Neetel Inside 文芸新都
表紙

くま活
本編

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(僕は、お金が無いという事はとても悲しいことだと思いました…)

 僕、クマカツ=ハルキは小説家志望であり、小説家を目指し、毎日切磋琢磨に努力をしております、ただ、いまだに芽は出ず、いくつもの賞に投稿したものの、落選が続き、少々落ち込んでおります。

 僕はその人生の全て…とは言わないまでも、人生の多くを物書きの為に費やしてきました。ですから、当然賃貸の安アパートを掃除する時間さえ惜しみ、気が付けばアパートの四畳半はゴミが溢れ、洗濯桶には食器がたまり、床には1センチほどの埃がつもり、とても、生活できるスペースではなくなってしまいました。生活ができない分には構わないのですが、小説を書く気さえも無くすような空間にしてしまったのは非常に失敗しました。まとまったお金が入ったら上品なマダムの家政婦さんを雇い、掃除をしてもらいたいと思います。
 そんなわけで、僕は家での創作活動が困難となったため、懇意にしている喫茶店にコーヒー一杯で何時間もたてこもり、そこで小説を書く、という生活になりました。そこはエーコという女性が主人をつとめる、上品な喫茶店で。エーコさんは僕に非常に親切にしてくれました。やはり、夢を持って頑張る僕のような男性を、女性は応援したくなるものなのでしょう。ありがたいことに最近はエーコさんの店で出すサンドイッチの廃棄で出るパンの耳を譲ってくれるようになりました。おかげで食費がほとんどかからなくなり、助かっております。

 エーコさんは僕よりも一回り程年齢が下なので、それが少々残念なところです。僕は年上の女性が好きなのです…。

 そんなわけで、僕は今日も、あのごみ溜め四畳半から脱出し、エーコさんの喫茶店に向かいました。ただ、いつもとほんの少し違う事があります。それは、手持ちのリュックサックに大量の紙束が入っていて、非常に重い、ということでした。普段だったら、原稿用紙百枚程と、筆記用具だけの身軽なリュックでエーコさんの喫茶店に足を運んでいたのですが、今回はそうはいかなかったのです。紙束の中身については、のちのち説明することにしましょう。

 重たいリュックをよろよろしながら運び、ようやくエーコさんの喫茶店につきました。扉をあけ、中に入ってみると、中には誰もいませんでした。
「すいませーん」
 僕が呼ぶと、店の奥からウェイトレス姿の女の子がでてきました。良く知っている女の子で、彼女の名はビビさんといいます。いかにもまだ子供という感じで、活発で元気な女の子です。僕と同じで常にお金に困っていて、たまにエーコさんの喫茶店で臨時で働いていると聞いております。

(僕は、ビビさんは子供なのに働いて、偉いと思いました…)

「あら、クマカツさんじゃない?悪いけど、今日は臨時休業なの、ごめんね」
「今日は、エーコさんはいらっしゃらないのですか?」
「いや、ちゃんと厨房内にいるわよ、でもね、ちょっと忙しいのよ、ほら、来月ケンタウルのお祭りがあるじゃない、そのお祭りで、この辺り周辺の飲食店が出店を出すのだけどその分担を決める為に会議をしているの」
「へえ、そういえば、厨房のほうから声が聞こえますね」
「この辺の全ての店の店主が来て、議論しているの。役割分担はもちろん、出す食べ物の試食会なんかもやっていて大忙しよ。エーコさんも自分の店でこんな事になって大変だけど、貧乏クジひかされたのね…幹事みたいなことさせられて、ちょっとかわいそう」
「あの…出店の役割分担って、そんなにもめるものでしょうか?」
「そりゃあそうよ、コスパが良くて人気のかき氷とか、みんながやりたがるしね、かといってみんなが全員かき氷をやるわけにもいかないじゃない、【酢イカの悲劇】を繰り替えすわけにもいかないしね」
「酢イカの悲劇?なんですか?それ」
「もう三年ほど前になるかしら、そのころは特に相談もせずに各々好きな出店を出していたのよ、そうしたら、お祭りの出店の半分以上が酢イカになってしまって、なんとも悲惨なお祭りになってしまったの」
「それは地獄絵図です…」
「そんなわけで、今日は帰ってもらってもいいかしら?ごめんなさいね」
「あの…みて下さい、実は今日は、すごい重いリュックをもって来たのです。またこれを持って帰るなんて…なんとかなりませんか?空いているスペースを使わせてもらうだけでいいのです」
 僕は背中に背負っている邪魔くさいリュックをみせました。
「まあ、重そうなリュックね、でも…今日は臨時休業だから、それに、だったら別の喫茶店に行けばいいじゃない?」
「それが…ダメなのです…コーヒー一杯で何時間も粘るものだから、この辺周辺の喫茶店は、エーコさんの店をのぞき全て出禁をくらっているのです…」
「あきれた…、確かに、私がもしこの店の主人だったら、あんたなんか出禁にするわね、迷惑この上ないわ。エーコさんはクマカツさんに少し優しすぎるのよ」
「お願いします、受賞のあかつきには、この恩は10倍にして返しますので」
「わかったわ、エーコさんに聞いてきてあげる。確かにクマカツさんはカルファ一杯で何時間も粘るだけで特に追加注文しないから、来客対応もしなくていいしね」
「おほめに預かり光栄です」
「嫌味で言ったんだけど…」

