Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

広大な眺めに目を見張る。
果てしなく打ち寄せる波。

目を閉じ息を吸い込む。
不思議だ。心が安らぐ。
ゆっくりと目を開く。

それは
海に思える。

砂浜に腰を降ろし履物を脱ぐと締め付けられていた
足にじわじわと血が巡る。
開放された足がほっと息をする。

寄せて来た波に足を浸けると
いろいろなものが洗い流される。
旅の疲れ。路銀の心配。どこへ向おうという漠然とした不安。

もう一度、息を吸い込むと生まれ育った
郷の川の匂いがした。
深い緑に覆われた山の中の
郷の匂いがした。

目の前には霞むように島々が浮かぶ。
そのはるか先には岸があり山々が薄墨のように広がる。

故郷のように心地良く。
見慣れぬ景色がどこまでも拡がる。
ぽつんと、旅の途中であることを知る。

これが、淡海なのだ。

寄せてきた波に袴が濡れて
あわてて立ち上がる。
あははと大声で笑うと
履物も履かず波と戯れ歩き始めた。



       

表紙
Tweet

Neetsha