Neetel Inside ニートノベル
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玉匣の姫 (イチロさんは…)
芽生え。

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芽生え

ミコは小さいころに格闘技を始めた。
父が日本にいた頃に教えたのだ。
天才。というのか一度見るとできるようになっている。

道場に行くとかはしないし熱心ということはないが朝の自主トレ
は欠かさない。庭に出て演武というヤツをやる。
三つ子の魂百まで。

おしょうさんにエサを遣り水を取り替えて
雨でなければ庭に出ていつもどおりにやる。
これが日課になっている。

まずは礼。
胸の前では右の手のひらと左の拳を合わせ神妙な顔をする。
それから決った順番で次々技を繋いでいく。
流れる様な動きがミコの演武の特徴だと思う。
ホントはよくわからない(笑)

以下はおしょうさんの証言による数日のできごと。


清々しい朝でいつもよりカリカリが美味しかったのを覚えています。
あ。カリカリというのはモルモットフードのことで草や海藻を固
めたペレット状のものです。
ミコさんが時々ニンゲン用のカリカリを食べるように
僕はモル用のカリカリをいただくのですね。

ミコさんはいつもどおり演武を始めました。
キレのある動き。流れる様な動き。静止した姿。どれもホントに
キレイでいつもは落ち着きの無いミコさんですがこの時だけは
「凛とした」イイ顔してますね。やるじゃん。って思いました。

ただ。いつもと何かチガウなって思いました。
ミコさんじゃなくて雰囲気が。

ミコさんが演武しているそばで何か動いてる。
足元を見ると小さな草が動いてます。

それが、風にそよいでるのでは無く。ミコさんの動きに呼応する
ように時にはビシっと。時にはスルリと動くのです。

ミコさんはいつもどおり手を合わせ演武を終わりました。
このときはその草には気がついて無かったと思います。

翌朝です。
ミコさんが呆然としています。
昨日演武していた辺りは草がビッシリ生えて一面の緑です。

毎日演武するところです。摺り足や踏み込みのため草は伸びるこ
とができず地肌が見えているはずのところです。
ミコさんでさえおかしいと感じたのですね。
しゃがんで草をつまんだりしてました。
が、結局そこを避けるようにしていつものように始めました。

その時です!
緑の草のカタマリが、モコモコと盛り上がり、ヒトのカタチに
なったのです!

さすがにミコさんでもたじろいたのです。

草のカタマリはミコさんと同じ背格好です。
しばらく立ったままでしたがミコさんの後を追うように動き始め
ました。

草の動きは見る間に早くなり、遂にはミコさんに同調したではな
いですか!
ミコさんはうれしそうです。笑顔の内に演武は終わりました。
最後は向き合って合掌してました。

あとでミコさんが言ってました。
「あの草はあおいちゃんが蒔いたヤツだからゼッタイ食べちゃダ
メだよ。」
僕は食べるものは選びます!
あ。お話はまだ続きます。

       

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