 ビビさんは厨房に入り、そして5分ほどして戻ってきました。右手の人差し指と親指をくっつけて【OK】のサインを出してくれました。僕はホッとして奥の4人席に陣取るとリュックの中から非常に重たい紙束を何枚も出しました。
「悪いけど、今日は私がカルファを入れるからね、美味しくなくても文句いわないでよ」
「ええ、ありがとうございます。ビビさんの入れたコーヒー、飲んでみたいです」

 紙束にはそれぞれ様々な表紙が付いております。
【ドルガ聖典キャラクター登録所】【ドルガ聖典~進~】【ドルガ落書き置き場】【ドルガ合同調査報告所】【ドルガ一枚絵文章化企画ドルガ肝試し 恐怖の館】…etc。
 僕は少しため息をはくと、その紙束の一つをめくり、ペラペラとめくりました。
「カルファできたわよ」
 ビビさんが入れたコーヒーは、苦いような酸っぱいようなよくわからない味がしました…。
「クマカツさんが資料を見ながら小説を書くなんて、珍しいわね、それにしても…ドルガ聖典?なにこれ?新興宗教でも始めたの?」
「いえ、違います。僕は今回、ドルガ趣味会の賞に応募しようと思いまして、そのための資料なのです」
「ドルガ趣味会?初めて聞く名前ね」
「簡単に言ってしまえば、アマチュアのサークル活動の集まりみたいなものです。ただ、大変規模が大きいものなのです、詳しく聞きたいですか?」
「手短にね」
「事の発端は、ナタイシ=オークトーンという貴族の貴婦人を慰める為に作られた会なのです。ナタイシさんは心に深い傷を負ってしまい、屋敷の中に引きこもるようになってしまった可哀そうなご婦人です。ナタイシさんの不憫な姿を見かねた有志達が多くのサークルを作り、彼女を励まそうとしたのです。趣味の種類は乗馬、球技、武術、格闘技、芸術、はてはボードゲームや漫画作成などのオタク趣味にいたるまで数多くあります」
「その中に小説もあると?」
「ええ、そういう事になります。その小説部門の賞に投稿することに決めたのです」
「ふむ…、で?ナタイシさんはなにか好きな趣味を見つけて元気になったの?」
「いえ…、それがどの趣味も彼女の心の傷を癒やす力にはならなかったようです、ただ、ドルガ趣味会が巨大になるにつれて、ナタイシさんも運営の一部として協力するようになったのです、もともと面倒見のいい、親切な人でしたし」
「つまり…ドルガ趣味会を運営することが、彼女の趣味になった…と…皮肉な話ね」
「結果オーライだと思います、ところで…ナタイシさんは私の好みにドンピシャの女性でして…もし会う機会があったら、私のユーモアあふれるジョークで彼女の心を癒やしてあげたいです」
「クマカツさんのオヤジギャグなんて聞かされたら、ナタイシさんは部屋に引きこもって二度と出てこなくなると思うわ、やめときなさい」

(僕は、自慢のジョークを否定されて、悲しい気分になりました…)

「で?この大量の紙束と、ドルガ趣味会がなんの関係があるの?サークル案内にしては量が多すぎると思うけど…」
「実は、ドルガ趣味会で応募してる小説は普通と少し違っておりまして、シェア=ワールド物なのです」
「シェア=ワールド?なにそれ?」
「簡単に言ってしまえば、他人が作った設定やキャラクターを自分も使っていい、という物です。創作活動というものはどうしても個人的なものになりがちですから、サークル活動としてはそれは面白くないと思ったのでしょうね」
「へぇ、みんなで同じ世界を作っていくってこと?面白そうじゃない」
「でも、所詮はアマチュアのお遊びです、僕のようにプロの作家を目指しているものからすれば、滑稽に見えます、作品の質は確実に落ちますから」
「楽しそうだけどなぁ…」
「例えば、超人気作品があって、それのスピンオフとして色々な作品が生まれた、こういったシェア=ワールドの場合は非常に良いのです、世界観としての骨子がしっかりしてますからね。でも、ドルガ趣味会のようなシェア=ワールドを目的としたシェア=ワールドの場合、素人がよくある設定をツギハギしただけの寄せ集めにしかならないのです」
「まあ言ってる事はわかるけど、もともとアマチュアのお遊びを目的に作られたものなのでしょう?ちょっとムキになりすぎじゃない?それに、だったらなんでそんな賞に応募しようと思ったのよ」
「賞金として百万円がもらえるからです。それに、アマチュアの集まりだからライバルも少ないと思ったからです」
「場違いなのはクマカツさんのほうじゃないの…ただお金が欲しいだけじゃない…それにしてもただの趣味の賞しては大金ね」
「ナタイシさんはお金持ちですからね」

