Neetel Inside 文芸新都
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Mito usausa
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窓から窓へ、キミに届きますよ~ぉにっ!
精一杯の電波をこめて送信した、ぼくのエトワアル。
だけど届きっこない・・・だってキミは。
・・・・・・今や、星の向こうの人。

「Told me,angel・・・」

その言葉はきっと遠すぎた。
朝起きて、さわやかな風と共に外に出ると、だってキミはいつもぼくの隣にいたから。
幼いころから、さくらんぼ。
でも今キミは・・・遥か、彼方?

(She was dead, 10 monthes ago・・・)

そうだった。
でもぼくは信じてる。
だって今もキミは、ボクの耳に言葉を残し、脳裏にその思想趣味プロファイル全部焼きつけて・・・・・・・。

・・・・・・あぁ、そうだったね。
ボクもそろそろ、逝かなきゃ。
さよなら、みんな。
そういってぼくはきっと、旅立ったのです。
遠い空の雲の間に間に。

(Run away,Run away,Run away,Run Far away・・・・・・)

だってキミはいつだって反則ばかり。
ぼくと約束してた遠足の日だって、一人で先に集合場所に行ってしまって。
お休みの日に遊ぼうって言ったのに、キミは抜け駆けで女の子たちと遊んでた。
勉強会の時だってそうだ!だってキミは・・・・・・。

・・・・・・でもその後キミは、取り残されたぼくを見かけては声をかけて、手を取っていつもの公園に駆けてったね。
いつも街灯つきっぱなし、鉱石ラジオがキラ星の如く流れるときに。
そしてきみとぼくは、こっそりとキスなんてしてしまったりしたんだ・・・・・・。

そんな街頭の鉱石ラジオも壊れっぱなし。
キミが壊れるたび直してたなんて、聞いたことも無かったよ。
その周波数はいつも月の裏側に。
ぼくへの、何がしかの言葉だったと知ったのは、彼女の小さな小箱の中から。

・・・遅すぎた。
ぼくは冷たい彼女の開かない瞳を見つめて、思わず駆けだしたんだった。
チャリンコ、タイヤからは空気の抜けかけのそれを走らせて。
全力で。ガキのころのように、心臓がブッ壊れてしまうかと思うくらいにシャカリキに。
そしてたどり着いた街頭の下、すっかり紅葉の公園。
鉱石ラジオは聞こえない。

聞こえない。
聞こえない。
聞こえない。
聞こえない。



・・・・・・聞こえた。

「クレイ、クレイ、聞こえるかしら?
 あなたにはわたしは見えなくなったけど。
 わたしからはあなたがとっても良く見えて。
 わたしはきっと、月の裏にいるよ。
 月の裏、ウサギたちの支配するあの暗黒空間だけど。

 小さなころ、お話したかしら?
 昔この世界にはヒトとウサギしかいなくって、ヒトはいつもウサギをいじめてた。
 だからウサギたちはその立派な足で、月まで一気に飛んでった。
 青の光で月を焼き払い、こっそり裏側にウサギの楽園を作ったのよ?だから月は赤くて黄色くて時々蒼いのよ?
 ・・・知ってたら、ごめんなさい。


 クレイ?クレイ?
 きっとこれが聞こえると言うことは、

 わたしはきっと、月のお姫様で。
 だってその壊れた鉱石ラジオが、マトモな放送を受信するはずが無いじゃない!!」

それはお姫様からのSOS。
それが本当だとしたら、ぼくは急いで走っていかなきゃいけないよ。
なぜかぼくは、メルシィと二人で食べたアップルパイのことを思い出しながら、急いで駆けだしたんだったね。

月にとらわれのお姫様。
それが本当だとしたら、ぼくは死んででも彼女を助けに行かなければならない!!!!

























「・・・あぁ、本好きで有名なクレイ君が・・・」
刑事はその屍を前に悲しそうにつぶやく。
「でもきっと、幸せだったんだろうなぁ。だって・・・・・・愛してたメルシィちゃんのところに逝ったのだから」
その刑事は、悔しそうに月を見た。

なぁなんだって、あの月は死んでまで俺たちを狂わせるんだい。
あの『黒い悪魔』、あるいは『怒りの日』が、とっくにさかさまの黒い十字架で葬ったんじゃなかったのかい?

       

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