメラに収めてポルノ活動写真を……ぐふっぬふふふふ。よし、映像チェックしとこうか。
 俺はしゃべる杖のボーちゃんに現在録画中の画像を映写機に投影させた。映像を見たボーちゃんは杖上部のちっさいガイコツのあごが外れんばかりに叫ぶ。
「これシャーロットでのーてメゼツやないかい!!!」
 どうして? どうしてこうなった? 確かに映像にはスライムの中で早くも衣服が溶けかかっている燃えるような色の髪の青年が映っている。シャーロット捕まえるつもりがメゼツがスライムのトラップにかかってしまった。俺の壮大なプランが早くもとん挫。もう中止にするしか……いや待て、カメラを止めるな! 需要がある商品を創るのは二流の商人だ。商品に合った需要を創り出すことこそ一流の証。もしかしたら、もしかしたら創れるかもしれねえ。メゼツ受け触手ものの需要がよう!!
 俺は撮影を続けることにした。



 一日目
 スライムから背景の森の緑が透けて見えて、なかなか美しい映像が流れている。長時間見てもおめめに優しい。
 外部とのガス交換により、スライムの体液のなかには新鮮な酸素が含まれていて、中で呼吸ができるようだ。二酸化炭素のあぶくをシャボン玉のように吹きながら、メゼツがスライムの体液を泳いでいる。外との境界まで近づいて細胞膜を叩いて脱出を試みているが、硬質化したスライムの細胞膜を破ることはできない。そうこうしているうちに衣服は溶けていき、メゼツは上半身裸になった。最初からこのくらい薄着だった気もして違和感がないな。粘性の高いスライム汁がまとわりついてメゼツの動きはスローモーションのように遅い。
「そんなことしても無駄だ。スライムの細胞膜はお前さんとローパーがセックスしないと軟化しないように出来てるんだ。さぁ観念してセックスセックス! 童貞じゃセックスの仕方もしらんのか?」
 俺様直々にカメラを回して挑発する。煽られたメゼツは威勢のいい声を上げた。
「ど、ど、ど、童貞ちゃうわ! セックスぐらい知ってるぜ!! アレだろ、あー知ってる知ってる」
 メゼツは自棄でも起こしたのか自分からローパーに近づいて行った。
 だが肝心のローパーのほうがすっかりおびえてしまっている。借りてきた猫だ。環境が変わっていつものふてぶてしさのないおとなしい猫ちゃんだ。猫に例えてみたがローパーのヤツはまったく可愛くない。こんな醜悪なモンスターを追い回し始めたが、メゼツのヤツはどうかしちまったのか? 
「こっち来いよ。悪いようにはしねえよ」
 おいおいあいつマジなのか? まさかのメゼツから行くパターン? メゼツ攻め触手ものなの? 需要を創るキリッとか言っちゃったけどオジサンだんだん自信なきなってきた。
 メゼツの衣服はすっかり溶けて無くなって全裸でローパー追い回してるよ。おーいメゼツくーん君はどこに向かおうとしてるんだ。

 二日目
「メゼツのヤツごっつ落ち込んでる」
「ローパーに相手にされないんだ、しかたねえよボーちゃん」
「メゼツは反省せえ! ローパーちゃんにも心の準備ってもんがある」
 俺は杖のボーちゃんといっしょに映像を見ながら、談笑していた。
 するとどうだろう。うなだれて悲しい体育座りしているメゼツの後ろから、ローパーがひたひたと迫って来たではないか。
 メゼツに完全に体を預け、ロ-パーが後ろから抱きしめる。いや抱きしめてるんだよな、これ。
 ウツボカズラのように開いた口から触手を伸ばし、メゼツの腕に巻き付けている。わきの下を通り、首に絡め、縦横無尽に触手がまとわりついている。後ろから羽交い絞めにしていた触手は、メゼツの魔紋のあたりをまさぐり右乳首を愛撫していた。
 抱きしめているというより、いよいよローパーが本領発揮したといった感じだ。
 メゼツもこれにはけわしい顔だ。しかし何かを察したように、困惑していた表情がもとの明るさを取り戻す。
「そうか、そうだったのか。あんなに逃げ回ったのは、俺とセックスしちまったら外に出てそれでお別れだと思ったからなんだな。お前の気持ち考えてやれなくて悪かった」
 なんでこの人ローパーとラブストーリーが成立しっちゃってるの? ねえ、なんでローパーと心通わせちゃってるの? 俺たちはいったい何を見せられているんだ。
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 千四百六十一日目
「マイハニー、今日が何の日か知ってるかい? ふたりが初めて出会った日だ。あれから四年も経つんだな」
 メゼツは蓄えた髭を触りながら感慨深げにローパーのほうを振り返った。ローパーはまだ小さいローペリアを抱っこしてあやしている。ローパーの足?に抱きついていた中くらいのローペリアが、トテトテと走ってたどたどしくメゼツのことを呼ぶ。
「パーパ!」
 メゼツは目が隠れるほど長いローペリアの前髪をくしゃくしゃと撫でた。そして取るに足らない疑問を思い出す。
「セックスって何だったんだろうな? 結局外には出れなかったけどここが俺たちの家だ!」
 俺はもうつっこむ気も失せていたが、スライムの外から叫んだ。
「オジサンが悪かったからさー、いい加減スライムの外に出てくれよ。もうとっくに外に出れるようになってんだからさー。」
 メゼツ一家はとても幸せそうに笑っている。
 ポルノ活動写真撮るつもりが異種族婚のドキュメンタリーを四年にわたって追い続けてしまった。なんだろうな。だが悪い気はしない。
 活動写真ってホントに良いものですね。それではみなさん、さよなら、さよなら、さよなら。

       

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Neetsha