 ビビさんは紙束の一冊を拾うと、ぱらぱらとめくりました。
「ドルガ聖典キャラクター登録所、かぁ…、へぇ、これはキャラクターが書いてある冊子ね、なるほど、この大量の紙束は、シェア=ワールドの資料ってわけね」
「そういう事になります」
「でも、こんな大量の紙束、どっから調達してきたの?」
「実は、アンダーテイルのオーナーから貸してもらったのです」
「アンダーテイルって、裏路地にあるエッチなお店よね…あそこのオーナーがなんでドルガ趣味会の冊子なんて大量に持ってるのよ」
「実はアンダーテイルのオーナーはドルガ趣味会の会員でして、このシェア=ワールドの第一人者なのです、シェア=ワールドの小説も何作か書いているみたいですよ」
「へえ、あのオーナーにそんな趣味があったなんて意外だわ」
「実は今回の賞の存在を教えてもらったのもアンダーテイルのオーナーからでして」
「ちょっとまって…、クマカツさんって万年金欠状態よね、なんでエッチなお店に行くお金があるのよ」
「女遊びは芸の肥やしといいますからね、小説の糧とするために利用しております」
「ただエッチなだけじゃない…」


「ところで…、ビビさん、先ほどちょっと気になる事をおっしゃいましたね?」
「あら?なにか言ったかしら?」
「出店で出す、料理の試食をやっているとか、もしよろしければ僕も協力しましょうか?」
「クマカツさん…、タダ飯食べたいだけでしょう?図々しいわね、でもまあ、ちょっと煮詰まってる議題もあるし調度いいわ。ちょっとまってて」
 ビビさんは厨房に戻り、大量のポテトを乗せたお盆を持って戻ってきました。ポテトの種類は何種類もあり、そのまま皮ごと荒く切って揚げたもの、細切りにして揚げたもの、
マッシュ状にしたものを型枠から押し出して揚げたもの、トルネード状にして棒に巻き付けたものなどがありました。
「ポテトの出店を二軒出すことになったのだけど、ポテトの形状で揉めているのよ。どれも美味しそうだから意見がまとまらなくて」
「ムム、これはいけません、いけませんねぇ」
「なに?なにか問題でもあるの?」
「こんなにポテトを出されたら、ビールを飲みたくなってしまいます。ビビさん、ビールをいただけませんか?」
「え?クマカツさん今から小説を書くのでしょう?ビールなんか飲んだら書けなくなるわよ」
「いえ、少しくらいアルコールが入った方が筆が進むという物です」
「まあいいか、でも珍しいわね、クマカツさんがカルファ以外の物を注文するなんて、600円になるわ」
「いえ、ちょっと待ってくださいビビさん、僕は試食の一環として、ビールが必要になると言っているのです、試食に必要な物なので、お店持ちでお願いします」
「あきれた、タダ飯して、さらにタダ酒まで飲もうっていうの?本当にずうずうしいわね、まあいいわ、エーコさんに相談してきてあげる」
「できたら大ジョッキでお願いします」

「それにしてもよく食べるわねぇ」
「はふはふ、久しぶりのポテトというのも、いいものです。グビグビ、たまらん」
「え?もう食べちゃったの?もうクマカツさん30過ぎでしょう?よくそんな食欲あるわね」
「うーむ、そうなのです、全然食が細くならないのです、ちょっと前なんて飲み屋を5件も梯子してしまいまして、自分でも不思議です」
「で?どうなの?クマカツさんの感想は…」
「ビールに一番あったのは、皮付きのポテトですね、やっぱり大人の味って感じでしょうか…」
「あのねぇ、ビールに合うかなんて聞いてないの、ポテトは子供だって食べるでしょう?」
「大人だって食べますよ!せっかく二軒も出店を出すわけだし、大人用のポテトと子供用のポテトで分けたらどうです?子供はトルネード状に巻き付けたものとか好きそうでしょう」
「なるほど…、クマカツさん、さりげに核心をついてくるわね、ちょっとエーコさんに相談してみるわ」
 勢いで言っただけだったのですが、ビビさんは妙に納得して厨房の方に行きました。

(僕は、タダ飯が食えてタダ酒が飲めるのはとても幸せだと思いました…)

「ありがとう、クマカツさんのおかげで、ポテトの件は一件落着したわ」
「それは良かったです」
「でもちょっと問題ができたわ、クマカツさんの提案を議会で話して以来、なんとなくお酒を飲んでいいムードみたいなのができちゃって…、ただでさえまとまらない会議がお酒まで入って、もうエーコさん、てんやわんやよ」
「それは大変ですね、ところでビビさんは僕なんかに構ってていいのですか?」
「残念ながら、私が手助けできそうな事はもう何もないわ、あとは店主同士の問題だもの、私はやることないの、クマカツさんがいてくれてある意味調度よかったわ、で?筆は進んでいるの?」
「実は、シェア=ワールドの規約でちょっと厄介な物がありまして、それで煮詰まっているのです」
「へぇ、どんなの?」

