ガラスのウサギを砕いて出てったキミ。
ぼくはキミの面影集めるように、そのかけらを集めて取っといた。
女々しいとか、未練がましいと笑わないで。
ぼくとキミが出会ったのは、一風変わったアンティークショップ。
キミの見とれたウサギのガラス細工にぼくが手をかけた瞬間から、この恋は始まった。
それからぼくたちはちょっと照れ臭く、手をつないで歩いたね。
一体どれくらい経ったんだろう・・・。
けれど晴天の霹靂。
気がつけば、手をつなぐこともなくなって。
そして先週の土曜日、キミは耐えきれず出ていった。
でもぼくは、それが無性に悲しくて。
今でも砕けたウサギを手に、じっと立ちつくしたまんま。
このままではいけないと、足が向いたのは人里はなれた山の中。
ガラス工芸のお爺さんと、あのガラス細工の面影のウサギ。
ぼくは泣きながらウサギのかけらを見せた、お爺さんは悲しそうに頷いてくれた。
そしてぼくは思い切って。
「このウサギを、直したいんです」
大学もほっぽり出して、こもる山中、ガラスの日々に。
お爺さんと二人炎に向かう、あっという間に溶けた中から姿表す、透明なウサギの神秘。
聞けばお爺さんはウサギしかつくらないんだって。
いまさらキミに言っても仕方ないかもしれないけど・・・。
やがてぼくにもその赤い液体を操る術が見えてきた。
初めて丸い風鈴をつくったとき、お爺さんは不器用にぼくの頭をなでながらぶっきらぼうに喜んだ。
心なしか、ウサギもうれしそうだった。
山に雪がちらつくころ、ぼくの作るウサギも様になってきて、ぼくは思い切って切り出した。
「この砕けたウサギはぼくとあの人のものです。ぼくは、このウサギを直したい」
お爺さんは黙ってかまどを貸してくれた、ぼくは喜び勇んでそのかけらをゆっくり融かした。
見守るウサギ、お爺さん。
形になったウサギは、ちょっと不格好だったけど。
ようやく降りた、やさしい山を。
戻るのはちょっぴり不安だったけれど、学校のみんなは変わらず迎えてくれた。
あっという間に元に戻った気がする、後は貴方だけなのです。
この不格好なウサギを抱え、去ってしまったキミの家に向かう。
今更過ぎた話かもしれない。
ぼくの顔みて。キミはなんと言うだろう?
そして砕けてしまったウサギをみて、貴方はなんと言ってくれるだろう・・・。
ちょっと、不格好になっちゃったけれど。
ぼくは貴方の家に向かう。
砕けてしまった絆を、そして失った時を取り戻すために。
それは叶わないかもしれないけれど。
それでもいい、ぼくはキミの家に向かうんだ。