①シェア=ワールドの世界観を著しく損なう作品、他者を批判するような作品の投稿は禁止とする。

「確かにいるわよねぇ、全然世界観に合わない滅茶苦茶な設定組み込んで、みんなの輪を乱したり、作品を通して他の人の悪口言ったりバカにする奴。人として最低だと思う」
「作品を作る際、作者というものは創造主ですからどうしても横暴になりがちですが、節度をもって作品作りをしてもらいたいものですね」
「こういう作品書く奴って基本寒いだけなんだけど、自分の事を面白キャラだと思ってる場合が多いからたちが悪いわよね」
「まあ、①は作品を作る人のほとんどは守れている常識的なことなのですが、問題は②なのです」

②シェア=ワールドの為にオリジナルキャラクターを2名作成すること。

「へぇ、これのなにが問題あるわけ?クマカツさんは小説家を目指してるわけだし、キャラクターの一人や二人思い浮かぶでしょう?」
「まあそうではあります、現に僕の頭の中にはたくさんの魅力的なキャラクターがいます。ですが、このシェア=ワールド企画に使ってしまうのは少々もったいない気がするのです」
「クマカツさんはそうやって出し惜しみするからいけないんだよ、アイディアなんてぽんぽん出さないと、新たなアイディアなんて思い浮かばないでしょう?自分が面白いと思っていたアイディアが全然うけなかった、なんていくらでもあることなんだからさ」
「なるほど、そうかもしれません…」
「ねえ、クマカツさん、せっかく二人いるわけだし、私がキャラクターの一人を考えてもいい?」
「いいですよ、魅力的なキャラだったら採用します」
「上から目線ねぇ…まあいいわ」

【ポテト犬】
 全身からおイモのにおいがする犬、ふわふわしてかわいい。耳はポテトチップスでできている。

「どう?」
「ビビさん、さっきのポテトからそのまんまアイディアを持ってきましたね」
「へへ、どんなもんだい」
「でも…悪くないアイディアだと思います。とても女の子らしくてかわいいし、僕には思い浮かばない斬新なアイディアです。なるほど、ほかの人の発想をもらえるのがシェア=ワールドの魅力なわけですね」
「おやぁ、クマカツさん、シェア=ワールドに興味もちました?」
「新鮮な気持ちですね。では、僕も他の小説で使うつもりだった超魅力的なとっておきのキャラクターを出しましょう」

【シマ=コウサク】
 ダンディな中年男性、多くのマダムを虜にし、多くの女性と大人の関係になりながら出世街道をまっしぐらに進む。

「よくも悪くも…クマカツさんらしいキャラだと思うよ」
「ありがとうございます」
「で?この二人を使って話を進めていくという事でいいのかしら?」
「いえ、それ以外にシェア=ワールドの人気キャラを2人起用して、4人で話を進める流れにしようと思います。既に人気のキャラを使うほど楽な事もありませんからね」
「なるほど、その方がてっとりばやいわね」
「アンダーテイルのオーナーの話によると…このべべという女の子と、ゼメツという男の子が人気があるみたいですね」
「べべ…あらこの娘、なんか私にそっくりじゃない?貧乳って点は私と違うみたいだけど」
「いや、貧乳って点もふくめてビビさんそっくりだと思います」
「なんかいった?」
「いいえ…なにも…、小説を書く際、実際の人物を元にしてキャラクターを作ることはよくある事です。その方がリアルな人物が作れますからね。アンダーテイルのオーナーもそうですが、この街にもドルガ趣味会の会員はたくさんいるでしょうし、このべべってキャラはビビさんを元にして作られたのかもしれません」
「なんか複雑な気持ちね、でも、かなり可愛く書かれているし、人気者みたいだからいいかな」
「このゼメツって男の子は、ネタキャラとして愛されているみたいですね」
「もうゼメツなんてどうでもいいわよ!べべちゃんをいかに可愛く書くかがポイントだと思うわ!ネタキャラならウンコでも食べさせておけばいいのよ」
「まいりましたね…ゼメツという男の子にも元ネタがいると思うのですが、まあいいか」


「どうでしたビビさん?」
「うーん、やっぱりお酒が入ったのが良くなかったみたいね、議論が白熱して、今にも殴りあいの喧嘩になるところだったわ、エーコさんなんて半泣きで可哀そうだったわ」
 厨房の方で怒鳴りあいが聞こえたので、様子を見に行ったビビさんが戻ってきました。
「また、メニューで揉めているようですね、よかったらまた僕が試食してさしあげましょう」
「え?さっき山盛りのポテトを食べたばかりじゃない、それに、今回はかなりの難問よ、さすがにクマカツさんにもどうしようもないと思うけど」
「いえ、創作活動というものは非常にカロリーを消費します、お腹ペコペコなのです」
「わかったわ、ちょっと待ってて」
 10分ほどして、ビビさんは大量の麺類の載ったお盆を持ってきました。
「この4種の麺から一つを選ばないといけないの」
「これは…、ソース焼きそば、塩焼きそば、焼うどん、ミーゴレンですか…。いけません、いけませんねぇ」
「なに?なにか問題あるの?」
「こんなに麺類を出されたら、ビールを飲みたくなってしまいます。ビビさん、ビールをいただけませんか?」
「え?さっき大ジョッキを飲んで、さらに飲むの?それこそ小説なんて書けなくなるわよ」
「いえ、程よく酔いが回ったくらいが、ちょうど面白い文になるわけですよ」
「エーコさんに相談…できる状態じゃないか…もういいわ勝手についできてあげる」
「ええ、よろしくお願いします、大ジョッキで」
「…わかったわ」
「ズルズル、この濃い味が、たまらん、グビグビ、ポテト以上に酒にあいますなぁ」
「ほんとう、よく食べるわねぇ、私もかなりの大食いだって言われてるけど、さすがにクマカツさんほどではないわ。で?どうだった?」
「ソース焼きそば一択です、他にありません!!」
「え」
「意外な顔をしないでください。考えてもみて下さい。夜店の屋台といったらソース焼きそばでしょう、一つしか選べないなら自然にそれになると思います」
「言われてみればそうねぇ、でも、会議でやたら焼うどんやミーゴレンを押す人がいて、ソース焼きそばはない、という流れになっていたわ」
「会議が常に正しい方向に進むとは限りませんからね。時には会議の参加者全員が半洗脳状態になって、冷静な判断をできなくなることもあります。そういった時に客観的な意見という物が必要となるわけです」
「なんとなく、焼うどんやミーゴレンに比べて、ソース焼きそばにアピール力が足りないように感じてしまったのよ」
「それはそうです、屋台ででる焼うどんやミーゴレンは珍しく、ソース焼きそばは普通ですからね、普通の物はそれが当たり前だからアピールする事もできません」
「でも、弱ったわね…今は会議では完全にミーゴレンか焼うどんの二択になってるのよ、いくらクマカツさんが言う事が正しくても、いまさら流れは変えられないわ」
「こうなったら、強硬手段を取りましょう、焼うどん派とミーゴレン派に酒を飲まし、酔い潰しましょう。そして、ソース焼きそばを勝たせるのです」
「塩焼きそば派は?」
「そんな雑魚放っておきましょう」

「ありがとう、クマカツさんのおかげで、会議の最も難問とされていた焼きそばの件は一件落着したわ」
「それは良かったです」
「でも、私が焼うどん派とミーゴレン派にお酒をふるまったせいで、他の人もお酒が進んじゃって、全員ほぼ酔っ払ちゃって、エーコさんが焦点の合わない目で何もない空間を見つめてて、心配になってきたわ」
「エネルギーも補充したし、さっそく執筆にとりかかろうと思います」
「で?どんなジャンルの小説にするつもりなの?」
「シェア=ワールド企画の他作品を見ると、やはり恋愛物、学園物かファンタジー物が多いですね、アマチュアは資料を調べて書こうとしないから、どうしても自分の知ってる内容の作品しか書けなくなるのです」
「また上から目線になってるわよ…でもそうかもね。難しいジャンルの小説は書きにくいもの」
「資料を必要な物…例えば戦記物などは全くありませんね。情けない話です。僕がプロ志望としての力量を見せてあげますよ」
「へぇ、じゃあジャンルは戦記物で決まりね」
「いえ、戦記物は資料を調べたりするのが面倒なので、探偵ミステリーを書こうと思います。他の人も書いてないみたいですし」
「プロの力量みせるんじゃなかったの?」
「適度に手を抜くのもプロの技術です」

「あのさ、ちょっとこの【ドルガ聖典キャラクター登録所】という紙束を見ていたんだけど、キャラクターが多すぎて、使われていないキャラクターも大勢いるみたいね」
「言われてみればそうですね、やはり、人気キャラに出番が集中してしまうものでしょうね、でもそれがどうしたのですか?」
「こういうキャラクターをたくさん使ってあげれば、評価が上がって賞も取りやすくなるんじゃない?」
「なるほど、確かにそれはそうですね、でも、ストーリーに組み込むのはさすがに無理なので、ちょいやくとして名前だけでも出しておきますか」
「うん、名前だけでも出せば、作った人は嬉しいものだよ」
「では、冒頭から始めます、タイトルは【南海の孤島殺人事件】四人に南海の孤島から招待状が送られてきたところから始まります」

【南海の孤島殺人事件】

 南海の孤島に向かい、一隻の船が進んでいた。その船に乗っていたのはシマ=コウサク、ポテト犬、べべ、ゼメツと、他数名。彼らはこれから恐ろしい惨劇に巻き込まれる事をまだ知らない。船の乗客はみな、謎の人物からの招待状を受け取っていた。

コウサク「南海のバカンスですか、素敵なマダムとの出会いがあるかもしれません」
べべ「旅行なんて楽しみ、そして私は可愛いわ、読者の皆、私の活躍楽しみにしててね」
ゼメツ「うんこたべたい」
ポテト犬「ワンワン」

そして、招待状を受け取っていた人物は他にもいた。

ハルドゥ
ヤーヒム・モツェピ
ズゥ・ルマニア(動物学者)
リッターエコロ
ロビン・クルー シンチー・ウー
伊予国えひめ
モロー
ドワール
ボーイイ-タ―
アヘグニー(敵モンスター)
ヒザーニヤ
リエカ・リリア
リヴァイアサン
ストライア兄弟
職人人(ショクニンジン)ゴム人
ローロとトミロとカミクイムシ
ショーコ
ツィツィ・キィキィ
ナキシ=オークトーン
ルレット・スレーダー
ボロール(カビ)
アレッポ
マルグリット
エタノール
捻式ビスボルト
ラプソディー
ウィピー
レドフィン
ガー子
スズカ・バーンブリッツ
ルー/アケボーノ・ボルケーノ
カマオ=ドール
アルステーデ・アズール
ナエポヨ菌
ムゼン
ニコラウス
ヒスイ
骨皇国ザコキャラ
ヨハン
大いなる森の精霊
AS-002PIXY
メルタお嬢様
ダンディ・ハーシェル
エルナティ
シャーロット
ラピス=マトリクス
ゲフェングニス
フォーゲン

…も、謎の人物から招待状を受け取っていた。だが、彼らは船には乗らなかった。なぜなら、面倒くさかったからだ。


「お腹すきました、試食させてください」
「なんか、物言いがストレートになってきたわねぇ、ポテトフライ山盛り、やきそば4人前も食べて、さらにまだ食べるつもりなの?そろそろ未知の領域になってきたわ」
 ビビさんは厨房に入ると、お盆の上にサラミとシーフードの二種類のピザを持ってきました。
「この二つから1種類を選ぶわけですか?」
「いえ、少し違うわ、ピザなんてあらかじめベースさえつくっておけばピザ窯で焼くだけだからどの種類でも手間は大差ないもの。二種類両方採用なんだけど、問題はどの程度の割合で作っておくかって事ね」
「なるほど、多分サラミの方が売れると思いますが…片方は売れて、片方は全然売れないってパターンもありますものね…それにしても、いけません、いけませんねぇ」
「ふん、ビールが欲しいってんでしょ?ちゃんと大ジョッキに注いてあるわ」
「いえ、いけません。ピザと言ったらワインでしょう、ワインを所望します」
「え?今度はワインまで要求してくるつもり?図々しいレベルを超えているわ」
「いえ、ワインをいただくのは試食を正確にするために仕方のないことなのです妥協はできません」
「…もうなにも言わないわ。エーコさんに聞いてくる。このビールはもったいないけど流しに捨てるしかないわね」
「いえ、せっかくなのでそれも飲みましょう」
 厨房に入ったビビさんはすぐにワインボトルを持って戻ってきました。
「さっきに比べると会議はすっかり静かになったわ、酔いつぶれている人が大半だからなんだけど…、エーコさんに頼んだら、すぐにワインボトルを出してくれたわ。でもエーコさん、不自然にニコニコ笑ってて目に光が無い感じになってて、心配を通り越して怖くなってきたわ。南海の孤島じゃなくて、エーコの喫茶店で殺人事件が起きかねないわ」
 ワインボトルを見ると、かなり高価な…10万円くらいするワインでした。エーコさんのなかで、何かが壊れたのかもしれません。しかし、せっかくのエーコさんのご厚意なので、全部飲み干すことにします。ビビさんにはワインの値段は黙っておきます。

(僕は、10万円のワインが飲めて、幸せだと思いました…。)

「でも、ここまで酔っぱらったら小説を書くのはやめたほうがいいんじゃない?」
「いえ、小説家なんて酔っぱらってなんぼのものです、泥酔すればするほど面白い小説がかけるというものです」
「そう…」
「パクパク、グビグビ、ああこのチーズとワインのコンビネーションが、たまらん…」
「本当によく食べるわねぇ、もうピザ二枚、ワイン一瓶、ビール一杯食べちゃったの?」
「大変美味しゅうございました」
「で?どうだった?」
「先ほどの焼きそばで、僕は非常に強引な強硬手段を使いました。それは非常に残念なことです。そこでピザは平和的に解決したいと思います。ハーフ&ハーフでどうでしょう?」
「一対一の割合でサラミとシーフードのベースを作っておくって事?それだとシーフードが余るんじゃないかしら?」
「ちょっと違いますね、一枚のピザの半分をサラミに、半分をシーフードにするという意味です。それなら一枚で両方の味が楽しめるでしょう?ちょっと邪道なやりかたですが、お祭りなのでこんな変わり種も許されるのではないでしょうか」
「なるほど、なんて平和的なのかしら、サラミ派もシーフード派も無駄な血を流さずにすんだわ、ノーベル平和賞ものよ」

「ありがとう、クマカツさんのおかげで会議で問題になっていたことはおおむね解決したわ」
「それはよかった、ところで、エーコさんの様子はどうですか」
「部屋の隅に座り込んで、ぼそぼそ独り言を延々と言っていたわ、ちょっと声を掛けられる雰囲気じゃないから落ち着くまでそっとしておいてあげようと思う」
「そうですね、では僕は執筆活動を再開したいと思います。」
「探偵ミステリーといったら、肝心要になるのはトリックよね?何か考えているの」
「そうですねぇ、氷を使った時間差トリックを使おうと思います」
「氷って…あれよね…氷が解ける時間差を使ってアリバイを作ろうってやつよね、随分古典的なアイディアを使うのね」
「ドルガ趣味会の人々は、おそらく探偵ミステリーなんてほとんど読んでないと思うので、基本的なわかりやすいトリックのほうが受けがいいと思うのです」
「また上から目線になってるわ…、え?あれ?ちょっとまって、探偵ミステリー物をやるとなると、誰かが死ぬ事になるわよね?」
「ええそうです、【ドルガ聖典キャラクター登録所】のなかから適当に見繕って、死んでもらう事にします」
「それまずくない?キャラクターを考えた人は、自分のキャラクターが殺されたらがっかりするんじゃないかしら?」
「言われてみればそうですねぇ…なるほど、このシェア=ワールド企画に、探偵ミステリー物が無い理由がわかりました」
「探偵ミステリー物はやめて、書き直したら?」
「それは惜しい気がします…こうなったら、なんとかごまかすしかありませんね」
「ごまかすって?どうやって」
「なんとなく死んでいる感じには見えるけど、生きてる可能性も残しておくのです。ほら、漫画とかで滝つぼへ落とされたキャラクターって大抵生きていて、そのうち再登場するでしょう?」
「なるほど、滝つぼに落とされて死体も見つからなかったって事にすればいいのね?でも、そうなると氷を使ったトリックは難しくならない?殺害方法が滝つぼに固定されちゃうわけでしょう?」
「滝つぼを凍らせちゃいましょう」
「無理があるわよ!!」
「いえ、最近は多少強引なトリックの方がうけがいいのです。読む層がライトになってますから、まして今回はドルガ趣味会ですよ」

【南海の孤島殺人事件】

 孤島にある滝つぼ、そこに行方不明になっていたメン=ブゥ氏の衣服の切れ端が流れ着いていた。死体はみつからなかったが、おそらくメン=ブゥ氏は既に殺されているだろう。
 繰り返すが死体はみつからなかった。

べべ「ああ、なんてことなの、バカンスの途中で殺人事件に遭遇してしまうなんて…そして私は可愛いわ」
コウサク「仕方ありません、私が島中の女性をくどいて、時には大人の関係になりながら犯人の情報収集をしてみせましょう」
ゼメツ「うんこたべたい」
ポテト犬「ワンワン」

「クマカツさん、ちょっといいかしら?」
 厨房に呼ばれたビビさんが、お盆を持って戻ってきました。お盆の上にはリンゴ飴と、ほかにも美味しそうな飴菓子が乗っていました。
「あれ?まだなにか食べさせてくれるのですか?でも、会議で問題になっていたことはおおむね解決したのでは?」
「ええ、おかげさまで、どの飲食店がなんの出店を出すかも決まったし、メニューも大体決まったわ。でも、さっきからクマカツさんがあまりにも的確にアドバイスをくれるものだから、飴菓子担当の人がぜひ意見を聞きたいそうなのよ、これを食べてみて、なにかいいアイディアでも思い浮かばないかしら?」
「ふむ、僕が小さい頃はリンゴ飴くらいしかなかったのですが、最近はイチゴやブドウを水あめでコーティングしたお菓子もあるんですね、これは美味しそうだ、いけません、いけませんねぇ」
「いけませんって…まさかリンゴ飴でビールやワインを飲む気?いくらなんでもありえないわ」
「いえいえ、甘いですよビビさん、こういった甘いお菓子にはウィスキーが合うのです、ウィスキーを所望します」
「ちょっとぉ、さすがにお祭りでウィスキーなんてださないわよ、ウィスキーなんて売れないわよ」
「いえ、ウィスキーは売れなくてもいいのです。なにせウィスキーは長持ちしますからね、売れなくて在庫になっても、飲食店で使えばすむ話です。それに万が一注文が入ってもウィスキーはコップにそそぐだけですから手間もかかりませんしね、ウィスキーがメニューにあるだけで、なんとなく気持ちが豊かになりませんか?」
「いわれてみれば…」
「他の料理を安く感じさせるために、あえて値段の高い、売れもしない料理をメニューに加えてる店もあるのです、いわゆる見せメニューって奴ですね」
「じゃあ、ウィスキーと飴を食べたら、小説の方も完成させちゃいましょう」
「いえ…大分アルコールも入ってますし、今日はこれでお開きにしたいと思います」
「ここまできたら、最後まで書け!!!!」
「はい…」

(僕は、ビビさんはとても厳しいと思いました…)

「ペロペロ、ガツガツ、うん、この懐かしい感じ、程よい甘さがウィスキーを引き立て…たまらん」

「厨房の方はどうなりましたか」
「ええ、皆さんお帰りになったわ、飴菓子担当の人もクマカツさんの意見をすごく気に入ってくれて、ウィスキーをメニューに加える事に決めたわ。後はエーコさんだけが心配だわ、アルコールなんて一滴も飲んでいないのにフラフラ足元がおぼつかない感じで、ベッドで寝かしたけど、明日も仕事あるのよね…明日には元気になってくれるといいけど」
「そうですねぇ、執筆活動を再開したいと思います。といっても後は犯人を追いつめるだけなのですが…」
「なるほど…犯人ね、いよいよクライマックスだわ、え?あれ?そういえば犯人はどうするの?」
「【ドルガ聖典キャラクター登録所】のなかから適当に見繕って、犯人にしようと思います、何か問題でも」
「それまずくない?キャラクターを考えた人は、自分のキャラクターが犯人にされたらがっかりするんじゃないかしら?」
「確かに、いわれてみればそうですねぇ、ですが、殺される場合と違って犯人の場合はごまかしがききませんよ、ここはキャラクターを作った人に我慢してもらうしかありません」
「いや、待って、いるじゃない。犯人にしても問題ないキャラが」
「え?」
「シマ=コウサクよ、こいつが犯人なら、誰もがっかりしないわ」
「ちょっと待って下さい!!シマ=コウサクはいわば探偵役ですよ、探偵役が犯人なんてありえない!!ヴァン・ダインの二十則にも反しております」
「ヴァン・ダインが何よ!!最近は強引なトリックの方が受けがいいって言ったのはクマカツさんでしょ!!大丈夫よ、読む層がライトになってるからヴァン・ダインなんて知らないって」
「うう、確かに言われてみればそうかもしれません」

【南海の孤島殺人事件】

 ついに犯人を追いつめたべべ達、だが、そこに立っていたのはまさかのシマ=コウサクだった。

べべ「まさか…信じたくなかったけど、貴方が犯人だったなんて…、残念だわ。そして私は可愛いわ」
コウサク「もう少し、もう少しで俺だけのウハウハのマダムハーレムを作り上げる事ができたのに…ハーレムをつくるために、俺が殺した奴らは邪魔だったんだ」
ゼメツ「ワンワン」
ポテト犬「うんこたべたい」


【エピローグ】


 今日も今日とて僕は、ごみ溜め四畳半から抜け出してエーコさんの喫茶店に向かいました。小説家志望というのは忙しいものです。しかし、なんだか今日は街の様子がおかしい感じがします。道にはゴミが溢れているし、そこらじゅうで出店を解体している人たちが見えます。お祭りでもあったのでしょうか…?
「あら?クマカツさん、悪いけど今日はお休みよ、見ての通りケンタウルの祭りの後片付けで忙しいからね」
 エーコさんの喫茶店の前に、解体した出店の材木を運んでいるビビさんがいました。今日のビビさんは作業着姿でした。
「ああ、そういえば昨日はケンタウルの祭りだったんですね、気が付かなかった」
「え?信じられない、クマカツさん、あんた昨日何してたのよ」
「実は、一日中アンダーテイルにいました」
「うわぁ…もしかして、アンダーテイルのオーナーにたかってたの?」
「ええ、アンダーテイルのオーナーは太っ腹で素晴らしい方です。なにせ受賞祝いにドルガ趣味会のメンバー全員に、お店をタダで利用させてくれたのですから」
「アンダーテイルのオーナーが100万円を手にするとは思わなかったわ、ところで、アンダーテイルのオーナーはどんな小説を書いたのかしら?」
「【ドルガ戦記】というタイトルですね。今までシェア=ワールド企画で書かれてなかった重厚な戦記物です、アマチュアとしては、かなり出来がいいと思いますよ」
「プロ作家志望様の【南海の孤島殺人事件】は箸にも棒にも掛からぬ出来で受賞を逃したのにねぇ」
「それは言わないでください…僕は、アマチュアの世界も厳しいものだと思いました…」
「ちなみにドルガ戦記にはべべちゃんは出てくるの?」
「18話まで読みましたが、出てきてないですね」
「じゃあ多分出てこないわね、読むのやーめた、私はべべちゃんが出てくる作品にしか興味ないもの」
「ビビさんもシェア=ワールド企画に興味を持ったのですか?」
「うん、といってもべべちゃんの出てくる作品だけだけどね、今度アンダーテイルのオーナーに、べべちゃんが出てくる作品を何冊か貸してもらおうと思うわ」
「もういっそのこと、ビビさんも小説を書いてみたらいかがですか?」
「なるほど、それはいいアイディアね、タイトルは…【べべの日々-ドルガ奇談-】とか?」
「いいと思います…ところで…」
「なによ?」
「もし出店の商品の余り物があれば、後片付けを手伝いましょうか?」
「ええい!!!焼きそばでも!!ピザでも!!ポテトでも!!飴菓子でも!!パニーニでも!!持ってけ泥棒!!!!」

(僕は、タダでご飯をもらえたりエッチなお店を利用できるのは大変すばらしいことだと思いました…)

       

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Neetsha